美白化粧品に配合される美白有効成分一覧

シミ・色素沈着の原因となるメラニン色素は、紫外線や物理的な刺激などの影響によってメラノサイト活性化物質が発生し、それによってチロシナーゼという酸化酵素が活性し、チロシナーゼがアミノ酸のチロシンをメラニンに作り変えることで生み出されると考えられています。

美白化粧品に含まれる美白成分には、大きく分類して「メラノサイト活性化因子の働きを阻害する成分」と、「チロシナーゼ酸化酵素の働きを阻害する成分」のどちらかを有します。そのような美白作用がある成分をご紹介します。

メラニン生成を促す情報伝達物質の働きを阻害する成分

メラニン色素がたくさん作られる要因は、まず紫外線などの影響でメラノサイト(メラニン色素を作り出す細胞)が活性化することから始まります。そのため、メラノサイトの活性化を促す物質を阻害することでメラニン生成を抑制することができると考えられています。メラノサイトの活性を促す物質を阻害する成分には、主に以下のようなものがあります。

トラネキサム酸(t-AMCHA)

トラネキサム酸は、皮膚が刺激を受けると発生する「プラスミン」を抑える作用によって皮膚炎やメラニンの過剰生成を抑制する働きがある成分です。プラスミンとは、たんぱく質分解酵素の一種で、肌細胞を分解して肌荒れを引き起こす原因の一つだとされます。また、プラスミンは様々な作用をもたらす過程において「プロスタグランジン」というメラニン色素の生成を促す情報伝達物質の発生を促します。トラネキサム酸の抗プラスミン作用によってプロスタグランジンを抑え、皮膚の炎症やメラニンの過剰生成を抑制することで美白効果を示します。トラネキサム酸は従来までは改善が難しかった肝斑治療にも有効な成分として有名です。

トラネキサム酸は、医薬部外品の有効成分として厚生労働省から認可されている成分です。

カミツレエキス(カモミラET、カモミラエキス)

カミツレエキスは、キク科のカミツレ(英語:カモミール)の花から抽出された植物エキスで、エンドセリンというメラニン色素の生成を促す情報伝達物質を抑制してメラニンの生成を抑制し、シミ・色素沈着を予防します。また、抗炎症作用、血行促進作用、保湿効果なども有します。カミツレエキスの他に、「カモミラエキス」「カモミールエキス」ともよばれ、この成分を開発した大手化粧品メーカーの花王では「カモミラET」と表記しています。

カモミラETは、医薬部外品の有効成分として1999年に厚生労働省から認可されています。

チロシナーゼ酵素を阻害する美白成分

メラニン色素は、メラノサイトで作られたチロシナーゼという酸化酵素がアミノ酸のチロシンを変換して合成されるため、このチロシナーゼの働きを阻害することで美白効果を得ることができると考えられています。多くの美白成分はこのチロシナーゼ酵素阻害効果を有する成分で、代表的な成分には以下のようなものがあります。

アルブチン(βアルブチン)

元々はコケモモや西洋ナシなどの植物から抽出される美白有効成分です。メラノサイト内(色素細胞内)でメラニン色素を合成するチロシナーゼ酵素の働きを抑制する作用により、美白に導きます。α-アルブチンと区別される場合は、「β-アルブチン」といわれることがあります。(一般にアルブチンというと歴史が長いβ-アルブチンを指します)。

アルブチンは、医薬部外品の美白有効成分として1989年に厚生労働省から認可され、多くの化粧品に用いられています。

α-アルブチン

ハイドロキノンに糖を結合させて合成された美白成分(ハイドロキノン糖誘導体)で、従来のアルブチン(βアルブチン)と比較して約10倍ものチロシナーゼの活性を抑制する効果があるといわれています。水やアルコールによく溶ける性質をもち、化粧水などに配合されています。

コウジ酸

コウジ酸とは、麹菌がグルコースなどの糖を発酵させることによって生成される麹菌由来成分で、麹を扱う酒蔵で働く人の手が白くなることから注目されるようになった美白成分です。 コウジ酸は、メラニン色素を合成するチロシナーゼ酵素の活性を抑制してしみ、色素沈着を改善します。

コウジ酸は、医薬部外品の美白有効成分として1988年に厚生労働省に認可されています。

エラグ酸

エラグ酸とは、イチゴ、ラズベリー、クランベリー、ブドウ、ザクロなどの果実に含まれるポリフェノールの一種で、美白作用と強い抗酸化作用をもちます。アミノ酸のチロシンからメラニン色素を合成するチロシナーゼ酵素の働きを抑制して、しみ・そばかす・色素沈着をできにくい肌へと導きます。化粧品に配合されるエラグ酸は南米ペルー原産のマメ科の植物タラの実などから抽出されたものが使用されることが多いです。

