肌に合わない化粧品を使い続けることで、女子顔面黒皮症(じょしがんめんこくひしょう、別名:リール黒皮症)という色素沈着を起こすことがあります。
その症状は、炎症が続くことで発生し、主に化粧品を多用する女性に多いことで知られています。
ここでは女子顔面黒皮症の症状や原因、治療方法などを解説してきます。
女子顔面黒皮症とは?
女子顔面黒皮症(じょしがんめんこくひしょう)とは、化粧品に配合される成分に対して軽度の接触性皮膚炎(かぶれ)が続き、しだいに皮膚が黒ずんでくる症状です。リール黒皮症とも呼ばれます。
女子顔面黒皮症は、炎症性色素沈着の一つで、化粧品を使用する女性に多いことから、この名が付けられていますが、男性でも化粧品を使用すれば発生する可能性があります。
化粧品を良く使用する顔に発生し、顔の中でも皮膚が薄い頬(ほほ)や首、目元などに発生しやすいです。
また、ひたいやアゴなどにも炎症が起これば発現します。そして、顔以外の部分に化粧品を使って、かぶれを起こし続けることで発生することもあります。
症状の現れ方は、炎症によってメラニン色素が蓄積し、炎症による赤みが引くと、茶褐色~黒褐色のシミが現れます。どく黒っぽくなったり、網目のように発生することがあります。
この症状が発生している人は、顔全体に炎症が起こっていたことから顔全体がくすんでいる印象があります。
黒皮症は、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎などの慢性的な皮膚炎が続くことでも発生することがありますが、化粧品が原因になるものを女子顔面黒皮症といいます。
発生原因
女子顔面黒皮症は、化粧品に対する軽い接触皮膚炎が続くことが原因で発生します。極端な炎症ではなく、軽度の皮膚炎が続くことから問題の認識が遅れてしまうことが多いです。
接触皮膚炎には単純な刺激による「刺激性接触皮膚炎」と、「アレルギー性接触皮膚炎」の2種類がありますが、いずれにしても化粧品成分に対してかぶれることが原因となります。
そして、女子顔面黒皮症の最大の問題は、真皮層にたくさんのメラニンが入り込んで黒ずみが治りにくくなることです。炎症が続くことで、表皮層と真皮層の間に存在する基底膜の構造が破壊され、それによって表皮層で作られたメラニンが真皮に落ち込みやすくなってしまうことが原因です。
なぜ治りにくいのか?
女子顔面黒皮症のような真皮層の色素沈着は治りにくい傾向があります。一般的な表皮層のシミは、ターンオーバーによって排出されますが、真皮層はターンオーバーが行われていないため、真皮に入り込んだメラニンは改善まで長い時間(年単位)がかかります。
真皮に入り込んだメラニン色素は、メラノファージという細胞が食べることで処理されますが、メラノファージは元々数が少ないことや、活動性が低いことなどから、真皮メラニン処理スピードが遅く、改善しにくいのです。
そして、メラノファージはメラニンを取り込んだままその場で留まってしまうことがあるため、真皮性の色素沈着は長く残ってしまうことがあるのです。
女子顔面黒皮症は、治りにくいため特別な治療を受けなければ薄くならないこともありますし、悪化している場合は治療を受けてもあまりキレイにならないこともあります。
女子顔面黒皮症の予防法と治療法
まずは化粧品を中止してみる
女子顔面黒皮症は、皮膚の炎症を起こす原因物質を排除することが先決です。
安全性が高いとされる一般的な化粧水、乳液、クリーム、石鹸、洗顔料、ファンデーション、日焼け止めなどに接触皮膚炎の原因物質が含まれていることがありますので、異常が現れたらできるだけ早く原因を特定するのが理想です。
何が原因なのか判明できない場合は、使用していた化粧品をすべて中止したり、洗顔料の使用をやめて水洗いのみにしてみたりしましょう。
それまで問題なく使い続けていた化粧品でも、体調不良や肌老化が進行して皮膚が薄くなることによって炎症が起こってしまうこともあります。化粧品がもったいないからといって使い続けると、色素沈着を悪化させてしまいます。
原因となる代表的な化粧品の成分
接触皮膚炎の原因となる化粧品成分には、界面活性剤(乳化剤)、防腐剤であるパラベン、香料、着色料、エタノール、植物油などが代表的です。
界面活性剤は洗顔料や乳液、クリームなどにも含まれますが、乳化作用によって肌のバリア機能を乱しますので、肌が弱い人は刺激性の接触皮膚炎を起こしやすいです。
また、肌が弱い人ではグリセリンなどのよく多用される保湿成分にも刺激性を感じて刺激性接触皮膚炎を起こすこともあります。特定が難しい場合はワセリンだけのスキンケアだけにしてみるのが理想です。
昔は、着色料のタール系色素(特に赤色219号)や香料、ジャスミン油などが、接触皮膚炎の原因となることがありましたが、現在ではそれらは化粧品に使用されることはなくなりました。
また、不純物の多い油脂なども接触皮膚炎の原因になることがありました。ただし、現在では精製技術が進化したことで油の不純物の問題はほとんど問題にならないレベルに改善しています。
肌が乾燥する人はワセリン
