しこりニキビの原因と治療方法、ケロイドの可能性を解説。

しこりニキビの写真

ニキビが深い部分で炎症を起こし、化膿した状態が続くとニキビ跡が硬くてしこりのようになってしまうことがあります。

この状態を硬結ニキビ(こうけつ)や膿腫ニキビ(のうしゅ)といい、毛細血管の増殖と鬱血(うっけつ)によって硬くなった状態です。さらにコラーゲンが増加することでも硬くなります。

しこりニキビは、皮膚が非常に強いダメージを受けているため、ニキビ跡の赤みや色素沈着がひどくなり、皮膚がデコボコになってしまう可能性が高くなります。

今回はしこりとなったニキビの原因と治療方法、ケロイドの可能性などをご紹介します。

ニキビがしこりになる原因と改善法

膿腫・硬結ニキビの画像 ニキビの発生と、ニキビが悪化してしこりとなってしまう現象は以下のように進行します。

1皮脂の増加によって、皮脂をエサにするアクネ菌が増加する。

2アクネ菌は皮脂中の中性脂肪を分解して遊離脂肪酸を産生する。

3遊離脂肪酸は刺激性があり、皮膚のターンオーバーを過剰に進行させてしまう。

4ターンオーバーの乱れによって毛穴が塞がり、毛穴の中でアクネ菌という皮膚常在菌が増加する。(アクネ菌は酸素がない環境を好む嫌気性細菌であり、毛穴が塞がって酸素がなくなると極端に増加するようになります)。

5アクネ菌が増殖すると、皮膚はそれを異常事態だと判断して免疫反応が起こり、炎症性サイトカインを放出し、本格的に炎症反応が起きます。これがニキビです。

初期にきびと炎症にきび 6ニキビが炎症を起こす過程で、様々な生理活性物質・情報伝達物質が発生し、それによって毛細血管拡張や血管透過性亢進を起こします。この免疫システムにより、好中球(白血球の一種)が病巣に到達しますが、一方でニキビの腫れも大きなものになります。

7好中球がアクネ菌を飲み込み、活性酸素を発生させてアクネ菌を攻撃します。また、このときに発生する活性酸素によっても肌は大きくダメージを受けます。

8この炎症反応が長引くことでうっ血が悪化し、ニキビがしこりのように硬くなります。また、ダメージを修復するためにサイトカインが放出されて主にコラーゲンの増生や毛細血管の増殖が起こることでも、にきびがしこりとなってしまう要因です。

ニキビは潰さない、刺激を与えない

ニキビを潰す画像 白にきびや黒にきびなど、ニキビの種類によっては潰してニキビの芯や膿を出してあげることで早くキレイに治ることがあります。

ところが、化膿にきびなどの進行したニキビの場合、潰そうとして刺激を与えると免疫反応が進行して余計に腫れがひどくなってしまうことがあります。腫れたニキビは潰さずに治すのが基本です。また、洗顔時においてもニキビを刺激しないようにしましょう。

市販のニキビ治療薬

オロナイン しこりニキビを予防するには、薬を塗って炎症を素早く抑える必要があります。ニキビの炎症を抑えるには、オロナイン、ピンプリット、クレアラシル、ビフナイトなどの市販薬でも効果が期待できます。

ただし、皮膚の深い部分で腫れたニキビは一般的な市販治療薬では効果が得られにくいかもしれません。

ニキビが悪化したら皮膚科でニキビ治療

カウンセリングの画像 ニキビがしこりになる前に、素早く皮膚科へ受診するのが理想です。ニキビは、まれに極端に腫れを引き起こしてしまうことがあり、早い対処をしなければさらに跡がひどく残ってしまうこともあります。

皮膚科におけるニキビ治療は主に抗生物質・抗菌薬の外用薬と内服薬があり、ニキビの原因菌であるアクネ菌を抑制することでニキビの炎症を治していきます。保険適応です。

しこりニキビは粉瘤の可能性もある

粉瘤 ニキビがしこりのような状態になっている場合、粉瘤(ふんりゅう)という症状である可能性があります。粉瘤とは、皮膚の構造が変化し、皮脂や角質などの老廃物が皮膚内に溜まってしまう症状をいいます。

