蚊、蜂などの虫さされが原因のシミ・色素沈着の対処方法

虫さされの写真 蚊や蜂などによる「虫さされ」によって色素沈着を起こし、シミとなって長年残ってしまうことがあります。

強い炎症反応(アレルギー反応)が起こるほど色素沈着も悪化しますので、素早い対処が必要です。

今回は、虫さされによる色素沈着の予防や改善について詳しくまとめました。

蚊に刺された時

蚊の写真 蚊による虫さされはメスの蚊によるものです。メスの蚊が産卵のための栄養補給として人間の血を吸うとされます。オスの蚊はヒトの血を吸うことはないとされています。

蚊に刺されるとかゆくなる原因

虫さされの写真 蚊が人間の皮膚を刺すとき、麻酔成分などを含んだ唾液を注入してから吸血するのですが、その唾液中には様々なタンパク質を含み、それに対して人間がアレルギー反応を起こすことで炎症、かゆみを起こしてしまいます。

人間の身体はアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が入ってくると、それに反応して肥満細胞(マスト細胞)がヒスタミンという物質を放出するように働きます。このヒスタミンはかゆみをもたらす作用があるので肌がかゆくなるのです。

なお、一度も蚊に刺された事がない人はアレルギー反応を起こしません。なぜかというと体内にアレルゲンに対する抗体ができていないため、身体がアレルギー反応を起こしようがないためです。

蚊に刺されてシミ・色素沈着が起こる仕組み

ヒスタミンによるかゆみ炎症悪化の写真 蚊に刺されるとヒスタミンが発生しますが、そのヒスタミンは単にかゆみだけではなく炎症反応にも関与し、毛細血管拡張や血管透過性を亢進させて炎症反応を大きくしてしまいます。そして、それと同時にメラニン色素の合成も活発になります。

ヒスタミンの働きによって炎症が大きくなるにつれ、プロスタグランジンなどの様々な生理活性物質の発生も促されるのですが、それがさらにメラニン色素の合成を促すように働きます。

いろいろな炎症性物質が発生することで赤く腫れてメラニンがたくさん作られることで、腫れと赤みが引いたら黒ずんだ状態になってしまうのです。

虫さされを掻くとなぜ悪化するの?

虫に刺された皮膚を掻くことでさらに炎症が悪化するようになります。これは、炎症部位に刺激を与えることで免疫反応が活性化し、かゆみをもたらすヒスタミンがさらに発生することが原因です。

ヒスタミンがたくさん放出されると炎症反応によってサブスタンスPという伝達物質が発生するのですが、そのサブスタンスPはさらにヒスタミンの放出を促すように働きます。つまり炎症反応の悪循環につながることがあるのです。

また、虫刺されによって皮膚を何度も掻いてしまうことで皮膚のバリアが破壊され、そこから黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌などの病原性が強い細菌による二次感染を引き起こすことがあります。

ばい菌によってさらに炎症が進行して化膿すれば、防御反応としてたくさんのメラニン色素が作られますので、治った後もシミや色素沈着として残ってしまうことがあります。

そのため、虫さされ部分を掻いたり、つねったりといった「刺激を与える行為」は絶対にしてはいけないのです。

蚊に刺されたときの対処法

蚊に刺されたところが色素沈着を起こしてシミになってしまうのはある程度は仕方ないことですが、最小限に抑えることは可能です。ここからは虫刺され後の対処法をご紹介します。

痒みや炎症を抑えるために薬を塗る

薬を塗る画像 虫さされた直後は炎症反応が急激に現れる時なので、この段階で素早く炎症を抑える虫刺され用の塗り薬をつけましょう。有名な市販の塗り薬はムヒやウナコーワなどがあります。虫刺されのお薬は消炎作用をもつ成分を中心に作られています。

痒みがなくなっても炎症がわずかに残っていることがよくあるため、赤みがある程度引くまで薬は塗り続けたほうがいいとされます。薬を使う期間は蚊に刺された場合は3~5日間くらいが一つの目安です。

