ステロイド外用薬によって色素沈着・皮膚の黒ずみを引き起こす?

アトピー性皮膚炎の画像 アトピー性皮膚炎などの皮膚の炎症性疾患の治療法はステロイド外用薬によって炎症をしずめるのが先決です。

これにより症状の進行を抑制することができるのですが、ステロイドには副作用があるからとしてステロイドの使用を避け、治療が中途半端になって炎症が長引いてしまい、その結果として色素沈着が悪化してしまうケースは少なくありません。

ステロイドに対する恐怖と誤解が、症状悪化の原因となっている人が多いようです。

ステロイド外用薬と色素沈着(皮膚の黒ずみ)の関係は?

ステロイド外用薬とは?

ステロイド外用剤とは、ステロイド系抗炎症薬の皮膚外用剤であり、皮膚炎、湿疹に対する治療薬として使用される医薬品です。

炎症性の皮膚疾患に対して幅広く用いられ、素早く効果を得ることができますが、使用継続による副作用の心配があるため、皮膚の部位や使用期間などに注意して使用する必要があります。

ステロイド外用薬の副作用は?

  • 長期的な使用で皮膚が薄くなる。
  • 免疫のバランスが乱れて感染症を引き起こすことがある。
  • 長期の使用で血管がもろくなり拡張してくる。毛細血管拡張症。
  • ステロイドによるにきびができる。(ステロイドニキビ)
  • 毛が濃くなる。毛が多くなる。

ステロイド外用薬の副作用は、皮膚の部位によっても違いがあります。カラダの中で特に反応が良いのは顔面や頭皮、脇周辺、陰部などです。それらの部分は副作用が現れやすい傾向があります。

特に、顔面に対する使用は見た目としての観点から副作用を起こさないために慎重に使用する必要があります。

ステロイド外用薬で色素沈着、皮膚の黒ずみは起きない

色素沈着を起こしたくないからとしてステロイド外用薬の使用を避ける人がいるようですが、ステロイド外用薬そのものが皮膚の黒ずみを引き起こすのではなく、皮膚の炎症を長引かせていることで色素沈着が悪化していることがほとんどです。

アトピー性皮膚炎の症状が現れているのに、ステロイドに副作用があるからといって湿疹を放っておくと、メラニン色素がたくさん生成されてしまい、結果的に強い色素沈着をまねいてしまうことがあります。

炎症が続いた色素沈着は治りにくい?

長く皮膚炎を起こした場合の色素沈着は、メラニン色素が真皮層に入り込んでいるため、改善しにくいといわれています。

メラニン色素は、表皮内最下層の基底層のメラノサイト(メラニン色素を作る細胞)で作られ、通常はターンオーバーによって表面に押し上げられて、最後は垢(古い角質)となって剥がれていきますが、皮膚に炎症が起こっていると基底層の構造が乱れてメラニン色素が真皮層に入り込んでしまうことがあります。

真皮層に落ち込んだ色素沈着は改善するまで長い年月がかかることがあり、進行したものは自然には治らないこともあります。

皮膚を掻くほど色素沈着が悪化する

皮膚炎が起こっている時にさらに皮膚を掻いたりすると、さらに湿疹が悪化します。それと同時に色素沈着も悪化し、基底層の基底膜が乱れてメラニンが真皮層に入り込みやすくなります。

皮膚が痒くても、できるだけ我慢するようにし、抗アレルギー剤(抗ヒスタミン薬)を服用して、痒みをしずめるようにすることが重要です。

ステロイドの長期使用による皮膚の赤み

ステロイドによる副作用の画像 ステロイド外用薬には毛細血管を収縮させる作用があり、皮膚に塗布すると一時的に肌の赤みがとれて白くなります。

ただし、長期的にステロイドを使用していると毛細血管が弱くなって拡張し、皮膚が赤みを帯びてくるといった副作用を生じることがあります。

また、ステロイド外用薬の長期使用によって皮膚が薄くなっていきますので、血管も浮き出て見えるようになることもあります。

ステロイド外用薬による皮膚の赤み、毛細血管の拡張は、使用を中止することでしだいに改善していきますが、進行したものはなかなか治りづらい傾向があります。

顔にはタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)

ステロイド外用薬には副作用があり、特に皮膚の薄い顔面には副作用のリスクが高いことから、顔面にはステロイド軟膏ではなくタクロリムス軟膏(製品名:プロトピック軟膏)が処方されるようになってきています。

タクロリムス軟膏とは皮膚の免疫を抑制するお薬で、過剰な免疫反応を抑制しアトピー性皮膚炎のような皮膚の炎症状態を抑制することができます。

タクロリムス軟膏にはステロイドの副作用である「皮膚が薄くなる」「毛細血管が拡張する」などのリスクがないことから特にアトピーの顔に対する外用剤として用いられています。

ただし、副作用がまったくないわけではなく、免疫を抑制することで毛嚢炎(もうのうえん)やカポジ水痘様発疹症(カポジすいとうようほっしんしょう)などの細菌やウイルスによる感染症を引き起こす可能性があります。

タクロリムス軟膏の難点の一つが、塗りはじめの段階で皮膚に対する灼熱感、ほてり、かゆみ、ヒリヒリ感などの刺激を感じることが多いことです。

約60~70%の人に現れるといわれ、湿疹の症状がひどいほど刺激性を強く感じることがあります。ただし、これは一時的なものであり、湿疹症状が落ち着いて1週間ほど経過すれば、それらの初期症状はなくなっていきます。

アトピー性皮膚炎による色素沈着の治療

アトピーによる色素沈着はレーザートーニング

アトピー性皮膚炎による色素沈着は、メラニン色素が表皮だけではなく真皮にも入り込んでいて、さらにアトピー肌では皮膚も弱いことから治療方法も限られますが、表皮に存在する色素沈着にはレーザートーニングという皮膚に対して優しく作用するレーザー治療が有効です。

レーザートーニングの写真 レーザートーニングとは、トップハット型という皮膚に対して均一に照射できるQスイッチ・ヤグレーザーを低出力で照射し、様々な肌症状を優しく穏やかに改善していく治療法です。

従来のガウシアン型という照射では照射部分の中央にダメージが強くなり、かえって色素沈着が悪化したりすることがありました。

一方のトップハット型は皮膚に対して平均的に照射でき、しかもQスイッチというナノ秒レベルで照射できるレーザーを低出力で照射することで、皮膚に対する負担を劇的に抑制しながら色素性病変を改善していくことができます。

ただし、レーザートーニングは穏やかに作用するため、一度の治療では劇的な効果はなく、はっきりとした効果を得るには通常は複数回の治療を繰り返す必要があります。

また、アトピーの人は肌がデリケートであるため、レーザーによるダメージによって症状が再発してしまう可能性も考えられますので、思春期以降の完全にアトピーが落ち着いた段階から行うようにするべきです。