脱毛行為を行ったエステサロンの逮捕事例いろいろ

脚のレーザー脱毛の画像 エステサロンの脱毛、ムダ毛処理といえば、主にシェービング、ワックス脱毛、テープ脱毛、除毛クリームなどを使用したものが一般的。

一部のエステサロンでは光脱毛を行っているところもありますね。ところが、基本的にエステサロンの脱毛というと永久的な脱毛効果 は期待できません。

永久的な減毛効果、脱毛効果を得るには、レーザーや針脱毛などで毛根に強いダメージを与える必要がありますが、そういった施術を行うのは「医師免許を持つ人に限る」と法律で厳格に規定されているためです。

ところが、そういった法律を無視して摘発され、責任者が逮捕されるというエステサロンがちらほら報告されています。

今回は、脱毛行為における医師法の内容と、その法律を守らないエステサロンの逮捕事例をいろいろまとめてみました。

脱毛を行う場合は医師免許が必要となった

2001年に医師法において、「毛根を破壊する脱毛行為は医師免許が必要」という法律が定められました。

第1 脱毛行為等に対する医師法の適用
以下に示す行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反すること。
(1) 用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為

上記のような法律が定められた背景には以下のような事柄があげられます。

  • エステサロンなどにおいてレーザー脱毛や光脱毛を行い、ヤケドや炎症性色素沈着などの皮膚障害を負う人がたびたび報告されたこと。
  • 日本人の肌質に合ったレーザー脱毛器や光治療器が普及し、価格が安くなり、導入する美容クリニックやエステサロンが増えていた。

そして、2001年にそういった法律が定められたにも関わらず、たびたび摘発→責任者逮捕というエステサロンが存在します。

エステサロン摘発の事例いろいろ

メディカルエステティックサロンKOICHI

2010年11月、青森県にあった美容エステ店のメディカルエステティックサロン KOICHI」の経営者ほか従業員が逮捕された事件。

この事件は医師免許がないのにレーザー脱毛行為を行ったとして「医師法違反の疑い」で逮捕されたものです。エステサロンが医療行為を行って逮捕されるよくあるパターンです。

大阪のエステサロン

2012年5月、大阪にあるエステサロンが医療機関で行われるべきレベルのレーザー脱毛を行い、しかもエステティシャンに施術させていたとして医師法違反として社長や元従業員など3名が逮捕されました。

エステサロン「ドクタータカハシ」

2012年5月、ドクタータカハシというエステサロンが、医師免許のない従業員に医療行為レベルの脱毛をさせたという疑いで運営会社代表ら8人が医師法違反の疑いで逮捕された事件がありました。

このドクタータカハシというエステサロンはとても有名で、普通の医療機関よりも金額的にかなり安いのが特徴でした。

そして、施術後も患部をしっかり冷やしてくれたり、消炎剤を出してくれたり、いろいろなアフターケアもしっかりしていた脱毛サロンだったようです。

かつて2chなどの掲示板でも評判が良かったみたいです。筆者も何度か良い評判を目にしたことがあります。

コスパが良かったことやアフターケアもしっかりしていたことから、わりと信頼が高かったサロンだったようですが、それでもヤケドや色素沈着を起こした女性もちらほらいたことや、やはり有名になりすぎたことで多くの苦情が寄せられ、そして逮捕につながったようです。

東京のエステティックサロン「カリス」

2015年11月、東京都町田市のエステティックサロン「カリス」の経営者とその次女で従業員が、医師免許をもたないのに20代女性3人に、医療用のレーザー脱毛を行った容疑で逮捕されるという事件。

その女性たちがヤケドを負ったことで警察の捜査へとつながった模様。

それほど大きなエステサロンではないみたいですが、やはりヤケドや毛嚢炎などの皮膚障害を負ってしまうと問題となりやすいようです。

医療機関では術後に、スタデルムクリームとかベシカム軟膏などの消炎剤を処方したり、毛嚢炎(細菌感染症)を起こせば抗生物質を出すこともできるのですが、エステではそういったお薬を処方できないのが問題へとつながりやすい要因となります。

美容クリニックが摘発される事例

一昔でいえばわりと少なくないケースなのですが、「○○美容皮膚科」、「○○美容クリニック」というような医療機関においても医師法違反の疑いで逮捕されるケースがあります。

