デュタステリドの頭皮DHT抑制率や発毛増加数、薄毛改善率、フィナステリドとの比較も

デュタステリド(ザガーロ)の画像 2016年より日本で販売が開始された薄毛治療薬の「ザガーロ」。その薬はデュタステリドを主成分とした飲み薬で、医師の処方箋のもとで販売されています。

デュタステリドが登場するまでは、薄毛改善薬というとフィナステリド(製品名:プロペシアなど)が一般的でしたが、それよりも効果が高いデュタステリドが登場したことでそれが第一選択肢として処方されることが一般的となりました。

では、デュタステリドとフィナステリドは効果にどのような違いがあるのでしょうか。

今回は、デュタステリドとフィナステリドのそれぞれの血清中DHTや頭皮中DHTの抑制効果、薄毛改善率、発毛本数の違いなどを様々な臨床試験をもとに詳しくまとめました。

第Ⅱ/Ⅲ相国際共同試験の結果

AGA治療薬ザガーロ(デュタステリド)の販売元であるグラクソ・スミスクライン報告の第Ⅱ/Ⅲ相国際共同試験の結果です。(承認時評価資料)

臨床試験は、20~50歳の男性型脱毛症患者917例、また、部分的な解析として日本人集団200例を対象にしています。

内容は、ザガーロ(デュタステリド)0.1mgと0.5mg、そしてその比較としてフィナステリド1mg、また薬の優位性を証明するためのプラセボ(偽薬)をそれぞれのグループに1日1回24週間(半年間)経口投与して比較したもの。

以下は24週間後の毛髪の増加数と、毛髪の太さの結果です。

毛の増加数

以下は、それぞれの治療を24週間続けた後の直径1インチ(2.54cm)における非軟毛(直径30μm以上の毛)の増加数を調べた結果です。

デュタステリドによる毛の増加数の画像データ

  • プラセボ群は平均で-4.9本。
  • フィナステリド1mg群では56.5本の毛髪増加。
  • ザガーロ0.1mg群では63本の増加。
  • ザガーロ0.5mgでは86.9本の増加。

プラセボと比較すれば、デュタステリドとフィナステリドは共に薄毛改善に効果があるという結果がでています。そして、最も発毛数が高かったのはザガーロ(デュタステリド)0.5mgです。

日本ではザガーロは、0.1mgと0.5mgが承認されていますので、より高い効果を求めるのならば0.5mgを使用したほうが良いとされます。

毛髪の太さの改善レベル

以下は、それぞれの治療を24週間続けた後の直径1インチ(2.54cm)あたりの毛髪の太さを測定した結果です。

デュタステリドによる細毛改善の画像

  • プラセボ(偽薬)の場合は-0.9
  • フィナステリド1mgでは+4.0
  • ザガーロ0.1mgでは+3.9、
  • ザガーロ0.5mgでは+5.8

頭髪のボリュームを実感するには毛の本数だけではなく毛の太さも重要ですが、何も効果がないプラセボ群と比較してはっきりと優位性が示されている結果がでています。

そして、従来の標準的な治療薬だったフィナステリド1mgよりも、ザガーロ(デュタステリド)0.5mgのほうがはっきりとした効果が報告されています。

副作用の発現レベル

ザガーロはわりと安全なお薬だといわれているのですが、なんらかの副作用が現れる可能性が指摘されています。主な副作用は、勃起不全、射精不能、射精障害、リピドー減退(性欲減退)、腹痛、精液量の減少などです。

副作用が現われた数と割合は、プラセボでは181中27例(15%)、フィナステリド1mgが179例中35例(20%)、ザガーロ0.1mgが188例中39例(21%)、ザガーロ0.5mgが184例中30例(16%)です。

プラセボ群とあまり大差ないので気のせいかもしれないですが、副作用がはっきりと現れることもあるようです。薬の服用を止めれば副作用はなくなります。

フィナステリドで効果がない人がデュタステリドを使って薄毛が改善したケース

あらゆる結果においてデュタステリドのほうがフィナステリドよりも効果があるという結果がでています。そして、副作用のレベルも大きな違いはありません。

そのため、フィナステリドで効果がなかった人でもデュタステリドで副作用を起こすことなく薄毛改善効果が得られることが多いです。

例えば、海外の試験において、フィナステリド1mgを毎日6か月以上使い続けて改善が見られなかった35人に、デュタステリド0.5mgを毎日服用する治療を6ヶ月行ったところ、17人は少し改善、6人は中程度改善、1人は大幅に脱毛症が改善したという報告があります。

ただし、フィナステリドよりもはっきりと効果があるのはデュタステリド0.5mgからであり、その用量が少なくなるとフィナステリドと同じレベル、またはそれ以下の効果になってしまうことが多いようです。

