ニキビはステロイド薬で治る?効果の反面、悪化することも多い理由

悪化して長期化したニキビの画像 ニキビを見つけたら、すぐにお薬を塗ってニキビを治したいと思うものです。そんなとき、ステロイド外用薬はニキビに効果があるのでしょうか。

実は、ニキビにステロイド薬を使用すると、かえってニキビが悪化することがあり、治りが長引いてニキビ跡がひどくなってしまうことがあります。

ただし、ステロイドを上手に使用すればニキビの治りを良くするケースがあることも事実です。

今回はステロイド外用薬によるニキビの効果や、悪化する原因、ステロイドが有効なニキビなどを詳しく解説していきます。

ステロイド薬とは?

ステロイド外用薬ロコイド(ヒドロコルチゾン) ステロイド外用薬とは、主に抗炎症作用や免疫抑制作用などを有する塗り薬です。人間の体内にも分泌されている副腎皮質ホルモンをもとに作られています。

ステロイド外用薬は、優れた消炎効果があることから皮膚の炎症に対して使用され、主にアトピー性皮膚炎や急性湿疹、慢性湿疹などに使用されることが多いです。

そして、そのステロイド薬には優れた消炎作用があるため、ニキビの炎症にも効果があるように思えます。

ところが、ニキビに対してステロイド外用薬を使用すると、ニキビが治りにくくなって悪化してしまうことがあります。それはステロイドには免疫を抑制する作用があるためです。

ステロイドはニキビの治りを悪くする

ステロイドは免疫を抑制することで炎症反応を抑える効果がありますが、一方で免疫を抑えることで通常の自然治癒力が失われて、炎症が長引いてしまうことがあります。

好中球がアクネ菌を食べるイラスト ニキビが自然に治っていく仕組みは、好中球という白血球の一つが増加したアクネ菌を食べて活性酸素を発生させ、アクネ菌を死滅(殺菌)させるという免疫システムが備わっていることによるものです。

ステロイド薬はそういった白血球の働きを含む免疫反応を抑制してしまうため、アクネ菌を殺菌する免疫システムも抑えられ、ニキビの治りが悪くなる可能性があるのです。

ニキビが悪化することで化膿したり、ニキビが大きく拡大しておでき(せつ)のような状態になることもあります。

そして、ニキビ跡の赤みや色素沈着がひどく残るようになり、肌質や皮膚の厚さによってはニキビ跡がクレーター状に陥没してしまうことも少なくありません。

ニキビ治療にステロイドは使用されない

ステロイドによってニキビが治りやすくなるどころか悪化する可能性があるため、ニキビ治療には一般的にステロイドを使用しないのが基本です。

皮膚科などにおけるニキビ治療においても、一般的にステロイドが使用されることはありません。

皮膚科医はニキビ治療に対しては、ベピオゲルやデュアック配合ゲル、ディフェリンゲル、エピデュオゲルなどのステロイドを含まないニキビ専用の塗り薬を処方するのが一般的です。

ただし、皮膚科医の判断やニキビの症状によっては一般的なニキビ治療薬と共にステロイドが使用されることもまれにあります。ステロイドを上手に組み合わせて使用すれば、他にはない劇的な効果を得られるためです。

ステロイド薬の副作用でニキビが多発することも

ステロイドニキビの画像 ステロイド外用薬は、ニキビを治すどころかニキビの原因になることがあります。ステロイド外用薬を長く使い続けることでステロイドニキビというブツブツした副作用が現れる問題があるのです。

また、毛嚢炎(もうのうえん)やマラセチア毛包炎などもステロイド治療で発生しやすい副作用です。

ステロイドは免疫を抑制する働きがあるため、使い続けることで免疫力が低下して、アクネ菌(ニキビ菌)や黄色ブドウ球菌、真菌(カビ)などが増加し、その結果ニキビや毛嚢炎などを起こすことがあるのです。

ステロイドの副作用で発生したニキビや毛包炎は、大きく炎症を起こすことは少ないですが、まれに悪化してニキビ跡がひどくなってしまうことがあります。

また、ステロイド外用薬は使い続けるほど毛細血管拡張や皮膚が薄くなるといった様々な副作用が現れるため、長期使用には注意しなければいけません。

副作用は強度によって違う

ステロイド外用薬の強度ランク ステロイド薬には様々な副作用が現れる問題がありますが、副作用が発現するリスクはステロイドの強度によって違いがあります。

ステロイドは作用の強さによって1群の「最も強い(ストロンゲスト)」から5群の「弱い(ウィーク)」までの5段階に分けられています。当然、作用が強いほど副作用が強く現れます。

目安として、5段階中3番目の「やや強い(ストロング)」のステロイドの場合は、顔に使用する場合は2週間くらいの使用にとどめたほうが良いとされます。

それ以上使い続ければ、皮膚の免疫力が下がってニキビや皮膚感染症を起こしやすくなったりする可能性があるということです。

ステロイド薬の製品のまとめ

ステロイド薬は主に皮膚科で処方されることが多いですが、処方薬には主に以下のような商品があります。

1群:最強レベル(ストロンゲスト)

ダイアコート軟膏、デルモベート軟膏、ソルベガ軟膏、ジフラール軟膏、グリジール軟膏

2群:非常に強い(ベリーストロング)

マイザー軟膏、メサデルム軟膏、アンテベート軟膏、フルメタ軟膏、ネリゾナ軟膏、トプシム、パンデル軟膏

3群:やや強い(ストロング)

ベトネベート軟膏、リンデロンV軟膏、プロパデルム軟膏、エクラー軟膏、ボアラ軟膏、フルコート軟膏、ザルックス軟膏、リドメックスコーワ軟膏、スピラゾン軟膏

4群:普通(ミディアム)