粉瘤は、見た目では黒ニキビのような状態に見えることも多いですが、触ると硬くしこりのような状態になっているため、通常のニキビとは違うとわかると思います。

粉瘤は自然治癒することはなく、炎症を起こすと治療が長期になったり、跡がひどくなったりするため、早めに皮膚科を受診して治療するのが理想です。

皮膚科におけるしこりニキビ治療

重度ニキビへの外用薬(塗り薬)

ベピオゲル

ベピオゲルの画像 ベピオゲルは、過酸化ベンゾイルという酸化物を主成分としたニキビ治療薬です。肌に塗ると酸素が発生し、酸素を嫌うアクネ菌などの細菌を死滅させることができます。

また、ピーリング作用があり、ニキビの頭部を柔らかくして膿やニキビの芯が排出されやすい状態へと促します。

デュアック配合ゲル

デュアック配合ゲルの画像 デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンというリンコマイシン系抗生物質の2つの有効成分が含まれた塗り薬です。

過酸化ベンゾイルの殺菌効果と、クリンダマイシンによる細菌減少効果によって、強力にニキビの腫れを治します。化膿したニキビによく使用されますが、かゆみや赤み、ヒリヒリ感などの副作用が現れやすいのが欠点です。

エピデュオゲル

エピデュオゲルの画像 エピデュオゲルは、アダパレン(ディフェリンゲルの主成分)と、過酸化ベンゾイル(ベピオゲルの主成分)を組み合わせた塗り薬(合剤)です。

アダパレンがターンオーバーを抑えて毛穴がふさがる現象を抑え、過酸化ベンゾイルがニキビ菌を殺菌します。働きが違う成分を組み合わせることで、腫れたニキビに強力に効いていきます。

エピデュオゲルは、世界で最も使用されるニキビ薬だといわれていますが、欠点としてはやはり副作用が現れる可能性が高いことがあげられます。

ダラシンTゲル

ダラシンTゲルとローションの画像 ダラシンTゲルは、クリンダマイシンというリンコマイシン系抗生物質を主成分とした外用薬です。アクネ菌を減少させて免疫反応を抑制し、赤ニキビを治していきます。

炎症が進行したニキビによく処方されます。ゲルタイプ、ローションタイプの2種類があります。

アクアチムクリーム

アクアチムクリーム、軟膏、ローションの画像 ナジフロキサシンというキノロン系抗菌薬を主成分とした塗り薬。アクネ菌を減少させてニキビの腫れをしずめ、しこりニキビを予防します。アクアチムも炎症ニキビに対してよく使用されます。クリームタイプ、軟膏タイプ、ローションタイプの3種類があります。

にきび治療の抗生物質の内服薬(製品名)

抗生物質ミノマイシン(ミノサイクリン)の画像 抗生物質の飲み薬は、ニキビの炎症をもたらすアクネ菌を素早く減少させてニキビの腫れをしずめます。ニキビ治療に使用される抗生物質・抗菌薬は以下のようなものがあります。

  • ミノマイシン・・・主成分:ミノサイクリン(テトラサイクリン系抗生物質)
  • ビブラマイシン・・・主成分:ドキシサイクリン(テトラサイクリン系抗生物質)
  • ルリッド・・・主成分:ロキシスロマイシン(マクロライド系抗生物質)
  • クラリス・・・主成分:クラリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)
  • ファロム・・・主成分:ファロペネム(ペネム系抗生物質)
  • セフゾン・・・主成分:セフジニル(セフェム系抗生物質)
  • フロモックス・・・主成分:セフカペン・ピボキシル(セフェム系抗生物質)
  • クラビット・・・主成分:レボフロキサシン(ニューキノロン系抗菌薬)

上記の中でミノマイシンやビブラマイシン、ルリッド錠などはよくニキビ治療に使用されます。それらはジェネリック医薬品(後発品)も多く登場しています。

切開治療

メスを使ってニキビ膿出し しこりのように腫れがひどくなったニキビは、抗生物質と併用しながら、皮膚を切開して膿を出す治療をしたほうが早く治るケースがあります。

腫れが強くなると皮膚の深い部分に膿が溜まって治りにくくなるので、わずかに肌を切開してキレイにするのです。ただし、若干の線状の傷跡が残ってしまうことも。

しこりニキビは自然に治る?