2015年5月に愛知県岡崎市の「マリークリニック」、2015年9月に大阪市の美容外科「T-クリニック」などの医療機関でも摘発された事件があります。

それらのケースは、医師が直接行うべきレーザー脱毛を看護師に行わせていたことで問題となった事件です。

基本的に、そのクリニックのお医者さんは医師法違反で有罪となり、一時的に医師免許停止処分となります。

毛根を破壊するレベルの脱毛行為は医師法において医師免許をもつものが行われければいけませんが、実は、看護師が医師の代わりにレーザー脱毛を行うというのは、ひと昔前は珍しくなかったように思います。

現在では厳格に管理されていて、看護師がレーザー脱毛を行うなんてことはないと思います。昔と違って病院で不適切な対応をすればSNSなどのネット上ですぐに拡散されてしまいますので、それが抑止力となっているかもしれませんね。

エステサロンの脱毛行為について

エステサロンでもレーザー脱毛や光脱毛できる?

ワキのレーザー脱毛 一部のエステサロンでは、光脱毛器を使った施術が行われています。

光脱毛とは、IPL(インテンス・パルス・ライト)という黒い色素(毛に含まれるメラニン)にも反応する幅広い波長を照射するものです。

医療機関においてもIPLを使った脱毛治療を行っているところもありますが、エステサロンで行われる光脱毛においてもそれと同様の作用原理に基づいたものです。

医療機関で行われるような方法がエステサロンで行われていると「医師法違反なのでは?」と思いがちですが、基本的にIPLという特殊な光を照射することだけでは医師法違反となりません。

問題となるのは、毛根が破壊されるレベルの高い出力で行われているかどうかです。

毛根が破壊されないレベルであればエステサロンでも行うことができるのです。

脱毛における医療行為と非医療行為のボーダーラインは?

毛根が破壊されるような脱毛行為を行うには医師免許が必要となり、一方、毛根が破壊されないレベルであればエステサロンでも行うことができます。

その「毛根が破壊されるレベルの施術」のボーダーラインはどのようなレベルをいうのでしょうか。

実は、そのボーダーラインはあいまいなところがあります。それは以下の理由があります。

  • レーザー機器や光治療器などの脱毛器の種類や、その出力を調整することによって「毛根を破壊する効果」に大きく違いがあること。
  • 肌質、体質、脱毛する部位、脱毛する毛の太さなどによって脱毛効果は大きく異なること。(例えば、腕の細い毛に対して通常のレーザー照射しても、毛根にはほとんど影響なかったりします)。

以上の理由から、どこからが「毛根を破壊する行為」なのかがあいまいなところがあります。

そのため、逮捕されたエステサロン経営者は、いいわけとして「レーザー脱毛(または光脱毛)を行ったが毛根を破壊するようなレベルではやっていない」と供述するケースも珍しくないです。

ただ、脱毛機器を使って患者側がヤケドを負ったり、毛嚢炎を起こしたりして、その被害者が複数報告されたら警察が動きだすようです。

なお、一般に毛根を破壊するには毛根部に70度以上の熱を与える必要があるとされますが、そのレベルからヤケドなどのリスクがあるので、過去の裁判事例においても被害者にヤケドや色素沈着、炎症などの被害を負わせたかどうかが問題の焦点となるようです。

エステ協会による方針

ポイント エステ協会では脱毛を行う場合、医師法違反とならないように「毛根、毛乳頭を破壊をしない」「毛が再生するようなレベルの一時的な減毛・脱毛にとどめる」といった決まりがあります。

大手のエステサロンでは低出力照射を徹底しているため、警察に摘発されるようなことはありません。

ただし、まれに規律を守らないエステサロンが存在します。そのようなエステサロンが強いパワーで脱毛行為を行い、医師法違反として逮捕されるケースがたびたび発生しニュースとなるわけです。

なお、「永久脱毛できる」と宣伝しているような小さな脱毛サロンは避けたほうが無難です。

エステサロンの宣伝

エステサロンのWebサイトなどでは、「永久脱毛」というような表現で宣伝してはいけません。それは言い換えれば医療行為に当たるためです。

そのため、エステサロンのホームページでは「ムダ毛が細くなる(薄くなる)」、「再び生えてくるのが遅くなる」といったように永久的ではない効能を表記しているところが多いのですが、やはり表現があいまいなところがあります。

エステサロンの中には、カウンセリングの段階で、医療機関で行われるような永久脱毛・減毛との違いを説明するところもあるようですが、そういったエステサロンは信頼できるといえます。

ところが、カウンセリングでは「永久脱毛はできない」と説明しながらも、一方であたかも永久脱毛を実現できるかのような紛らわしい宣伝をしていたりするエステサロンも存在します。

いずれにしても、トラブルを起こさないためには消費者が正しい知識をもつ必要がありそうです。