そして、薄毛治療薬は特に30代~40代くらいまでの薄毛に悩む中年男性に効果があります。50代や60代以上になると男性型脱毛症に加えて老化現象による薄毛をまねくようになるため、薬の効果がわかりにくくなります。

デュタステリド0.1mgと0.5mgを比較した試験(外国データ)

以下の画像は、海外の試験においてプラセボとデュタステリド(ザガーロ)0.1mg、0.5mgの薄毛改善効果を比較したもの。試験は1日1回24週間経口投与した結果です。

そして、この検査は発毛数だけではなく、脱毛をもたらすジヒドロテストステロン(DHT)の血清中と頭皮中の抑制率も測定されています。

デュタステリドのDHT抑制率の画像

この海外の試験結果をそれぞれ詳しくまとめると以下のようになります。

発毛数(毛髪増加数)

発毛数は、直径1インチ(約2.54cm)円形あたりの非軟毛(直径30μm以上の毛髪)の増加数です。

  • プラセボ(偽薬)ではマイナス26.2本。
  • デュタステリド0.1mgでは72.4本の毛髪増加。
  • デュタステリド0.5mgでは94.5本の毛髪増加。

やはりデュタステリドの用量が多くなるほど抜け毛抑制に高い効果が期待できることがわかります。

血清中DHT抑制

単純に薬を服用する前と後の血清中のジヒドロテストステロン(DHT)濃度を比較したものです。

  • プラセボ(偽薬)では血清中のDHTが4.2%増えています。
  • デュタステリド0.1mgの血清中のDHTの抑制率は64.9%。これはフィナステリド1mg~5mgを服用するのと同じレベルの効果だとされています。
  • デュタステリド0.5mgでは血清中のDHTを90.2%抑制されたという結果が示されています。服用し続けることでこのレベルが維持されるとされます。

頭皮中DHT抑制率

デュタステリドが薄毛や抜け毛に効果を示すには、頭皮におけるDHT抑制率が高くないといけません。以下は24週間後の頭皮DHT抑制率の比較。重要なデータです。

  • プラセボでは頭皮中DHTが6.3%の増加。
  • デュタステリド0.1mgでは頭皮中DHTが39.9%の減少率。
  • デュタステリド0.5mgでは頭皮中DHTが51.8%の減少率。

デュタステリドを薄毛治療に使用する場合は、基本的に0.5mgの用量で治療が行われますが、それでも肝心な頭皮中では約半分(51.8%)しか抑制できません。

そのため、もっとデュタステリドの用量を増やしたほうがいいとする見解もあります。なお、デュタステリド2.5mgを使った頭皮中DHT抑制率のデータは次にまとめています。

2006年の米国21施設における試験(海外データ)

古いデータですが、2006年にアメリカの21施設で行われたデュタステリドとフィナステリドの効果を比較した試験のまとめです。古いデータなのですが十分参考になると思います。

この当時はデュタステリドは「アボルブ」という前立腺肥大症の治療薬として使用されていて、薄毛治療薬としては販売されていませんでしたが、脱毛をもたらすジヒドロテストステロンを抑制する優れた効果があると認識されていたことから、すでに販売されていたプロペシア(フィナステリド)と比較して行われたものです。

試験は21歳から45歳まで、平均年齢36.4歳の軽度~中等度の男性型脱毛症患者を対象にしています。その患者は6カ月以内に何らかの脱毛症治療を行っていない男性です。

試験内容は、被験者全体416人(ほとんどが白人種)に対して、デュタステリドを1日あたり0.05mg、0.1mg、0.5mg、2.5mg、そして比較としてフィナステリド(プロペシア)を5mg、 さらに薬の有効性を証明するためのプラセボ(偽薬)を、それぞれのパターンに振り分けて24週間(約6か月間)服用した試験結果です。

この試験ではフィナステリド1mgが検証されていませんが、その理由は試験時に市販品としてフィナステリド(プロペシア)1mgが利用できなかったためとされています。

血清中DHT抑制効果の比較

以下はそれぞれの投薬による24週間後の血清中ジヒドロテストステロン(DHT)の抑制率の結果です。

  • フィナステリド1日5mgでは、血中DHTは73%の抑制率。
  • デュタステリド1日0.1mgでは、血中DHT抑制率が69.8%。
  • デュタステリド1日0.5mgでは、血中DHT抑制率が92%。
  • デュタステリド1日2.5mgでは、血中DHTは94%抑制。

デュタステリド0.5mgと2.5mgでは血清中DHT抑制作用に大きな違いがなくなります。その理由から、デュタステリドを使用する場合は0.5mgという用量が標準的な治療となっているようです。

頭皮のDHT抑制率のまとめ

男性型脱毛症は、頭皮内でジヒドロテストステロン(DHT)が発毛を抑制してしまうことで発生してしまいます。そのため、血清中よりも頭皮中DHTの抑制力が重要になってきます。

