洗顔料や化粧水は肌と同じ弱酸性が理想的?

通常、肌は弱酸性に保たれています。肌が弱酸性に維持されることで雑菌の繁殖を抑えることができます。

その理由から、近年は「弱酸性」と表記された洗顔料や化粧水、ファンデーションなどの化粧品を多く見かけるようになりましたが、実際に化粧品は弱酸性のものを選んだほうが良いのでしょうか。

今回は化粧品と肌のpH値についてです。

皮膚表面が弱酸性の理由は?

通常、肌の表面はpHが4.5~6.0の弱酸性に保たれています。(中性はpH7.0)。その状態が維持されることで雑菌の増殖が抑制され、健康な肌を保持することができます。

肌が弱酸性に維持されるのは、主に皮脂に含まれる脂肪酸によるものです。

皮膚には主にブドウ球菌、真菌(カビ)、アクネ菌(ニキビの原因菌)などの様々な常在菌が存在しているといわれますが、いくつかの常在菌が細菌性リパーゼという脂肪分解酵素を作り、皮脂中のトリグリセリドを分解して脂肪酸(遊離脂肪酸)を産生することで肌は弱酸性に保たれています。

ニキビの原因となるアクネ菌も遊離脂肪酸を作り出す常在細菌の一つと考えられています。

肌がもつアルカリ中和能とは?

女性のスキンケア 一般に石鹸や洗顔フォームはアルカリ性でできています。それはアルカリ性の方が洗浄力が高くて汚れが落ちやすいためです。洗顔料がアルカリ性である場合は、洗顔後の肌は一時的にアルカリ性に傾いた状態になります。

弱酸性の肌が一時的にアルカリ性に傾いてもしばらくすると再び弱酸性に戻っていきます。それは、皮脂や常在菌の働きによって肌を弱酸性に戻そうとする働きが備わっているためです。

これを「アルカリ中和能」といます。例えば、洗顔によって皮脂膜や常在菌が失われて、一時的に中性~弱アルカリ性に傾いても洗顔後から15分~1時間ほどで肌は健康的な弱酸性に戻ります。

肌荒れした肌やアトピー肌では弱酸性に戻す力が弱い

皮膚炎を起こしている肌や、皮脂が少ない敏感肌の場合では、肌が正常な弱酸性に戻る機能が弱くなっていることがあります。洗顔後に肌が弱酸性に戻るまで2時間以上かかることもあります。

大量に汗をかくことでもアルカリ性に傾く?

大量に汗をかいたりすることで一時的に肌がアルカリ性に傾くことがあります。特に、普段汗をかかない人ほどその傾向があります。

また、緊張したときにかく汗もアルカリ性に傾きやすいとされます。肌のpHが一時的にアルカリ性に傾いても時間の経過とともに弱酸性に戻っていきます。

化粧品は弱酸性が理想的?

通常、洗顔料は汚れが落ちやすくするためにアルカリ性(一般的な固形石けんもアルカリ性です)で作られていますが、健康な肌が弱酸性であることから、洗顔料も弱酸性が良いとして「弱酸性の洗顔料」が販売されていたりします。ただし、弱酸性の洗顔料には長所と短所があります。

弱酸性の洗顔料は肌に優しい?

確かに弱酸性の洗顔料は肌に対して刺激性がなく、優しく洗い上げることができます。乾燥肌や肌が弱い人では刺激・ヒリヒリ感を感じることなく洗うことができます。洗った後もツッパリ感が気になりません。

弱酸性の洗顔料では汚れが落ちにくい?

弱酸性の洗顔料は肌への負担が少ないのですが、皮脂汚れや洗顔料成分がきちんと落ちにくいデメリットがあります。

肌表面の酸性の汚れを落とすには、弱アルカリ性の洗顔料を使ったほうが皮脂汚れを落とす能力は高いのです。

弱酸性の洗顔料は合成界面活性剤が含まれる?

石けんや洗顔料などの洗浄作用は界面活性剤といわれる水と油を乳化させる成分の働きによるもので、それによって皮脂汚れを落としやすくすることができます。

ただし、「弱酸性の洗顔料」には基本的に「合成界面活性剤」が用いられています。合成界面活性剤は皮膚への浸透性が高く、しっかりすすいでも肌に残ってしまい、それによって肌のバリア機能が失われて慢性的な肌荒れを起こしてしまう可能性があります。

化粧水や美溶液などは弱酸性が理想的?

コスメ 化粧水、クリーム、美容液などの化粧品は基本的に弱酸性で作られています。これは肌が弱酸性でできていることから、酸性のクエン酸などを微量配合し、pHを弱酸性に調整して作られているためです。

洗顔などによって一時的に肌が中性~弱アルカリ性に傾いても、化粧水で保湿することで肌が弱酸性に戻されます。洗顔後の不安定な肌を素早く整えるためには化粧水の使用が理想的です。

化粧水などに「弱酸性」と表記していないものでも、基本的に化粧水、クリーム、美容液などは弱酸性で作られています。

【まとめ】化粧品は弱酸性の方がいい?

  • 洗顔料は弱酸性のものである必要はありません。その理由は、例えば石けん(石けんはアルカリ性)などで洗って一時的に肌がアルカリ性に傾いても、元の弱酸性に戻す能力(アルカリ中和能)があるためです。
  • 皮脂分泌が多くてにきびができやすい人は、弱酸性の洗顔料などでは汚れが十分に落ちないかもしれません。
  • 化粧水や乳液、美容液などは基本的に弱酸性で作られていますので、洗顔後に化粧水などで保湿することで肌はすぐに弱酸性に戻ります。
  • 保湿系の化粧品に対して弱酸性かどうかというのはあまり気にする必要はありません。