根性焼き・タバコによる火傷(やけど)の治療方法とは?

根性焼きによる傷痕の画像 若気の至りでやってしまった根性焼き。

タバコの火を肌に押し付けて自らの根性を示すことから名付けられたものですが、大人になってから社会の目を気にするようになり、どうにかして消したいという人は少なくありません。

そのようなタバコによるヤケドは、完全にキレイにはなりませんが、いくつかの方法で改善できる、またはわからなくすることができます。

根性焼きの傷跡について

まず、根性焼きというものがどれだけ皮膚へのダメージが強いものなのか。

タバコの温度は、通常は600度、吸い込んでいる時は瞬間的に800度に及ぶといいます。

そんな高熱のものを皮膚に押し付ければヤケドとして跡が残ってしまうのは当然です。

ケロイドの問題

根性焼きによる傷痕の画像 高いレベルのヤケドを負うと、その傷を修復するために急激にコラーゲンの増生が起こります。

それによって盛り上がった傷痕、一般にいわれるケロイドを起こしてしまうようになります。盛り上がった傷跡はコラーゲンの塊なのです。

なお、画像のように白っぽく残ったものは厳密にはケロイドではなく成熟瘢痕といわれます。

いずれにしても盛り上がった傷跡ができてしまうと、レーザー治療などで治すことはかなり難しくなります。治る可能性もあるというお医者さんもいたりしますが、やはり難しいです。

盛り上がった傷跡の種類いろいろ

なお、一般的にケロイドといわれる盛り上がった傷跡は、厳密には3種類あります。

  • 真性ケロイド・・・コラーゲンと毛細血管の異常増殖により、赤みがあって盛り上がりのある傷跡。進行性があり、しだいに大きくなる。自然には治りにくい。
  • 肥厚性瘢痕・・・盛り上がった傷跡で、赤みが見られる。(毛細血管がある)。進行性がない。赤みがあるケロイドはほとんどがこのタイプ。5年、10年、15年~という期間をかけて自然に小さくなっていくことが多い。コラーゲンの塊に毛細血管が通っているので改善が見られます。
  • 成熟瘢痕・・・白く盛り上がった傷跡、毛細血管は消失しているため赤みはない。単なるコラーゲンなど線維組織が増加したまま残ったもの。基本的には自然には治らない。

色素沈着の問題

成熟瘢痕の画像 通常、肌がダメージを受ければメラニン色素が大量に作られます。

そして、作られたメラニンはターンオーバーによって角質と一緒に剥がれていきます。ただし、これは紫外線や軽いニキビなどのダメージが軽度の場合です。

ところが、根性焼きのような皮膚損傷が強すぎる場合は、表皮で作られたメラニンが皮膚の深い部分に残りやすくなります。それによって跡が黒ずんでしまうことがあります。

なお、白っぽくなった傷痕(成熟瘢痕)の周りに黒ずみができてしまうことがありますが、それが色素沈着です。(写真参考)

赤みの問題

根性焼きによって皮膚が極端な損傷を起こしてしまうと、回復の過程で毛細血管が極端に増加します。それによってひどい赤みが残ってしまうことも。

赤みどころか、紫がかった色になってしまうこともよくあります。赤みだけをとりたいならば、赤い色素に反応するレーザーを使います。

腕の傷跡は治りにくい

根性焼きは腕にあることが多いですが、腕の皮膚は再生力が弱いので、いろいろな治療を試しても傷跡が治りにくい傾向があります。

根性焼きのヤケド跡が軽い場合の治療

根性焼きでも傷跡が軽い場合、少しならば手術をしなくても改善する可能性があります。

盛り上がった成熟瘢痕を治すというのはかなり難しいのですが、「手術はしたくないけど、ほんの少しでもキレイに」という人向けです。

その治療は、フラクショナルレーザー、ダーマペン(ダーマスタンプ)などの「皮膚の入れ替え」を促す治療によるものです。

フラクショナルレーザー

フラクショナルレーザーとは、レーザー照射によって皮膚に無数の微細なダメージを与え、そのダメージを治すために放出される成長因子(細胞増殖因子:グロースファクター)によって新しい皮膚との入れ替えを促す治療です。