その頭皮中DHT抑制効果はそれぞれ以下のとおりです。24週後の結果です。

  • フィナステリド5mgでは、頭皮DHTの減少率は約41%。
  • デュタステリド0.1mgでは、頭皮DHT抑制率は約32%。
  • デュタステリド0.5mgでは、頭皮DHTの抑制率は約51%。
  • デュタステリド2.5mgでは、頭皮DHT抑制率は約79%。

デュタステリドの用量が高くなるほど頭皮中DHTを抑えることができるという結果がでています。なお、フィナステリドの頭皮中DHT抑制率は低く、5mgでも41%です。

標準的なフィナステリド1mgの治療であれば、頭皮DHT抑制率は41%よりも低いと予想できます。

フィナステリドで効果が実感できない人はわりと多いのですが、その原因は頭皮中ジヒドロテストステロン減少効果が低いことが影響しているかもしれません。

毛髪数の変化

それぞれのパターンを24週間(約6か月間)続けた時の毛髪数の増減数です。直径1インチ(2.54cm)円形あたりの毛髪数の増減量です。

  • プラセボ(偽薬)では約-32本の減少数。(12週間では約-26本の毛髪減少)
  • フィナステリド1日5mgでは+75.6本の増毛数。(12週間の使用では52.1本の増加)
  • デュタステリド1日0.1mgでは+78.5本の増毛数。(12週間の使用では+55本の増加)
  • デュタステリド1日0.5mgでは+94.6本の増毛数。(12週間の使用では71.3本の増加)
  • デュタステリド1日2.5mgでは+109.6本の増毛数。(12週間の使用では99.9本の増加)

10%以上の増毛効果が得られた割合

試験から24週間後において、最低でも10%以上の増毛効果が得られた割合は以下の通りです。

  • プラセボ(偽薬)は0%
  • フィナステリド5mgは41%
  • デュタステリドでは、0.05mgが17%、0.1mgは38%、0.5mgは48%、2.5mgは56%。

この結果を簡単にまとめると効果の順番は、

デュタステリド2.5mg>>>デュタステリド0.5mg>>>フィナステリド5mg>>>デュタステリド0.1mg>>>デュタステリド0.05mg

の順ということになります。

デュタステリド0.1mgは、フィナステリド1~5mgレベルの効果だとされています。そのため、フィナステリドで効果が得られなかった人がさらなる発毛アップを望むのならデュタステリド(ザガーロ)0.5mg以上にしたほうがいいとされます。

参考:http://www.life-cl.com/paper/topic048.html

なぜデュタステリドが効果が高いのか?

AGA治療におけるあらゆる試験結果において、フィナステリドよりもデュタステリドのほうが高い効果が示されていますが、その理由はは若干の効能の違いによってもたらされます。

1型2型、両方の5αリダクターゼをブロックする

ジヒドロテストステロン(DHT)が男性型脱毛症を起こす仕組み画像 男性型脱毛症(AGA)をもたらす原因は、頭皮にあるジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンだとされています。

DHTが毛母細胞の働きを阻害することで毛髪の成長不良を起こし、毛が細くなったり抜け毛が増えたりすることで薄毛をまねくのです。

そのDHTを作りだすのが5αリダクターゼという酵素です。5αリダクターゼは、テストステロン(最も生理活性が高い男性ホルモン)をDHTに作り変え、それが毛母細胞の働きを妨げることで脱毛症を引き起こすと考えられています。

つまり、男性型脱毛症の原因は5αリダクターゼという酵素だと考えることができます。そして、5αリダクターゼには1型と2型があるとされます。

基本的に薄毛の原因となるのは1型よりも2型5αリダクターゼだとされていますが、どちらも最終的には薄毛の原因となってしまう可能性はあります。

デュタステリドは1型、2型の5αリダクターゼのどちらにも阻害効果があります。一方、フィナステリドの場合、2型5α還元酵素を阻害する働きがありますが1型には効きません。

つまり、デュタステリドはどちらの酵素もブロックするのでフィナステリドよりも効果が高いといわれているのです。

DHTレセプター占有率が高い

レセプターをブロックする写真 デュタステリドはフィナステリドよりもジヒドロテストステロン(DHT)のレセプター(受容体)への占有率が高いといわれています。

DHTそのものが作用を及ぼさないように働くため、より強い抜け毛の抑制効果と発毛効果が期待できるのです。

持続作用が長い

デュタステリドがフィナステリドよりも効果が高い理由の一つが、持続作用が長いことがあげられます。

薬を服用後、血中から成分濃度が半分になるまでの時間を「半減期(はんげんき)」といいますが、その半減期でいえばフィナステリドは6時間で血中濃度は半減しますが、デュタステリドの場合は約4週間も持続します。

デュタステリドは長く効くので、それと比例して持続的に頭皮中DHTを抑制し、薄毛の改善につなげることができるのです。