また、皮膚科に行けば、非ステロイド性の消炎薬や腫れがひどい場合はステロイドが処方されることがあります。

患部を冷やす

蚊に刺されるとヒスタミンやプロスタグランジンなどの様々な炎症物質が発生して腫れやかゆみが大きくなりますが、患部を冷やすことでそれらの炎症物質を抑えることができます。

蚊に刺されたらすぐにアイスパックやビニール袋などに入れた氷水などで10~15分ほど冷やして下さい。刺されたすぐに対処するのが理想です。腫れの進行を抑えることができるので、同時にメラニン色素の生成も抑えることができるはずです。

紫外線を浴びないようにする

紫外線を嫌がる画像 虫さされで患部が腫れているところに、紫外線によるダメージが加わるとさらにメラニン色素の合成が活発になり、色素沈着がひどく残ってしまいます。

さらに、炎症が起こっている部分はただでさえ皮膚の構造が崩れているため、表皮で作られたメラニン色素が皮膚の深い部分に入り込んでしまい、治りにくいシミとなってしまうこともよくあります。炎症がある時の紫外線は特に気を配ってください。

特に日焼けしてしまうようなレベルの強い紫外線には注意して下さい。

皮膚を掻かない

虫さされ部分をかくと炎症・腫れが悪化してしまいますので、かかないようにして下さい。掻きたい場合は薬を塗るとかゆみは抑えられます。

患部を温めないようにお風呂に注意する

シャワーの画像 お風呂やマッサージなどで虫刺され部分を温めるとかえって炎症性物質が活発になって腫れがひどくなります。

同時に色素沈着も悪化してしまいます。そのため、お風呂に入るときは虫さされ部分は温めないように工夫して下さい。

蚊に刺されたら数日は軽いシャワーだけにしたほうがいいかもしれません。

虫さされ後の色素沈着はどうすればいい?

炎症後色素沈着の画像 蚊やブヨ、ハチなどに刺された後の色素沈着は、軽い場合はターンオーバー(皮膚の新陳代謝のこと)とともに数か月単位で治っていきます。

放っておいたらいつの間にか治っていたということがほとんどだと思います。

ところが、虫刺されの腫れがひどい場合や加齢によるターンオーバーが低下していたりすると、治るまで年単位の期間がかかったり、場合によっては一生、シミとなって跡が残ってしまうこともあります。

虫さされの色素沈着が治りにくい理由とは?

虫刺された跡は炎症が大きいものほど治りにくい欠点があります。これはニキビなどにも言えることですね。

色素沈着はメラニン色素が皮膚内で溜まってしまうことで引き起こされます。そのメラニン色素は表皮層で作られ、通常はターンオーバーによって最終的には垢(あか)と一緒に剥がれていきます。

皮膚の構造と真皮に入り込んだシミの画像 ところが、虫さされなどの強い炎症によってメラニン色素が大量に作られると、表皮で作られたメラニン色素がコラーゲンなどがある真皮層に入り込んでしまうようになります。

表皮と真皮の中間に存在する基底膜(きていまく)という組織が炎症によって構造が破壊されることで、メラニン色素が真皮に入り込んでしまうのです。

真皮層は表皮層のようなターンオーバーは行われていないので、古い角質と共にメラニンが剥がれていくという現象は起こりません。

そして、真皮に入り込んだメラニンはメラノファージという細胞が処理しますが、残念ながらメラノファージは数そのものが少なく、さらに活動性も低いので、メラニンを食べたままその場に留まってしまうことも多いです。

そういった理由から、真皮層に落ち込んだメラニン色素の処理が思うように進まないため、虫さされによる炎症性色素沈着は長い時間をかけないと治っていかないのです。

美白化粧品がよく効く

炎症後色素沈着が治っていくにはある程度の時間が必要ですが、治りを早めるにはハイドロキノンやビタミンC誘導体などの一般的な美白成分が効果があります。

ハイドロキノン

ハイドロキノンの画像 美白剤として有名なハイドロキノンは炎症性色素沈着にとても有効に働きます。

メラニンの生成抑制だけではなく、メラニンそのものを薄くする還元作用を強力に持っているので、より短期間での改善が期待できるのです。
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ただし、ハイドロキノンは刺激性が強い欠点があり、かぶれてしまう人も珍しくないです。そのため、一度パッチテストしてから使用して下さい。そして、もし異常が現われたら必ず使用中止して下さい。

