ニキビを治すために皮膚科を受診するとエリスロマイシンという飲み薬が出されることがあります。
エリスロマイシンはマクロライド系抗生物質です。幅広い細菌に対して高い抗菌力を示すことから、「細菌」が原因となる様々な感染症に使用されます。
皮膚科医の判断の元で重度化したニキビ治療に対して内服薬(飲み薬)として使用されることがあります。
ただし、エリスロマイシンには耐性菌が多いことや下痢・腹痛を起こしやすい欠点があります。
現在ではこのお薬ではなく、違う薬が使用されることが多くなりましたが、このお薬の特徴や問題などを解説していきます。
エリスロマイシン錠の効果
- 細菌のたんぱく質合成を阻害し、細菌増殖を抑制します。静菌的に作用します。
- 幅広い細菌に効果を発揮する。
- ニキビ菌の原因菌であるアクネ菌やブドウ球菌に対して抗菌力があるため、炎症が進行した赤にきびに効果を発揮します。
にきび発生と抗生物質がニキビ炎症を抑制する仕組み
にきびは、ターンオーバーの亢進によって毛穴が塞がり、その内部で空気のない環境を好むアクネ菌などの「細菌」が増加することで発生します。アクネ菌が増加すると、それを皮膚は異物だと判断して免疫反応が働き、本格的に炎症や腫れが悪化します。
免疫により、白血球の一つである好中球は活性酸素を発生させてアクネ菌を攻撃します。そして、最終的にアクネ菌が死滅することでニキビの腫れは治まっていきます。
一方、好中球が発生させる活性酸素によって、皮膚は大きくダメージを受け、ニキビ跡の赤み、色素沈着、クレーター状の陥没などが発生するようになります。
抗生物質エリスロマイシンは、ニキビ炎症の原因となるアクネ菌や黄色ブドウ球菌などの増加を素早く抑制・死滅させる働きがあります。
病原菌が減少することで免疫反応が抑えられてニキビの発生や悪化を予防します。ニキビ跡の赤み、色素沈着、クレーターなどの発生も限られるものになります。
抗生物質は重度ニキビに有効
エリスロマイシンのような抗生物質は、細菌感染症に対する効果が高い反面、体内の正常な細菌バランスを乱すことや耐性菌を生じる問題があります。
そのため、一般に重症化したニキビ治療にのみ使用されます。赤にきび、化膿ニキビ、難治性ニキビ(繰り返し発生するにきび)に使用されるのが一般的です。軽いニキビには使用されません。
ニキビ跡にも効果がある?
エリスロマイシンは炎症が進行したニキビには効果がありますが、炎症が治った後のニキビ跡には効果がありません。赤みや色素沈着は時間の経過とともに治っていきますが、それでも改善が難しい場合はレーザー治療などが有効です。
エリスロマイシンの飲み方や期間について
エリスロマイシンは、1日800~1200mgを4~6回に分けて服用します。年齢や症状によって増減します。 一定ペースで飲み続ける必要があります。ある程度治ったからといって中途半端に中断したりしないようにしましょう。
ニキビ治療における抗生物質の使用期間
抗生物質は、ニキビ治療においてはまず1~2週間分ほどが処方されます。その後、薬の効果や症状にあわせて治療を継続します。ニキビ治療における抗生物質の使用期間はできるだけ短期間が理想ですが、1~3ヶ月程度になることがあります。
ニキビ治療の場合、通常は1~2週間ほど経過すれば効果は現れてきますが、抗生物質を続けても効果が現れない場合は治療薬を変更するのが理想です。
購入するには?
エリスロマイシンは医師の診断のもとで処方されます。保険適応です。ただし、ニキビ治療に対してエリスロマイシンを積極的に処方する医師は少ないと思います。
同じ系統の薬でエリスロマイシンよりも良いお薬があるためです。同じマクロライド系抗生物質では、ルリッド錠(ロキシスロマイシン)やクラリス(クラリスロマイシン)などがあります。
エリスロマイシンによる耐性菌の発現リスク
エリスロマイシンは抗生物質のひとつですが、その抗生物質は長期使用によって耐性菌を発現させてしまう可能性があります。耐性菌とは、薬を投与しても生き残れるように耐性を獲得した細菌をいいます。
ニキビ治療において抗生物質を使い続けると、細菌が耐性をもってしだいに効きにくくなってくることがあります。また、耐性菌が生じるとニキビ以外の感染症が発生した場合、それを治すことが難しくなるケースがあります。
あまり不安をあおるのも良くありませんが、現在では耐性菌の発生を考慮して抗生物質の使用は極力避けられる傾向があります。ニキビ治療においても同様です。また、使用する場合でもできるだけ短期間の使用に限定されるようになっています。
エリスロマイシンは耐性菌が多い
エリスロマイシンに対する耐性菌が多いといわれています。エリスロマイシンは最初に実用化されたマクロライド系抗生物質で古くから使用されてきた歴史があります。
特に日本ではエリスロマイシンが呼吸器などの慢性疾患によく利用されてきた歴史があるため、エリスロマイシンに対する耐性菌は世界各国と比較しても多いといわれています。
ある調査によると、中耳炎の原因となる肺炎球菌という細菌のマクロライド系抗生物質に対する耐性菌の割合は、日本では80%を超えているという報告があります。(欧米では50パーセント以下)。
耐性菌を予防するポイント
- 抗生物質による耐性菌は長期使用になるほど発現しやすくなります。できる限り短期間の使用が理想です。
- 治療が中途半端になると耐性菌が生じやすくなります。ニキビ治療にエリスロマイシンのような抗生物質を使用する場合、用法用量を守って、しっかりと炎症を治してから中断するのが理想です。
エリスロマイシンの副作用
エリスロマイシンによる副作用は、主に下痢や腹痛、吐き気などの消化器系の障害です。
エリスロマイシンが胃で分解される時に生じる物質(ミケタル)が消化管の蠕動運動を活発にするためとされます。ですので、腸が過敏な人は適していません。
また、抗生物質は腸内細菌のバランスも乱すため、それが下痢の原因になることがあります。下痢の副作用はエリスロマイシンだけではなく、他の抗生剤でもよく起こることです。
他にも、まれなケースで蕁麻疹、アナフィラキシーなどのアレルギーや、長期使用によって肝障害、皮膚障害を引き起こすことがあります。
病気やアレルギー、服用中のお薬などがある場合は事前に医師に伝えましょう。
最近ではほとんど処方されることがなくなった
エリスロマイシンは他の抗生物質よりも下痢の副作用が出やすい短所があります。現在では副作用が出にくい良い抗生物質がいろいろあるので、エリスロマイシンが処方されることは少なくなりました。ニキビ治療目的でも同様です。
皮膚科でニキビ向けに処方される抗生物質といえば、ミノサイクリン(先発品はミノマイシン)や、ロキシスロマイシン(先発品はルリッド錠)、ファロム錠(ファロペネム)などがよく使用されるようになっています。
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