カミツレエキス(カモミラET)とは、キク科の植物カミツレ(英語:chamomile、カモミール)の花から抽出されたエキスです。
美白効果と消炎作用があり、化粧水やハンドクリームなどいろいろなコスメに配合されています。
そして、カミツレの美白作用とメラニンが作られる仕組みを解明して化粧品メーカーの花王が開発したのが「カモミラET」です。
その美白作用が認められたことで、1999年に医薬部外品の有効成分として厚生労働省に認められています。
一般には「カミツレエキス」「カモミラエキス」「カモミールエキス」などの表記で化粧品に配合されていますが、花王のコスメでは「カモミラET」という名称で美白剤に配合されています。
成分と効能
カミツレエキスに含有される主な有効成分は、アミノ酸、タンニン、フラボノイド類、カマズレン、ビサボロール、アズレンなどです。
アミノ酸は保湿作用。カマズレン、ビサボロール、アズレンは消炎作用。
フラボノイド類は抗酸化作用。ビサボロールには抗菌作用が確認されています。
エンドセリンを阻害してメラニンブロック!
カミツレエキスの美白作用は、エンドセリンという物質を抑制することによるもの。
紫外線や炎症などの影響を受けると、肌の防御反応として様々な物質作られますが、その一つが「エンドセリン」という情報伝達物質です。
エンドセリンは、メラノサイト(メラニンを作る色素細胞)のレセプターに結合し、「メラニンを作れ」と働きかける作用があります。
その結果、メラノサイトを活性化。そしてチロシナーゼ酵素の産生を促すことで黒色メラニンが作られ、最終的に肌が黒くなったり、シミが濃くなったりするのです。
カミツレエキスは、メラノサイトに「メラニンを作れ」と指令を出すエンドセリンという情報伝達物質の働きを阻止します。
紫外線や炎症によるメラニンの合成をより早い段階から阻止し、シミや色素沈着を予防します。
ただし、その効能はとても強いものではなく、どちらかというと穏やかに作用します。
チロシナーゼ酵素を阻害する作用は期待できない
美白効果がある成分というとメラニンを合成する酵素(チロシナーゼ)を阻害するものがほとんどです。
例えば、ビタミンC誘導体、アルブチン(天然)、αアルブチン、マグノリグナン、コウジ酸、エラグ酸など、有名な美白成分のほとんどがメラニンを合成するチロシナーゼという酵素をブロックする働きです。
一方のカミツレエキスはエンドセリンというメラノサイトへと指令をだす物質を抑制するものであり、チロシナーゼそのものを阻害する作用はありません。
すでにあるシミを消すというよりも予防に効く
シミには老人性のしみ(一般的なシミ)、肝斑、そばかす、炎症後色素沈着など様々ありますが、カミツレエキスはそういったすでにあるシミを改善するというよりも、「シミの予防」に効きます。
定着してしまったシミに対する効果は低いです。
還元作用もない
例えば、ビタミンC誘導体やハイドロキノンなどはすでに沈着したシミそのものを薄くする「還元作用」という働きがありますが、カミツレエキスにはそういった作用はありません。
使い続けるとしみが劇的に薄くなってくるといった期待はできません。
カミツレエキスには優れた抗炎症作用がある
カミツレエキスには穏やかな消炎作用があります。
メラニンが作られる原因の一つが皮膚の炎症ですが、カミツレエキスの抗炎症作用により皮膚の炎症を抑制し、メラニンの生成を抑制することができると考えられます。
そして、カミツレエキスは、美白作用というよりも消炎作用のほうが注目されることが多いです。
ニキビケア化粧品によく配合されるこの成分は、「消炎成分」として表記されていることが多いです。
ニキビ跡の予防に効く
ニキビなどで炎症を起こすと、紫外線を浴びたときと同じようにエンドセリンが作られ、メラニンが活発に合成されます。
カミツレエキスを使っていればそのエンドセリンや炎症が抑制されることで、ニキビ跡のシミを予防することができると考えられます。
消炎作用はグリチルリチン酸より劣る
カミツレエキスと同じように植物成分で消炎作用がある成分にグリチルリチン酸がありますが、カミツレはそれよりも抗炎症作用は劣ります。
グリチルリチン酸 > カミツレエキス
保湿作用もあるけど低い
カミツレエキスは保湿作用も有します。ただし、その効果は低いです。
ターンオーバーを促す
年齢を重ねるとターンオーバーが低下し、シミができやすくなります。カミツレエキスはターンオーバーを活性化し、くすみのない明るい肌へと導きます。
血流を良くする
血流が悪くなると肌がくすんだり、しみが増えたりするもの。カミツレエキスは血行を促して美肌をもたらします。
炎症防止の目的で使われることもある
美容皮膚科では、ケミカルピーリングやレーザー治療などの肌への負担が高い治療が行われることがありますが、施術後のクールダウンのために、カミツレエキスの美容液を使うところもあります。
エステサロンではカモミールの精油でオイルマッサージするお店も多いです。(筆者も一度経験あります)。
また、カミツレエキスを含んだ保湿パックというのも、エステでよくあるフェイシャルケアの一つです。
入浴剤として使用されることも多い
カミツレエキスは、入浴剤として使うと体が温まり冷え性に効果があります。入浴剤は華密恋(KAMITSUREN)というメーカーが有名。
カミツレエキスの副作用や危険性はある?
カミツレエキスのメリットは刺激性が少ないことです。副作用のリスクはかなり低いです。
刺激が低く、さらに美白作用や消炎作用を有するので、幅広く使用されているのです。
また、「植物エキス=肌に良い」みたいなイメージがあることも化粧品によく配合される理由の一つです。
場合によっては肌に合わないこともある?
人によっては成分との相性があって効果や副作用の出方に違いがあるもの。
なのでカミツレエキスのような成分が肌に合わない人もまれにいます。
場合によってはかぶれといわれるアレルギー性の湿疹が現れ、かゆみをともなって赤くなることもあるかもしれません。
そして、化粧品が合わないと思ったら絶対に使用を中止しましょう。
そして、炎症がひどい場合は皮膚科を受診して下さい。お医者さんはスタデルム軟膏や、フエナゾール軟膏などの消炎薬を処方したりします。
また、かぶれの症状が強い場合はステロイド外用薬が処方されることが多いです。
植物由来成分は安全という迷信
植物成分は、天然のものなので肌に対しても「危険性はない」、「安全性が高い」といわれたりします。
ところが、実際には天然の植物成分だから安全だとは限りません。植物成分でも肌トラブルを起こすものはいっぱいあります。
カミツレエキスにおいても同様のことがいえます。安全性が高い成分だとは思いますが、肌に合わない人がいてもおかしくはないです。
例えば、カミツレはキク科の植物なので、菊に対してアレルギーをもっている場合は注意したほうがよさそうです。
なお、カモミールに対して食物アレルギーを起こす人もいたりするので、絶対に安全とは限りません。
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