化粧品を中止して肌が乾燥する場合は、ワセリンだけのスキンケアにしてみましょう。ワセリンは肌に浸透せずに肌表面をコーティングするだけなので、接触皮膚炎を起こすリスクが極めて低いです。
ワセリンには、プロペトやサンホワイトなどの種類があります。その中でもサンホワイトは特に不純物が低く、安全性が高いとされます。
新しい化粧品を使う場合はパッチテスト
化粧品でかぶれやすい人は、新しい化粧品を使う場合は必ずパッチテストを行いましょう。あまり目立たない部分に少しだけ塗って1日ほど様子をみてみましょう。赤くなっていたらアウトです。
皮膚炎にはステロイド外用薬
接触皮膚炎の症状が残っている場合は、皮膚科を受診し、医師に診てもらってステロイド外用薬で炎症をしずめましょう。それと共に白色ワセリンで肌を保護して、正常なバリア機能を作ってあげることが重要です。
消炎薬も効く
ステロイドの副作用が心配な人は、非ステロイド性消炎薬が理想です。皮膚科ではスタデルム軟膏やベシカムクリームなどが処方されます。
皮膚のかゆみには抗アレルギー剤
原因が特定できずに皮膚の炎症や痒みがつづく場合は、抗アレルギー剤が効果的です。抗アレルギー薬はヒスタミンを抑制して炎症やかゆみを抑える働きがあります。
また、抗アレルギー薬は、炎症を悪化させる生理活性物質を抑制し、炎症そのものを予防する効果があります。皮膚科ではフェキソフェナジン(製品名:アレグラ)などが良く処方されます。痒みによって皮膚をかいたりする行為もなくすことができるはずです。
紫外線で悪化する
紫外線に当たることで黒皮症のような皮膚の黒ずみが悪化します。特に、顔に皮膚炎がある時に紫外線に当たると、さらに色素沈着がひどくなります。顔に炎症がある時は必ず紫外線を避けて下さい。
刺激を与えない
皮膚炎が起こっている肌を掻いたりすると症状が悪化して、さらに顔面黒皮症がひどくなるので刺激を与えないようにして下さい。
ピーリングをしない
ピーリングを頻繁に続けていると、肌が薄くなって刺激に弱くなります。年齢を重ねると肌が薄くなって刺激に弱くなりますが、それと同じ状態がピーリングで発生するのです。
肌が極端に弱くなると、普通の石鹸や化粧水などに対しても接触皮膚炎を起こすようになることがあり、女子顔面黒皮症の原因となってしまう可能性があります。そのため、ピーリングのやりすぎには注意して下さい。
女子顔面黒皮症にはレーザートーニング
レーザートーニングとは、皮膚に対してムラがなく均等的に照射されるQスイッチヤグレーザー(波長1064nm)を使用し、肌に対するダメージを抑えながら、じょじょにメラニン色素を落としていく治療です。
女子顔面黒皮症は、炎症によってメラニン色素が真皮に入り込んだ色素沈着であるため、一般的なシミ消しレーザーなどではかえって色素沈着が悪化してしまうことが多い難点があります。
ところが、レーザートーニングというレーザー治療においてはリール黒皮症のような炎症後色素沈着においても悪化リスクを抑えながらメラニンを薄く改善できる効果が期待できます。
優しいQスイッチ・ヤグレーザーを使用する
レーザートーニングはQスイッチ・ヤグレーザーを使用しますが、その「Qスイッチ」とは、ナノ秒レベルという極端に短い時間で照射できるレーザーをいいます。
照射時間が一瞬であるため、皮膚に対して負担が劇的に抑制されています。
また、ヤグレーザーは1064nm(ナノメートル)で、波長が長いため皮膚の深い層にまでレーザーエネルギーが届きやすい特徴があります。女子顔面黒皮症の特徴である真皮層のメラニン沈着にまで届いて、メラニンを分解します。
照射タイプが肌に優しい
レーザートーニングは、従来のレーザーとは違う照射タイプをもちます。
従来のレーザー照射は、「ガウシアン型」といわれる照射で、レーザーエネルギーの中央部分のダメージが強くなる欠点がありました。
それによって炎症後色素沈着が悪化する問題がありました。
一方、レーザートーニングは「トップハット型」といわれる照射で、皮膚に対して均一的な照射を実現し、局所的にダメージが強くなる問題を解決しています。
これにより、レーザーによるダメージによって炎症性色素沈着が悪化するリスクを大きく軽減しています。
優しい治療がレーザートーニング
レーザートーニングは、優しい光線であるQスイッチ・ヤグレーザーを皮膚から若干離して低出力で照射していくことで、メラニンの沈着などの色素性病変をじょじょに改善していくことができます。
レーザートーニングは、一度の治療では高い効果は得られませんが、治療を重ねていくことで色素沈着の改善が期待できます。
女子顔面黒皮症の場合、レーザートーニングによって完全な解消は難しいかもしれませんが、繰り返すことで薄くなっていくはずです。治療回数は、まずは5回くらい行って効果を確認して下さい。
レーザートーニングは、主に肝斑(かんぱん)といわれる女性特有のデリケートなシミ治療に用いられるレーザー治療ですが、安全性が高くてダウンタイムがなく、幅広い症状に用いることができることから導入する皮膚科・クリニックも増えています。
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