皮膚の自己再生能力を利用する治療といえますが、その治療によって瘢痕をじょじょに解消し、傷跡を治せる可能性があります。

ニキビ跡の凹みに対してよく使用される治療なのですが、理論上は傷跡にも適応します。けれど1度で劇的な改善は難しく、何度も何度も治療を繰り返す必要があります。

そのフラクショナルレーザーにはいくつかの種類があります。

  • 皮膚に熱ダメージを与えるタイプ・・・機種でいえばフラクセル、アファーム、スターラックス1540などがあり、単に熱ダメージを与えるだけなので効果も限定的です。
  • 皮膚を削ってダメージを与えるタイプ・・・フラクショナルCO2レーザー、フラクショナルエルビウムヤグレーザーなどがあります。皮膚を微細に削ってしまうのでそれだけダメージも強いですが、効果も高いです。

ダーマペン

ダーマペンの画像 ダーマペンとは、マイクロスパイクといわれる極細の針が付いた電動スタンプ。

それを使って皮膚に無数の穴をあけ、その穴を治すために放出される成長因子によって新しい皮膚との入れ替えを促す治療です。

原理的にはフラクショナルレーザーと同じように肌の自己再生能力を利用した治療といえます。新しい皮膚との入れ替えを促して、火傷のような傷跡(瘢痕組織)の修復を促進させます。

また、治療中に成長因子を含んだ溶液を塗布することで、肌の生まれ変わりをさらに促すことができます。

スタンプタイプの他にローラータイプのダーマローラーという方法もあります。

根性焼きのヤケド跡がひどい場合の治療

基本的に根性焼きをやりきってしまえば、傷跡が真皮層やその下の皮下層(脂肪がある層)のような皮膚の深いところまでダメージが及んでいて、深いレベルで瘢痕化します。それに比例して傷跡もひどくなります。

そのような場合は、フラクショナルレーザーや、ダーマペンなどの皮膚を入れ替える治療においても劇的な効果を得るのは難しいです。やるだけムダなような気がします。

手術の画像 「どうしても根性焼きを治したい」、「根性焼きだとわからないような状態にしたい」

そのような場合は手術によって縫い合わせる方法が適しています。線上の傷跡は残りますが、見た目として根性焼きとわからなくなります。

社会的な偏見を避けるために、違う傷跡ができても根性焼きの跡を治したいという人はこの方法しかありません。

ネットで経験豊富なお医者さんを探して行ってもらいましょう。治療後の経過や傷跡がどうなるのかをしっかりと説明してくれる医師が理想です。

ヘパリン類似物質の塗り薬

根性焼きを治すために皮膚を切れば、また違う傷跡ができますがその傷跡は、肥厚性瘢痕といわれるものです。赤みがあり進行性はありません。

この肥厚性瘢痕をいかにキレイに治すかが、手術跡の残さないポイントになります。

ヒルドイドローションとソフト軟膏の画像 そして、その肥厚性瘢痕に対しては、ヘパリン類似物質を塗ることで傷が治りやすくなります。病院で処方される塗り薬ではヒルドイドクリームなどが有名です。

市販薬ではアットノンがあります。

そして、以下は肥厚性瘢痕やケロイドに対するヘパリン類似物質(ヒルドイド)の効果を表したもの。出典マルホ。

ヒルドイドクリームの効果

ヒルドイド販売元のマルホの報告では、著しい改善が18.2%、かなり改善が57.3%、やや改善が13.7%という結果がでています。全体的いえば90%近くが改善に向かうようです。

筆者も怪我によって肥厚性瘢痕ができた経験がありますが、ヒルドイドの使用で劇的に改善した経験があります。

トラニラストは肥厚性瘢痕に効く

トラニラスト(リザベン)の画像 手術による傷を悪化させない、または治りやすくするためには、いくつかの方法がありますが、その一つにトラニラスト(先発品:リザベン)という抗アレルギー薬があります。

トラニラストはコラーゲンを異常に作り出すサイトカインの働きを抑え、手術によってできる盛り上がった傷跡を予防します。

ケロイド、肥厚性瘢痕を予防する唯一の飲み薬です。

皮膚移植という方法もある

根性焼きが多すぎる、または範囲が広すぎて、手術でも困難なケースがあります。そういった場合は皮膚移植という方法もあります。

根性焼きの部分の皮膚を取り除き、脚などから皮膚を採取して移植する方法です。

問題点は、つないだ部分に瘢痕が残ること。採取した皮膚にも傷が残ること。お金や時間がかかること。などがあげられます。

さらに傷を負わせる方法もある

「根性焼きを治す」というよりも、「根性焼きだとわからないようにしたい」。

そんな場合は皮膚をさらに傷つけて傷跡だらけにし、根性焼きを目立たなくさせるという方法もあるようです。ただ、全体的に傷跡がひどくなってしまう欠点があります。