風邪薬のイブプロフェンが化膿ニキビや痛いニキビに効く。持続時間や副作用について

イブ錠(イブプロフェン) 風邪をひいて熱が出た時、多くの人は市販の風邪薬を飲んで治すと思います。近年、市販の風邪薬によく配合されているのが「イブプロフェン」という成分です。

イブプロフェンは、優れた消炎作用や解熱作用があり、その成分が風邪の諸症状に素早く効果を発揮することから、風邪薬の主成分として配合されることが多くなっています。

そして、そのイブプロフェンの消炎作用により、強く炎症したニキビや毛嚢炎、おできなどの化膿した皮膚炎を、より早く治るように導く効果も期待できます。

風邪の症状がなくてもニキビなどの化膿性疾患に使用することが可能で、皮膚科においても炎症が強いニキビや外傷後の消炎目的で、イブプロフェンが処方されることがあります。

今回の記事は、風邪薬の主成分のイブプロフェンの悪化ニキビへの効果と使い方、副作用などを詳しく解説していきます。

イブプロフェンの効果

イブプロフェンは、「非ステロイド抗炎症薬(NSAID)」に分類される成分です。プロスタグランジン(PG)という物質の生合成を抑えることで解熱、消炎、鎮痛効果をもたらします。

炎症反応のイラスト プロスタグランジンとは、炎症発生や悪化の過程に関与する生理活性物質の一つで、たくさん発生すると炎症反応をより大きなものにしてしまう性質があります。

イブプロフェンはそのプロスタグランジンを合成する「シクロオキシゲナーゼ(COX)」という酵素を阻害することで、体内の炎症や腫れを軽減する働きがあり、それによって炎症による発熱やせき、のどの痛みなどの風邪の諸症状を治します。

そして、その抗炎症作用により、悪化したニキビや毛嚢炎、おでき、脂漏性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患の治りを早める効果も期待できるのです。

イブプロフェンがニキビ炎症を治すメカニズム

ニキビはふさがった毛穴でアクネ菌が増加し、その異常事態に対して免疫反応を起こすことで赤く腫れた状態です。その免疫反応に大きく関与するのがプロスタグランジン(PG)です。

血管透過性亢進の画像 プロスタグランジンは、毛細血管拡張作用や血管透過性亢進などの働きがあり、白血球が血管を通過してターゲット(ニキビ)に到達しやすい環境へと導きます。

そして、ニキビに到達した白血球がアクネ菌を食べて活性酸素を発生させることでアクネ菌が死滅し、最終的にニキビは自然に治っていくのです。

この免疫反応があるからこそ人間の身体は恒常性を維持できるのですが、この時にプロスタグランジンが働き過ぎることで炎症を悪化させたり、また、ヒスタミンやブラジキニンなどの他の生理活性物質の発生を促すことでニキビにかゆみや痛みが現われたリするようになります。

イブプロフェンはプロスタグランジン(PG)を抑制することで、免疫反応が大きくなることによるニキビ悪化や痛み、かゆみなどを予防改善する効果があります。

化膿した皮膚病が発生した場合に効果的

Uゾーンの赤ニキビの画像 イブプロフェンをニキビに使う場合は、炎症が悪化して治りにくくなった赤ニキビがたくさん発生した場合や、化膿して痛みがあるニキビなどに効果的です。

また、顔のニキビだけではなく多発した背中ニキビや胸のにきびなどにも使うことができます。治りを促すために限定的に使って下さい。

一方、白ニキビなどの軽い症状には使うべきではないです。軽いニキビは市販の治療薬を塗るだけで十分です。

他には、ムダ毛処理後に多発した化膿性の毛嚢炎や、おでき、治りにくい脂漏性皮膚炎などを集中的に治療する場合にも効果的に働きます。

また、イブプロフェンはアトピー性皮膚炎の治りを良くするためにステロイド外用薬と一緒に集中的に使用することもできます。一気に炎症を抑えて症状をコントロールして下さい。

ニキビ跡を予防する

ニキビ跡の種類の写真 プロスタグランジンは、メラノサイト(メラニンを作る細胞)に働きかけてメラニン色素をたくさん作り出し、ニキビ跡の炎症後色素沈着(モヤモヤしたシミ)を悪化させる原因にもなります。

また、プロスタグランジンは炎症反応を強くしてしまうことで、ニキビ跡のクレーターを引き起こす原因にもなります。

イブプロフェンはプロスタグランジンを抑えることで、ニキビ跡の赤みや色素沈着、ニキビ跡のクレーターやケロイドなどを予防する効果があります。

ニキビ跡を治す効果はない

イブプロフェンにはニキビ跡の「予防」には効果的ですが、一方ですでに発生している色素沈着やクレーターを治す効果はありません。

イブプロフェンが効くいろいろな症状

イブプロフェンは、鎮痛作用があることから頭痛や生理痛などにもよく効きます。また、消炎効果や鎮痛作用により、筋肉痛や肩こりなどがひどい場合にも使うことができます。

ロキソニンとの違い

ロキソニンSの画像 イブプロフェンと似たような効能がある成分の一つに「ロキソニン」というお薬があります。ロキソニンはロキソプロフェンを主成分としたお薬で、イブプロフェンと同じようにプロスタグランジンを抑制することで鎮痛作用や消炎作用をもたらします。

その2つの違いは、ロキソニン(ロキソプロフェン)の場合はより痛みを抑える作用が強く、その目的で効果を発揮します。頭痛や生理痛、のどの痛み、筋肉痛などにすぐ効いてくれます。

