ニキビや毛嚢炎(毛包炎)が皮膚の深い層で炎症を起こすと、強く腫れて早期に治りにくくなります。その場合は炎症跡もひどくなり、赤みが長く残ったり、黒ずんだシミが色濃く残ってしまうことがあります。
そのような炎症性の強いニキビや毛嚢炎などの治療に、皮膚科では塗り薬と一緒にシプロフロキサシン錠(先発品:シプロキサン錠)という抗菌薬が処方されることがあります。
今回は、シプロフロキサシン錠のニキビ改善効果や副作用、耐性菌を予防する飲み方などを解説していきます。
シプロフロキサシン錠とは?
シプロフロキサシン錠(先発品はシプロキサン錠)は、ニューキノロン系の抗菌薬です。細菌のDNAの複製を妨げることで細胞分裂を阻止し、それによって抗菌効果を示します。
シプロフロキサシン錠は、細菌に対して殺菌的に作用し、幅広い細菌に効果があります。また、病巣への移行が良い特長もあります。主に、細菌が原因となる皮膚感染症、呼吸器系感染症、耳鼻科系感染症、泌尿器系感染症などに広く使用されます。
そのシプロフロキサシンは、選択肢としてはあまり多くはありませんが、化膿したニキビや毛嚢炎などにも使用されることがあります。
シプロフロキサシン錠の効果
シプロフロキサシン錠のような抗菌薬は、ニキビの原因菌となるアクネ菌という細菌の細胞分裂を阻害し、死滅させることでニキビの炎症を治します。
また、化膿した毛嚢炎やおできなどは、黄色ブドウ球菌という病原性が高い細菌が原因となりますが、シプロフロキサシン錠は、黄色ブドウ球菌に対しても良い抗菌力を示し、細菌を死滅させて腫れを抑えます。
ニキビは放っておいても自然に治っていくものですが、素早く炎症を治すことでニキビ跡の赤みや色素沈着の悪化も予防できます。当然、クレーターやケロイドなどの発現リスクも抑ることができるというわけです。
有効なのは赤ニキビがたくさん発生した場合
抗菌薬や抗生物質は下痢や腹痛などの副作用があることや、耐性菌を発生させてしまう可能性があるため、軽いニキビの状態には使用されません。
一般にシプロフロキサシンのような抗菌薬は、たくさん発生した赤ニキビや化膿した毛嚢炎、おできなどの症状が強い症状に使用されます。炎症がわずかな白ニキビなどの軽いニキビには塗り薬やビタミン剤だけで十分です。
外用薬と一緒に処方される
基本的にニキビ治療は塗り薬を中心とした治療が行われます。シプロフロキサシン錠のような抗菌薬だけでニキビ治療を行うようなことは通常はありません。(肌が弱くて塗り薬が難しい場合は抗菌薬の飲み薬だけの治療もあるかもしれません)。
炎症ニキビに対して皮膚科で処方されるお薬は、デュアック配合ゲル、ベピオゲル、ダラシンTゲル、アクアチム、ゼビアックスローションなどがあります。
飲み方
シプロフロキサシン錠の飲み方は、1回100~200mgを1日2~3回飲んで下さい。症状によって量は調整されます。
飲んだり飲まなかったりすると、ニキビが治りにくくなったり、再発したりすることがありますので、医師や薬剤師の指示に従ってきちんと服用して下さい。
服用中の薬は医師に伝える
治療中の病気などでお薬を服用している場合は、必ず医者や薬剤師に伝えて下さい。シプロフロキサシンと、他の薬の組み合わせによっては効果が増減することがあります。
購入方法
シプロフロキサシン錠を購入するには、医師の処方箋が必要です。病院を受診して医師の処方箋を出してもらい、薬局で買って下さい。保険適応です。
先発品はバイエル薬品のシプロキサン錠ですが、たいていは価格が安いシプロフロキサシン錠というジェネリック医薬品が処方されると思います。また、ニキビ治療に対してこのお薬が処方されることは少ないです。
一般に、皮膚科ではミノマイシン(ミノサイクリン)や、ルリッド錠(ロキシスロマイシン)などの抗生物質が良く使用されます。シプロフロキサシン錠は、それらで効果が現れない場合に使用されたりします。
ニキビ治療における抗生物質の使用期間
シプロフロキサシン錠は、ニキビ治療の場合、まずは1~2週間くらいから始め、効果を確認しながら継続します。