そしてハイドロキノンはトラブルのリスクもあるので、炎症が完全に治って3か月くらい経ってから使用しましょう。炎症後すぐは肌の構造も乱れているため、ハイドロキノンでかぶれてしまうと色素沈着が皮膚の深い部分に入り込んで治りにくくなってしまいます。

脂溶性ビタミンC誘導体

脂溶性ビタミンC誘導体(VCIP)の写真 ビタミンC誘導体は虫刺され跡(炎症性色素沈着)によく効きます。

ビタミンC誘導体には水溶性と脂溶性がありますが、虫さされ跡には吸収性と持続性が高く、さらに刺激性が低い脂溶性ビタミンC誘導体が理想です。

脂溶性ビタミンC誘導体にはいくつかの種類がありますが、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(略:VCIP)という種類が安定性も高くておすすめです。

炎症性色素沈着に効くレーザー治療

炎症性色素沈着にレーザー治療を使用すると、シミが薄くなるどころか逆に悪化することがよくあります。これはレーザー照射そのもののダメージでメラニン色素が作られ、シミが悪化してしまうことが原因です。

レーザートーニングの写真 そのため、基本的に虫さされ跡などに対して一般的なシミ取りレーザーを使用することは難しいとされますが種類によっては効果があるものもあります。

その一つがレーザートーニングという治療です。レーザートーニングはとても優しいレーザー光を繰り返し当てることでじょじょにシミを改善していく治療です。

従来まで難しかった色素沈着にも効果を発揮します。

欠点は優しい治療である一方で治療効果も劇的なものではないため、通常は何度も何度も治療回数を重ねる必要があります。5回以上を一つの目安にして下さい。

蜂(ハチ)に刺された時の腫れや色素沈着について

ハチに刺される写真 蚊よりももっと高いレベルで炎症反応やかゆみが起こるのが蜂(はち)に刺されたときです。単に腫れやかゆみが現れるだけなら良いのですが、アナフィラキシーショックといわれる生命に関わるような症状が現れるケースがあります。

ハチに刺されるとどういう症状がでる?

ハチに刺されて大きく腫れたり、かゆくなってしまうのは、蜂の毒に対するアレルギー反応によるものです。

スズメバチに刺されて腫れた写真 基本的に蚊に刺された時と同じ仕組みで発生するのですが、ハチの毒は蚊よりも格段に毒性が強いのでアレルギー反応もとてもひどくなります。

ハチに刺されると、通常は強い痛みを感じ、刺された場所が赤く腫れ、その後は腫れと痒みが残ります。さらに症状が強くなると、顔色が悪くなる、下痢、全身性じんましん、体のだるさなどが現われることがあります

アナフィラキシーショックを起こすことも少なくない

ハチに刺されることでアナフィラキシーショックを起こすことがあります。アナフィラキシーショックとは、急激なアレルギー反応により呼吸困難、血圧低下、意識障害などの生命を脅かすような症状が現われることをいいます。まれに死亡してしまうケースもあります。

ハチによるアナフィラキシーショックの死亡例のほとんどは、血圧の低下と上気道の浮腫による呼吸困難が原因となります。血圧が下がるのは、強烈なアレルギー反応によってヒスタミンが多量に放出され、そのヒスタミンの作用によって急激な血圧低下が起こるためです。

ハチに刺されて呼吸困難になったり意識がもうろうとするようなことがあったら必ず救急車を呼ばなければいけません。

ハチの種類によって対処法が違う?