ニキビが痛い場合にも効果的です。一方、イブプロフェンの場合は、消炎作用や解熱効果を目的として使用されることが多いです。

飲み方について

薬を飲む画像 イブプロフェンは、ニキビ治療に対して使う場合、1回あたり150~200mgを限度に、1日3回を目安に食後に服用します。1日の摂取量は600mgまでです。その用量は風邪を治す場合と同じ用量です。

この成分は胃を荒らしやすく、食前や食間に摂取すると胃痛や胃炎を起こすことがあるため、必ず食後に摂取しましょう。胃への副作用が心配な場合は量を減らして服用することもできます。例えば、1回の服用を50mg~75mgにしてみるなどです。

効果の持続期間

イブプロフェンの持続効果は4~8時間ほどだとされます。そのため、複数回に分けて摂取する必要があるのです。

殺菌作用がないので他の治療薬と組み合わせる

イブプロフェンは消炎作用はありますが、殺菌作用はありません。ニキビの原因となるアクネ菌や黄色ブドウ球菌などを抑制させる働きはありません。

そのため、イブプロフェンはニキビ治療において主役とはなりません。補助的な効果を目的に使って下さい。

そして、炎症したニキビ治療に対し、皮膚科では塗り薬を中心に、悪化している場合は抗生物質の内服薬を使った治療が一般に行われます。

皮膚科で処方される主なニキビ治療薬の画像 皮膚科で処方される外用のニキビ治療薬は、ディフェリンゲル、ベピオゲル、デュアック配合ゲル、エピデュオゲル、ゼビアックスローションなどが処方されます。

抗生物質の内服薬には、ルリッド錠やミノマイシンなどが処方されることが多いです。他にも、医師によっては漢方薬がすすめられることがあるかもしれません。

注意が必要なケース

イブプロフェンには飲み合わせが悪い薬があります。抗凝血薬のワルファリン、血圧の薬や利尿薬、免疫抑制薬、血糖降下薬など多くの薬と相互作用を起こす可能性があります

ニキビ治療ではクラビット(レボフロキサシン)などのキノロン系抗菌薬の内服治療がすすめられることがありますが、キノロン系抗菌薬とイブプロフェンの組み合わせは避けたほうがいいとされます。

なお、ニキビ治療にはミノマイシン(ミノサイクリン)や、ルリッド(ロキシスロマイシン)、ファロム(ファロペネム)などの抗生物質の内服薬が処方されることが多いのですが、それらとイブプロフェンを同時に服用することは可能です。

処方してもらうには?

薬剤師が薬を処方する画像 イブプロフェンはニキビ治療においては、悪化している場合や痛みがある場合に対して消炎、鎮痛剤として処方されます。症状が軽い場合や痛みなどがない場合は処方されないことがあります。

処方薬には、イブプロフェン錠やブルフェン錠などがあります。錠剤タイプの他に、顆粒タイプの2種類があります。薬価は5円~9円くらいと非常に安いです。

市販品も多い

そして、イブプロフェンは市販医薬品に配合することが許されているので、病院に行かなくても市販品を購入すれば同様の効果を得られるはずです。

イブ錠(イブプロフェン) イブプロフェンを配合した市販品には、イブシリーズ(イブ、イブA錠など)や、エスタック・イブなどがあります。その中でもイブは無水カフェインなどのニキビ治療にとっては余計な成分が含まれておらず、イブプロフェンだけが配合されているためおすすめです。
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ニキビ治療におけるイブプロフェンの使用期間

ニキビケアにおけるイブプロフェンの服用期間は、1~2週間くらいまでが目安です。炎症や腫れが治るスピードを早める目的で短期間の使用に留めて下さい。抗生物質のように耐性菌を生じる問題はありませんが長期使用は理想的ではありません。

イブプロフェンの副作用

腹痛の写真 イブプロフェンには消炎作用がありますが非ステロイド抗炎症薬(NSAID)なので、ステロイド薬のような副作用がありません。また、抗生物質のような耐性菌の問題もありません。

市販薬によく配合されているだけあって、副作用を過剰に心配する必要なく使えます。ただし、欠点は胃や腸を荒らしやすいところです。

イブプロフェンの副作用で多いのが胃痛や胃炎、腸炎、下痢などの胃腸障害です。腸粘膜を保護する働きを抑える作用があるため胃を荒らしてしまうことがあり、胃が弱くてピロリ菌所持者では胃潰瘍の原因になることもあります。

また、腸粘膜にも悪影響を及ぼし、腹痛や下痢を起こすこともよくあります。継続するほどそれらの副作用は現われやすいです。

服用後に胃痛や下痢などがひどい場合は一度中止したり、量を減らしたりしてみたりしましょう。抗生物質のように難しいお薬ではないので、ある程度は服用量をコントロールすることができます。

そして、イブプロフェンによってまれに湿疹(薬疹)、かゆみなどの副作用が現われることもあります。また、頭痛やめまい、ぜんそくなどをまねくこともまれにあります。

ニキビが悪化することがある?

女性の肌の悩み 人によってはイブプロフェンを飲み始めてからニキビが悪化したように感じることがあるかもしれません。ですが、イブプロフェンにはニキビの原因になるようなことはありません。ニキビ悪化は違う要因が影響している可能性が高いです。

ニキビはストレスや物理的な刺激、睡眠不足、食生活の乱れなどで悪化しやすいため、お薬の前にまず生活習慣から見直すことも重要です。