シプロフロキサシン錠は、飲み始めてから3~5日くらい経過すれば、赤ニキビの炎症が治まってくるのが実感できるはずです。
重度にきび治療の場合は治療期間が長くなることがありますが、1~2か月くらいが一つの目安です。
副作用や薬剤耐性の問題
シプロフロキサシン主な副作用は、他の抗生物質と同じように消化器系への刺激による吐き気や下痢、腹痛などがあります。細菌を減少させることで腸内細菌バランスが乱れて、下痢を起こすようになります。比較的多い副作用です。
他の副作用には光線過敏症や薬剤耐性菌の問題があります。
光線過敏症
シプロフロキサシンのようなキノロン系抗菌薬の特徴として、光線過敏症という副作用が現れやすくなる問題があります。
光線過敏症は、光に過剰反応する症状で、日光を浴びたりすると皮膚が炎症を起こして、ひどい場合は水ぶくれになったりすることがあります。
そのため、肌が弱い人や、日ごろから紫外線を浴びる機会が多い人にはこのお薬は適していません。また、服用中は紫外線を浴びないように工夫して下さい。
耐性菌を生じる問題
シプロフロキサシン錠は使い続けると薬が効かなくなってくることがあります。その場合、細菌が耐性をもっている可能性があります。
耐性菌が発生して抗菌薬が効かなくなると、違う系統の抗菌薬に変更したりしますが、そういったことを繰り返すことで多くの系統の抗生物質が効かなくなる可能性があります。
実際に、抗生物質に対する耐性菌が増えていて、一部の感染症を治すことが難しくなっている現状があります。そのため、シプロフロキサシンのような抗菌薬はニキビ治療においても軽々しく使用しないようになっています。
処方された分はしっかりと服用する
抗菌薬による耐性菌は、中途半端な服用になるほど発現しやすくなります。炎症が続いているのに、シプロフロキサシンを途中で中断してしまうと、細菌が薬剤耐性を獲得してしまうリスクが高くなります。
そのため、処方された分は用法用量を守って服用し、きちんと炎症を治してからシプロフロキサシンの服用を終了する必要があります。また、長期使用にならないことも重要です。
シプロフロキサシンで悪化するケースがある
たいていはシプロフロキサシン錠を服用することでニキビは治っていきます。細菌が減少するため、すでに腫れているニキビも小さくなっていきますし、そもそも初期段階であるコメドが発生しにくくなります。
ところが、シプロフロキサシンのような抗菌薬を服用してもニキビが改善しないこともあります。
その場合は、お薬が身体に合っていないことが予想できます。抗菌薬を服用しても悪くなる時は、違う系統の抗生物質に変更したりします。(なお、抗菌薬を服用してニキビが減少に向かわないケースはまれです)。
また、抗菌薬を中止した後のリバウンドでニキビが多発してしまうケースもあります。リバウンドしやすい人は、元々ニキビ体質で、特に皮脂量が多い脂性肌タイプの人に多いようです。
漢方薬が劇的に効くこともある
抗菌薬が効かない人や、抗菌薬の使用を止めると炎症ニキビが繰り返しリバウンドするような人は漢方薬を使ってみるのも一つの方法です。
漢方薬は人によっては抗菌薬と同じくらいの即効性が得られることもあります。そして、漢方薬には抗菌薬・抗生物質のような副作用の問題が少なく、さらに薬剤耐性菌の問題がないため、長く使えるメリットがあります。(持続効果)
ニキビ治療に効く漢方薬は、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)などがよく処方されます。漢方薬も病院におけるニキビ治療の場合は保険適応となります。
また、漢方薬は処方箋なしで一般的なドラッグストアや通販などでも購入できます。エネルギー生成が高くて皮脂が多い人は清上防風湯、体力が中くらいの人は十味敗毒湯が理想です。
シプロフロキサシンのような抗菌薬の長期使用が心配な場合は、漢方薬を一度試してみてはいかがでしょうか。
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