ハチの種類によって攻撃性が違います。そして刺された時に現れる症状や、適切な対処が違うケースがあります。

ミツバチ

ミツバチの写真 ミツバチは基本的にはヒトを積極的に襲うようなことはありません。ところが、巣を攻撃したりすると、積極的に襲ってくるようになることもあります。

ミツバチに刺されると痛みや腫れ、かゆみが現れます。ミツバチの毒性は高くないのでアナフィラキシーショックを起こすことは少ないとされます。

そして、ミツバチは毒針を残すように皮膚を刺すので、刺された後の処置はまずその毒針を抜かなければいけません。

スズメバチ

スズメバチの写真 スズメバチは、蜂の中では最も攻撃性が高く、ヒトに対する毒性も強いことから最も危険だといわれています。ハチによるアナフィラキシーショックというと、ほとんどがスズメバチによるものです。

種類はキイロスズメバチ、ヒメスズメバチ、オオスズメバチ、コガタスズメバチなどが有名です。

ハチに刺されたときの対処法

50メートル以上は離れる

ハチに襲われたら必ずその場から逃げて下さい。スズメバチは10~50メートルくらいは追ってきますので、それ以上離れて下さい。できれば屋内に入って下さい。

そのとき、激しい動きで逃げると逆にハチを刺激してしまってかえって凶暴になることがありますので、落ち着いてその場から離れて下さい。

なお、ハチは黒い物体に反応して襲ってくる性質があります。そのため、髪の毛が衣服で隠すようにして低姿勢で逃げるのが理想です。黒目も狙われるので注意です。ハチの巣に近づくときは全体的に黒い服装はしないほうがいいです。

毒針を抜く

ハチの中でもミツバチに刺されると患部に毒針が刺さったままになることがあります。その場合は、その針を取り除く必要があります。

ミツバチの針は毒嚢と呼ばれる毒液の入った袋部分もつながったまま刺さっていますので、安易に指でつまんで取り除こうとすると、毒嚢を圧迫して毒が傷口の中にさらに入り込んでしまうことがあります。

そのため、ミツバチの毒針を取り除くときは、毒嚢を圧迫しないように針の部分だけに触れて取り除くのが理想です。毛抜きやピンセットのようなものがあれば良いのですが、それらがなくても毒嚢を刺激しないように針だけを上手に取り除くようにして下さい。

爪の先端を使って横に払うようにとってもOKです。なお、口で取り除くのは危険です。毒が口の中に入ってしまう可能性があります。

患部を洗い流す

ハチに刺された部分にわずかに毒が残っていたりするので、患部を冷水で洗い流して下さい。洗い流しながら周囲をつまんで毒液を出すようにします。患部を冷やすことで炎症を抑える効果も期待できます。ただし、つまみ過ぎると腫れがひどくなるので注意して下さい。

アナフィラキシーの症状が現われたら救急車を呼ぶ

ハチに刺された後に顔色が悪くなった、意識がもうろうとする、吐き気、めまい、動悸、呼吸困難、意識障害などのアナフィラキシーショックの兆候が現われた場合、迷わず救急車を呼んで下さい。処置が遅れるとまれに死亡してしまうケースも考えられます。

蜂の毒はあらゆる毒をもった生物の中でも強力なので油断してはいけません。独自のケアはかえって症状を悪化させることもあります。

抗ヒスタミン薬やステロイド薬を塗る

薬を塗る画像 ムヒやウナコーワなどの虫さされの塗り薬を塗りましょう。また、病院を受診してお薬を出してもらうこともできます。ステロイド薬や非ステロイド性消炎薬が処方されると思います。

ステロイドは作用が強い一方で、強度が高いものを使い過ぎると回復を悪化させてしまうことがあることを覚えておいて下さい。ステロイドの使用は2~3日以内までにして下さい。なお、アンモニアは全く効果はないです。

紫外線は避ける

刺された部分は日焼けは避けて下さい。紫外線を浴びると色素沈着が悪化してしまいます。

当日はお風呂は避ける

お風呂に入ってハチに刺された部分を温めると、炎症物質が発生して腫れが悪化してしまうようになります。そのため、お風呂につかって温めるような行為はしないで下さい。

患部を温めないレベルの軽いシャワーなら大丈夫です。ハチに刺された当日は温めるよりも、冷やすようにこころがけてください。