エラグ酸は、医薬部外品の有効成分として1996年に厚生労働省に認可されています。

プラセンタエキス

主に豚や馬の胎盤から抽出して精製された成分で、各種成長因子(細胞増殖因子)、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などを豊富に含みます。チロシナーゼ酵素の働きを阻害してメラニン色素を抑制する働きがあるため、美白成分として使用されます。また、様々な成長因子を含み、細胞生成を活発にして新陳代謝を高めるため、メラニンの排出を促す効果だけではなく、エイジングケア成分としても使用されています。

プラセンタエキスは、医薬部外品の有効成分として厚生労働省から認められている成分です。

ビタミンC誘導体

ビタミンC(アスコルビン酸)を別の物質と結合させて安定性と吸収性を高めた成分です。水溶性ではリン酸基と結合させた「リン酸アスコルビルマグネシウム」「リン酸アスコルビルナトリウム」などがあり、脂溶性ではパルチミン酸(脂肪酸)などと結合させた脂溶性ビタミンC誘導体があります。皮膚内に浸透したビタミンCが抗酸化作用を発揮して、しみ、そばかす、にきびなどを改善します。また、ビタミンCはコラーゲン生成や細胞賦活作用もあるため、シワやたるみなどのエイジングケア成分としても用いられます。

ビタミンC誘導体は、医薬部外品の有効成分として厚生労働省から認可されています。

ハイドロキノン

ハイドロキノンは、強力な還元作用をもつ美白成分で、即効性が高いことから「肌の漂白剤」といわれることがあります。ハイドロキノンは、チロシナーゼ酵素の働きを強力に抑え色素沈着を抑えます。また、強力な還元力により、メラニンそのものを薄く淡色化する働きがあります。他にも、メラノサイト(メラニン色素を作る細胞)そのものの働きを低下させていくため、短期間で肌を白く導きます。ただし、不安定な成分であることから上手に使用しなければ肌トラブルを起こす危険性があります。

ハイドロキノンに肌トラブルを引き起こすリスクがあることから、厚生労働省では安全性を考慮して2%ほどの低い濃度の使用がすすめられています。

マグノリグナン

マグノリグナンは、モクレン科植物ホオノキの樹皮に多く含まれるポリフェノールに着目して開発された美白成分です。メラニン色素を合成するチロシナーゼという酸化酵素の成熟を阻止することで結果的にメラニン色素の生成を抑制します。

マグノリグナンは、2005年に医薬部外品の有効成分として厚生労働省に認可されています。

リノール酸

リノール酸はサフラワー油などの植物油から抽出される脂肪酸で、メラニン色素を合成するチロシナーゼ酵素そのものを分解して減少させる働きにより美白効果を示します。肝斑への効果も期待できる成分です。

リノール酸は、医薬部外品の美白有効成分として2001年に厚生労働省に認可されています。

ルシノール

ルシノールは、モミの木の美白効果に着目して開発された美白成分です。メラニン色素を合成するチロシナーゼのチロシン受容部を塞ぐことによってメラニンの合成を阻害し、しみを改善・予防します。一般表示名称は「4-n-ブチルレゾルシノール」といい、大手化粧品メーカーの「ポーラ」が開発した成分です。

ルシノールは、1998年に医薬部外品の有効成分として厚生労働省に認可されています。

4MSK

4MSKは、サリチル酸の誘導体で、シミの部分で発生するターンオーバーの乱れに着目して開発された成分です。シミの部分で起こっているターンオーバーの乱れを改善して、メラニン色素の沈着を排出を促す働きがあります。また、メラニン色素を合成するチロシナーゼ(酸化酵素)の活性を抑制して、メラニン生成を阻止します。大手化粧品メーカーの資生堂が開発した成分です。4MSKとは「4-メトキシサリチル酸カリウム塩」の略称です。

4MSKは、2003年に医薬部外品の有効成分として厚生労働省に認可を受けています。

油溶性甘草エキス(グラブリジン、甘草フラボノイド)

甘草の根から抽出されたフラボノイドを主体とした油溶性の植物エキスです。主成分である「グラブリジン」「グラブレン」には、メラニン色素の合成するチロシナーゼ酵素の抑制作用があり、ビタミンCやコウジ酸などよりも美白効果が高いといわれています。他にも、抗炎症作用もあります。フラボノイドを主体とした成分であるため、「甘草フラボノイド」といわれることがあります。