非常にまれなケースですが、化粧品に含まれる着色料によってアレルギーを起こすことがあります。
現在では化粧品成分の精製技術や成分解析が進んだことで危険性の高い着色料が使用されなくなり、肌トラブルを起こすリスクが劇的に少なくなっていますが、それでも人によっては肌に合わないこともあるようです。
着色料の種類
化粧品に使用される着色料は大きく分類して、「タール色素」、「天然色素」、「無機顔料」に分けられます。
タール色素
タール色素とは合成着色料の一つで、医薬品、化粧品、食品、衣服、食品添加物など幅広い分野に用いられます。
色素が豊富で変性がなく、さらに製造コストが安いというメリットがあり、メイクアップ系の化粧品であればタール色素がないと成り立ちません。
このタール色素は、種類によっては皮膚に刺激性やアレルギーのリスクが指摘されていることから、安全なものだけが使用を認められています。
ただし、安全とされる着色料でも肌に合わない人もいます。
天然色素
天然色素とは、主に植物界に存在する自然な色素成分をいいます。具体的には、クチナシ、カカオ、ベータカロチン、リコピン、紅麹、ブドウ、シソなどから抽出された色素が有名です。
合成着色料と比較して製造コストが高いことや色素が変性することがあるなどが難点ですが、天然色素には安全だというイメージがあります。
けれども、この天然成分でも人によっては肌に合わないこともあります。
無機顔料
無機顔料は、無機物質からなる顔料です。具体的には酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、カオリンなどがあります。
それらは白色をしてますので、化粧水や美容液を白い色へともたらすことができます。
そして、アレルギーについてですが、顔料は粒子が大きいので皮膚や粘膜への浸透性がなく、アレルギーに対する安全性が極めて高いといえます。
なお、それらは顔料としてファンデーションに使用されたり、紫外線散乱剤(UVブロック剤)としても使用されます。
日焼け止めをたくさん塗ると白っぽくなってしまうのも酸化亜鉛や酸化チタン、タルクなどによるものです。
着色料によるアレルギーについて
合成着色料(タール色素)によって色素沈着をまねく?
昔の話しですが、かつてはアレルギー性皮膚炎の危険性が高い着色料が普通に化粧品に配合されている時代がありました。
例えば、合成着色料であるタール色素の赤色219号という着色料を配合した化粧品でかぶれ、改善しにくい色素沈着を起こした事例が多く報告されています。(かぶれとはアレルギー性接触皮膚炎のことです)。
かぶれを起こすような化粧品を使い続けると、以下の写真ようにシミや赤みがまばらに点在するような肌になります。
化粧品でかぶれて色素沈着を引き起こす症状を、かつては女子顔面黒皮症(じょしがんめこくひしょう)と呼ばれていました。
現在では男性でも化粧品を使うようになったことから「女子だけ」という概念をなくし、色素沈着型化粧品皮膚炎(しきそちんちゃくがたけしょうひんひふえん)といわれるようになりました。
アレルギー症状が軽度すぎて問題に気づかない
化粧品でかぶれて色素沈着を起こした場合、多くのケースはそのかぶれが軽度すぎて肌の病変に気づくことが遅れ、色素沈着が悪化してしまったというケースがほとんどです。
また、「有名な会社の化粧品に危険な物質が配合されるわけがない」、「自分がアレルギーを起こすようなことはない」、「化粧品がもったいない」などの理由によりヒリヒリ感や赤みなどが現れても使い続けてしまうことも問題です。
現在ではアレルギーリスクのある合成着色料は使用されない
現在では皮膚障害を引き起こす可能性が高い合成着色料(タール色素)は避けられて、安全性が高いものだけが使用されるようになっています。
ただし、安全性が高いというのは確率論であり、人によってはアレルギーを起こすケースも考えられます。
そのため、肌が弱い人やアレルギー体質の人、化粧品でかぶれた経験がある人などは、着色料のような本来は不必要な成分が配合された化粧品はできるだけ避けるべきだと思います。
天然の着色料だから安全ということはない
合成着色料に不安をもつ人が多い影響なのか、クチナシ色素などの天然の着色料を使用している化粧品をちらほら見かけますが、天然成分だからといって絶対に安全とは限りません。
天然物から抽出した色素を精製して安定化させたものが化粧品に配合されたりするのですが、それでも肌に合わない人もいると思います。
着色料だけではなく、植物成分に絶対の安心感をもつ人が多いのですが、それは「天然由来成分だから安全」とうたっている化粧品メーカーの宣伝の問題もあると思います。
もし化粧品でかぶれたら?