しこりニキビの画像 ニキビがしこりになった場合の一番の悩みが、そのしこりが改善していくのかどうかということです。

「ケロイドや肥厚性瘢痕になったのでは?」と心配する人も多いです。

ただし、多くのケースでは月日の経過と共に硬さはとれてしこりは改善します。目安は6か月以内です。

ニキビによるしこりの原因は、主に「毛細血管の増殖と鬱血(うっけつ)」と、「コラーゲン線維などの増加」によるものです。

まず、血液の停滞による硬さはわりと早い段階で治っていきます。

そして、毛細血管の増殖は月日がかかりますが、徐々に治っていき、赤みと一緒に硬さもとれていきます。なお、損傷がひどい場合は赤みが自然に消えないこともあります。

一方、コラーゲンなどの結合組織の増加においても、程度の問題もありますが、2~3か月程度、最大でも6か月以内ほどで硬さがなくなっていくことがほとんどです。

皮膚の再生は6か月を目安にして下さい

医療の世界では常識ですが、皮膚が強いダメージを受けると通常よりも活発に皮膚の再生が行われますが、その期間が約6か月という一つの認識があります。

例えば強い外傷を負ったときに、お医者さんはよく「全治6か月」と診断するのもそのためです。

なので、しこりになっても6か月間くらいは様子を見て下さい。ニキビに限らず皮膚が損傷すると少なからず鬱血やコラーゲンの増生は起こり、一時的にしこりのように硬くなってしまうものです。

ケロイドや肥厚性瘢痕は体質の影響が大きい

ニキビ跡が硬いまま残っているからといってそれがケロイドであるとは限りません。

ケロイドや肥厚性瘢痕になるのは、体質・アレルギーの影響が大きいといわれていますので、ケロイド体質ではない人は、しこりのようになってもあまり心配する必要はないと思います。

ニキビ跡のしこりがケロイドかどうか気になる場合は医師に診てもらうのも一つの方法です。

ケロイドや肥厚性瘢痕の場合

ニキビ跡のケロイドと肥厚性瘢痕 体質や炎症の度合いによっては、ニキビのしこりが大きく盛り上がり、ケロイドとなって残ってしまうことがあります。

ニキビによるケロイドは、皮膚の損傷によってサイトカインが過剰に働き、必要以上にコラーゲンを作り出してしまうことで発生します。

一種のアレルギーともいえ、体質の影響が大きく関与します。ケロイドが発生しやすい部分は、Uゾーン(フェイスライン)やアゴ、背中、胸などです。

進行性があり拡大していくもの真性ケロイドといい、進行性がないものを肥厚性瘢痕といいますが、ほとんどのケースでは進行性がない肥厚性瘢痕です。

進行性がある真性ケロイドであることはとてもまれなケースです。また、肥厚性瘢痕は数年から10数年かけて赤みやふくらみがなくなって改善していくことが多いです。

ただし、赤みだけがとれて白く跡が残ってしまうこともあります。それを成熟瘢痕といいますが、その状態になってしまうと治すことは困難になります。

ケロイドの治療法

ニキビのしこりがケロイドだった場合は、主に以下のような治療があります。

トラニラストの服用

トラニラスト(リザベン)の画像 ニキビによってケロイドを起こした場合、リザベン(一般名:トラニラスト)という内服薬が効果があります。

トラニラストは過剰にコラーゲンを作り出すサイトカインを抑制する働きがあります。ただし、トラニラストは改善というよりも予防目的で使用されます。

ステロイドの使用

ケロイドに対するステロイド注射写真 赤みをもつケロイドにはステロイドによる治療も有効です。ステロイドは皮膚を萎縮させる作用があり、その効果を利用してケロイドを縮小させます。

ステロイド注射、塗布、ステロイドテープなどの方法があります。特にステロイド注射は劇的な効果が期待できます。

ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の外用

ヒルドイドローションとソフト軟膏の画像 ニキビ跡がケロイドや肥厚性瘢痕になった場合、ヘパリン類似物質の塗り薬が効きます。皮膚科のお薬ではヒルドイドクリームが有名です。

以下は、国内2192例を対象にヒルドイドを使い、ケロイドや肥厚性瘢痕に対する改善率を調べたもの。参考:マルホ。

ヒルドイドクリームの効果

この結果では、著しく改善が18.2%、かなり改善が57.3%、やや改善が13.7%、悪化が10.8%となっています。約9割の人が改善に向かったという結果がでています。