ニキビによる好中球の働き「炎症や腫れ」は白血球が原因だった

頬ニキビ ニキビが炎症を起こして赤く腫れ、膿が発生して最終的に自然に治っていくのは全て免疫反応によってもたらされるものです。

その免疫反応によってニキビが治っていく過程には好中球という白血球の一種が重要な働きをしています。今回はニキビの形成と白血球による免疫反応についてです。

ニキビ発生の仕組みと白血球が活発になるメカニズム

皮膚の構造 ニキビは毛穴が塞がってしまうことで発生します。毛穴が塞がる主な要因の一つがターンオーバーの乱れ(角化異常)です。ターンオーバーが乱れることで角質細胞が過剰に生成され、皮膚が厚くなることで毛穴がつまるようになります。

表皮は表面から「角質層(かくしつそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「基底層(きていそう)」の4層で構成されています。

基底層で生まれた表皮細胞は有棘層、顆粒層と押し上げられ、最後は角質となり、最終的には古い角質(垢)となってはがれていきます。

これをターンオーバーといいますが、ニキビはこのターンオーバーが必要以上に進んでしまい、表皮が厚くなって毛穴が塞がれることで発生します。

毛穴が塞がる原因は皮脂の増加?

ニキビ発生メカニズム ニキビは皮脂が増加するほど発生しやすくなります。そして、皮脂が増えるほど肌への刺激性が強いものに変化していきます。

皮膚にはアクネ菌、ブドウ球菌、真菌(カビ)など様々な微生物が常在菌として生息していますが、皮脂が増加するとアクネ菌などの微生物は細菌性リパーゼという脂肪分解酵素を分泌して皮脂中の中性脂肪(トリグリセリド)を分解し、遊離脂肪酸を多く産生します。

遊離脂肪酸は、皮膚を健康的な弱酸性に導く働きがある一方で、皮膚に刺激を与えてターンオーバー異常(角化異常)を引き起こし、毛穴つまりを発生させる原因と考えられています。

毛穴が塞がれるとアクネ菌が増加し免疫反応を起こす

初期ニキビの画像 毛穴が塞がれて出口がなくなると、アクネ菌という常在細菌が増加します。

このアクネ菌は空気(酸素)がない環境を好む性質があり、毛穴が塞がって酸素が供給されない環境になると毛穴内部で急激に増加してしまうのです。

塞がった毛穴内部でアクネ菌が増殖すると、皮膚細胞はそれを異常と判断し、免疫反応によってインターロイキン1αなどの炎症性サイトカインを放出します。この炎症性サイトカインの働きにより、しだいに肌は炎症を起こして赤く腫れるようになっていきます。

炎症によって様々な生理活性物質が発生する

毛細血管拡張と血管透過性亢進の画像 アクネ菌の増加により炎症反応が起きますが、この時にヒスタミン、プロスタグランジン、ブラジキニン、サブスタンスPなどの様々な生理活性物質・情報伝達物質が発生します。

それらの物質は毛細血管拡張作用や血管透過性亢進作用があり、白血球(免疫細胞)が血管外に移動しやすい状態へと導きます。

毛細血管拡張によって血量が増加し、さらに血管透過性亢進によって血管内皮細胞の接合部を緩ませることで血管内の白血球や血漿成分が炎症部位に滲出(しんしゅつ)しやすい状態へと導きます。

この働きによってニキビが赤く腫れるようになり、本格的な炎症反応に入ります。

ちなみに、ヒスタミンはニキビのかゆみを引き起こす生理活性物質です。また、プロスタグランジンはメラニン色素の生成を促し、を悪化させる情報伝達物質です。

ブラジキニンはニキビの痛みに関与します。サブスタンスPは、ヒスタミンや炎症性サイトカインの放出を促して炎症やかゆみを悪化させます。

好中球(白血球)が活性化してアクネ菌を処理する

好中球がアクネ菌を飲み込む画像 血管透過性の亢進によって、血管内の白血球が血管外へと滲出し、炎症部位に到達します。そこで主に活躍するのが好中球(こうちゅうきゅう)という白血球です。

ニキビの炎症部位に到達した好中球は、増加したアクネ菌に接触してアクネ菌を飲み込みます。(貪食)。そして、過酸化水素などの活性酸素を放出してアクネ菌を攻撃、殺菌します。

さらに、過酸化水素は不安定な性質であるため、さらに強力な「ヒドロキシラジカル」という活性酸素を発生させるようになります。

それらの活性酸素がアクネ菌を攻撃・殺菌することでアクネ菌は死滅し、最終的にニキビの炎症は治まります。

活性酸素がニキビ跡の凹みの原因に

白血球が発生させる活性酸素によって増加した細菌をやっつけることができるのですが、一方で、その時に発生するヒドロキシラジカルなどの活性酸素は皮膚に対して強烈なダメージを与えます。

そのダメージは皮膚においてコラーゲンなどがある層を破壊してしまうこともあります。炎症が強いほどダメージが強くなります。

そして、コラーゲンが萎縮して硬くなってその部分だけが凹んだ状態になってしまいます。それがにきび跡のクレーターです。

アクネ菌と戦った好中球は膿となる

ニキビ潰して膿と芯を出す アクネ菌と戦った好中球は最終的に膿(うみ)となります。膿はニキビを潰すと出てくる黄色い液体で、膿の正体は主にアクネ菌と戦った好中球の死骸によるものです。

他には破壊された組織、体液なども膿に含まれます。膿は体外に排出されるか、マクロファージによって処理されます。

そして、しだいに皮膚の硬さがとれて元の状態に戻っていきます。この免疫反応があるからこそニキビが自然に治っていくことができるのです。