もし、化粧品によって「肌がかゆい」「赤みが強くなった」などの症状がでたら、すぐに洗顔をして洗い流しましょう。
そして、その化粧品の使用を中止して下さい。
また、その化粧品かぶれの症状が強いものならば皮膚科に行って医師に診てもらったほうが安心です。
皮膚科医は、かぶれに対してはロコイド軟膏などのステロイド外用薬を処方したりします。
また、ステロイドの副作用を考慮して、スタデルム軟膏やベシカム軟膏などの非ステロイド性の消炎薬が処方されることもあります。
なお、ステロイドを使ったほうがアレルギー皮膚炎をより早く治すことができます。
かぶれ続けた色素沈着は治りにくい
アレルギーが続いたことによるまばらなシミは薄くなっていくまでかなり期間を要します。きちんと日焼けを避けても3~5年以上かかるかもしれません。
また、自然に消えないこともあると思います。理由はメラニンが皮膚の深い部分に入り込んでしまうためです。
かぶれによって炎症が続くと、表皮と真皮の間に存在する基底膜という部分が損傷してしまいますが、それによって表皮で作られたメラニンが真皮に落ち込んでしまいます。
表皮のメラニンはターンオーバーによって古い角質と一緒に剥がれていきますが、真皮は表皮のようなターンオーバーがないので早い改善が難しいのです。
なお、真皮に入り込んだメラニンはマクロファージが処理しますが、元々それは活動性が低く、さらに数も少ないので、上手にメラニンが無くなっていかない難点があります。
色素沈着の治療は美白剤では難しい
アレルギー性接触皮膚炎が続いたことによる色素沈着は、一般的な美白剤では改善が難しいと思います。
最も美白効果が高いのはハイドロキノンですが、それでも限定的であり、さらにハイドロキノンは成分的にかぶれやすいので、化粧品かぶれの経験がある人においては使いづらいです。
レーザートーニングが有効
真皮に入り込んだ色素沈着は、レーザートーニングというレーザー治療が効果があります。この方法が一番効率がいいと思います。
この治療はダメージの少ないレーザー光線を何度も照射することで、少しずつメラニンを減らしていく治療法。1度で劇的な効果はないですがダメージも少ないのが特長です。
炎症後色素沈着による真皮性メラニンは強いレーザーダメージを与えると逆に悪化してしまうことがあるので、優しい治療が適しているのです。
優しい治療なので施術回数は少なくとも5回以上は必要。
なお、このレーザー治療は肝斑(かんぱん)という女性特有のシミ治療によく使用されることで有名で、デリケートな色素性病変に対して使い勝手がいいことから導入する皮膚科も増えています。
そもそも、なぜ化粧品に着色料が配合される?
化粧品の着色料は、「効能」だけを考えれば配合する意味はありません。それでも着色料を配合する理由は主に化粧品のイメージを引き立たせるためです。
例えば、ホワイトニング系の美白化粧品であれば白色のカラーにしてみたり、ビタミンCのイメージをもたらすために薄い黄色などの色に着色されたりします。
また、他の成分の色素が化粧品のイメージと合わないとして、それをカバーするために積極的に着色料が使用されることもあります。
なお、香料においても同様のことが行われます。例えば他の成分の臭いを軽減するために香料を配合したりするのです。
最近の化粧品は着色料を含まないものが多くなった
化粧品に詳しい人ならわかると思いますが、近年の化粧品は「肌に負担をかけない」ことが重要視されていて、一昔前と違って着色料を配合しないコスメが多くなりました。
また、香料なども同様です。「無香料、無着色料」として販売している化粧品も一般的となりました。
けれども、何十年単位で販売されているロングセラー化粧品などは、昔ながらの使用感を保つために現在でも香料や着色料が配合されていたりします。
また、意外と高級化粧品や有名メーカーの化粧品などが香料や着色料を配合していたりします。
「ロングセラー商品だから」、「高級化粧品だから」、「有名な化粧品会社だから」などの理由で化粧品を選んでも、人によっては合う合わないがあるものです。
無添加化粧品には着色料が含まれない
「無添加」と表記されている化粧品には基本的に着色料は含まれていません。
肌が弱い人でどういった化粧品を使っていいかわからない人は、「無添加」と表記されている化粧品を使用するのも一つの方法です。
なお、無添加の保湿化粧品は着色料だけではなく、香料、鉱物油、エタノール、合成乳化剤、パラベンなどにおいても無添加であることが多いです。なので肌トラブルを起こす余計なリスクが低いといえます。
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