黒ニキビに似た粉瘤。原因と治療法、ニキビとの見分け方

ニキビは一般に毛穴に角栓(にきびの芯)が溜まり、毛穴がふさがれた後に炎症を起こし、最終的に自然に治っていきます。ところが、長い期間に渡って炎症を起こさずにしこりのようになることもあります。

その場合はニキビではなく粉瘤(ふんりゅう)という皮膚病の疑いがあります。今回は粉瘤の原因と治療法を解説していきます。

粉瘤とは?

粉瘤(アテローム)の画像 粉瘤(ふんりゅう)とは、通常は自然に剥がれていくはずの垢(古い角質)などの老廃物が、皮膚内部(真皮)に溜まってしまうことで発生する皮膚病をいいます。粉瘤は基本的に自然に治ることがなく、炎症を起こしたりすると深刻な症状をまねく可能性があります。

なお、粉瘤は、粉瘤種(ふんりゅうしゅ)、表皮嚢胞(ひょうひのうほう)、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)、英語でアテローマ(アテローム)、などともよばれます。

粉瘤の原因とは?

粉瘤の原因は主に毛包構造の異常が要因となります。毛穴の上部(毛漏斗:もうろうと)がめくりかえって袋状の構造物ができることが主な原因です。皮膚の構造が変わってしまうことで皮膚内に垢が溜まってしまいます。

体質的な要因で発生することが多いのですが、皮膚に刺激や外傷などを負ったことが原因で発生することがあります。その場合の病変を「外傷性粉瘤」と呼びます。

外傷によって表皮や表皮内基底層(表皮細胞を作り出す層)が真皮層に入り込んでしまい、真皮内で表皮細胞が次々と生成されることで古い角質(垢:あか)をともなった袋状の構造物ができてしまうのです。

粉瘤の見た目

粉瘤(アテローム)の画像 粉瘤は初期の状態ではニキビと似ていて、単に毛穴に汚れが溜まっているように見えます。開口部分がある場合は角質と皮脂が混ざりあったものが酸化し、黒ニキビのような状態になることがあります。粉瘤は進行するにつれて部分的に黄色っぽくなったり、青紫色になったりして、症状が判断しやすい状態になります。

症状の進行

粉瘤は基本的に年月の経過とともにしだいに肥大化します。長い期間をかけて少しずつ拡大していきますが、まれに、わりと早いペースで大きくなることもあります。

肥大化とともに炎症を起こして化膿することがあります。粉瘤そのものは良性腫瘍ですが、巨大化して長期間存在した粉瘤は癌化する可能性があると指摘されています。ただし、それは極めてまれなケースです。

粉瘤が発生しやすい部位

粉瘤は頭から足のつま先まで皮膚が存在する部位であればどの場所にも発生する可能性がありますが、その中でも発現しやすい部位は、頭皮、顔、耳、背中、お腹、お尻、指などです。

粉瘤が発生しやすい年齢や体質

粉瘤は性別や年齢に関わらず発生します。男女ともに子供から高齢者まで見られる症状です。そして、体質的に粉瘤ができやすい人がいます。

粉瘤が炎症を起こすと・・・

炎症を起こした粉瘤 粉瘤が細菌感染などによって炎症や腫れを起こすと、痛みをともなって化膿してしまうことがあります。感染性粉瘤、炎症性粉瘤といったりします。この場合は早期の治療が必要です。化膿した場合、破裂して膿が出てしまうことがあります。

その膿が体内に入った場合、場所によっては腹膜炎や胸膜炎、リンパ管炎を引き起こしてしまうことがあります。免疫力が低下している高齢者になると症状が深刻になり最悪死に至るケースもあります。

炎症・化膿を繰り返すと、粉瘤の周囲に瘢痕、繊維組織、肉芽が形成されて全体的な「しこり」が肥大化します。この場合、治療が難しくなったり、切開する範囲が広くなって手術跡がひどくなることがあります。

粉瘤とニキビとの見分け

  • ニキビの芯(角栓)が解消されずに次第に拡大して「しこり」のような状態になった時は粉瘤を疑って下さい。
  • ニキビの芯を押し出しても再び汚れが溜まって大きくなったりすると粉瘤の可能性が高いです。
  • 粉瘤はしだいに色が変化することが多いです。部分的に黄色っぽくなったり、青紫色っぽくなったりします。これは皮膚に溜まった老廃物が溜まりすぎることが原因です。

顔の表皮のターンオーバーは28~42日周期、その他の部位はそれ以上ですが、それ以上の長い期間かけて、大きなニキビの芯(角栓)が解消できずに拡大して、しこりのような状態になる場合は、ニキビではなく粉瘤である可能性が疑われます。

医師でも判断しにくいことがある

医師の中にも初期段階では粉瘤かどうかを判断できないケースがあります。また、「粉瘤でも小さいためしばらくは様子をみましょう」と患者に告げる医師もいるでしょう。

ただし、粉瘤は放置していても基本的に自然治癒することはなく、また炎症を起こすと治療が難しくなったり、跡がひどくなったりすることがあるため、早い段階で治療を受けるのが理想です。

粉瘤の治療法

粉瘤は良性腫瘍ですが、月日の経過とともにしだいに拡大して、炎症を起こすと跡がひどくなってしまうため、できるだけ早い段階で取り除いてしまうのが理想です。根本的に解決するには基本的に切開手術が必要で、治療は皮膚科、外科、形成外科などで行います。

粉瘤の治療はメスを使った切開手術が一般的

一度も炎症を起こしたことがない場合は、局所麻酔をしてメスを使った切開手術により粉瘤を形成する構造物そのものを切除する必要があります。

袋状構造物が残っていると再発する可能性が高くなります。皮膚を切開して縫い合わせるため手術跡が残る心配がありますが、粉瘤が小さい場合はキレイに治ることも多いです。

抜糸は1週間後に行います。術後から数ヶ月以上かけて傷跡は目立たなくなっていきますが、体質によって手術跡が目立ってしまうこともあります。傷跡をキレイにするためテープを貼ったり、ケロイド体質の人はトラニラストというお薬が有効なケースがあります。

くりぬき法で摘出

粉瘤が小さい場合は円筒状のメスでくりぬく方法もあります。ただし、くりぬき法の場合は袋状構造物が残ってしまったり、傷跡がニキビ痕のクレーターのように凹んで目立ちやすい欠点があります。

細菌感染がある場合、化膿している場合

感染症によりひどく化膿している時は抗生剤を服用して炎症を抑える治療が必要になることがあります。

化膿がひどい場合は膿だけを出すために皮膚を切開することもあります。そして、後日に腫れが治まった段階で手術です。(抗生物質の服用は継続します)。

手術の際には局所麻酔をしてメスで切開します。単に粉瘤を取り除くだけではなく内部を洗浄して膿や病原菌を出す必要があり、その処理が不十分だと炎症が再発してしまう場合があります。

強い炎症を起こすほど、やや大きめに皮膚を切開する必要があり、場合によっては全身麻酔が必要なケースもあります。当然、手術跡や色素沈着もひどくなります。