ロコイド軟膏、キンダベート軟膏、レダコート軟膏、テストーゲン軟膏、アルメタ軟膏、

5群:弱い(ウィーク)

エキザルベ軟膏、プレドニゾロン軟膏

上記の製品は軟膏タイプの他に、○○○クリームや○○○ローションなどのタイプがある処方薬もあります。

ステロイドが効果的なケース

一般的に、ニキビに対してステロイド薬が使用されることはありませんが、上手に使用すればニキビを早く治すこともできます。主に以下のようなニキビの場合にステロイドが有効なケースがあります。

皮脂が少ない人で赤ニキビの初期段階

赤ニキビ 赤ニキビの初期段階に他のニキビ治療薬とともにステロイド外用薬を限定的に使うことで良い効果を得られることがあります。

これは皮脂量が少なくてニキビがあまりできない人に効果的です。ニキビができやすい人はステロイドを使うことを習慣化してはいけません。

そして、ステロイドを使用する場合は、必ず殺菌成分や抗生物質などが含まれる他のニキビ治療薬と同時に使って下さい。ステロイドを単体で使用すると悪化してしまう可能性があります。

使う順番は、洗顔→化粧水→殺菌薬→ステロイド薬の順番です。

ステロイドは腫れが大きくなる段階から治っていくまでずっと使い続けると治りが悪くなることがあるため、炎症ニキビの初期段階にのみ使用して下さい。1~3回くらいまでの使用が理想です。

かゆいニキビに効果的なケースもある

アレルギーとかゆいニキビ アレルギー体質などの人は、ニキビにかゆみが現れることがあります。かゆいニキビは長期化しやすく、ニキビ跡も悪化しやすい傾向があります。

そのかゆいニキビは、ヒスタミンという物質が過剰に放出されることが原因ですが、ステロイド薬によってヒスタミンの放出を抑制し、炎症ニキビの悪化を予防することができます。

ただし、かゆいニキビの場合もステロイドと同時に他のニキビ治療薬(抗生物質や殺菌薬など)を使用して下さい。ステロイドを単体で使用するのは止めて下さい。

ケロイド予防

ニキビ跡の肥厚性瘢痕の画像 体質的にケロイドができやすい人で、ニキビ跡がケロイド(多くのケースでは肥厚性瘢痕)になった場合はステロイド外用薬が効果的なケースがあります。

ニキビによるケロイドは、皮膚の損傷が修復されていく時に過剰にコラーゲンを作り出してしまうことで発生します。

つまり、ケロイドが発生するのは免疫の過剰反応の一つだといえますが、ステロイドによってより早い段階で炎症や免疫反応を抑制することでケロイドの形成や進行を抑えることができると考えられます。

ただし、ニキビ体質の人がステロイドを使い続けるのは難しいこともあります。お医者さんのもとで治療を行って下さい。

ステロイドはニキビ跡に効果がある?

ニキビ跡の赤みとシミ(色素沈着) ステロイドはニキビ跡の赤みや炎症後色素沈着には効果は期待できません。また、ニキビ跡のクレーターにも効果はありません。

ステロイド薬には血管収縮作用があるため、塗ると皮膚の赤みがとれて肌がキレイになったように見えますが、それは一時的な現象であり、ニキビ跡が改善しているわけではありません。

反対にステロイドを長期に使い続けると、副作用で毛細血管が拡張して赤みがひどくなる可能性もあります。

ステロイドを配合した市販ニキビ治療薬

テラ・コートリル軟膏

テラ・コートリル軟膏 ステロイドを配合した市販薬にテラ・コートリル軟膏という塗り薬があります。

テラコートリルは、炎症を抑えるヒドロコルチゾンというステロイドと、細菌を減少させるオキシテトラサイクリンという抗生物質の2つの有効成分を含む外用薬です。

このテラコートリル軟膏はステロイドを含みますが、そのステロイドの強さは5段階中で最も作用が弱いレベルであるため、副作用の心配が少ないことからニキビにも使ってもいいという意見が多いです。実際にニキビに使うと良く効きます。

赤ニキビに良く効くと評判のお薬ですが、ステロイドは癖があるお薬なので、ニキビが繰り返しできる人が長い期間に渡って使えるお薬かというと疑問が残ります。

ステロイドを含むお薬は、その作用をしっかりと理解して使う必要があります。

フルコートf軟膏

フルコートf 市販薬のフルコートfは、フルオシノロンアセトニドというステロイドと、フラジオマイシンという抗生物質の2種類を含む塗り薬です。

2種類の有効成分が毛嚢炎などの細菌が原因となる皮膚の炎症を素早く抑えます。そして、細菌に効くお薬であることからニキビにも効果が期待できるように思えます。

実際にフルコートをニキビに使ってみると、他の治療薬にはないような即効性が得られることも多いです。ところが、フルコートはニキビに適応すると表記されていません。

理由は、フルコートfに配合されるステロイドの作用がやや強いためです。上手に使用してニキビが治ればいいのですが、場合によっては悪化して治りが長引いてしまう可能性があるのです。

ステロイドを組み合わせる時の使い方

ニキビの状態やお医者さんの判断によっては、ニキビ治療にステロイド薬が処方されることがあるかもしれません。ステロイド薬は、ロコイドクリーム(軟膏)などが処方されることが多いです。

その場合は、ステロイド薬と一緒にベピオゲルやデュアック配合ゲル、エピデュオゲル、ゼビアックス、アクアチムなどのニキビ治療薬も同時に処方されると思います。

それらの使い方は、ベピオゲルやデュアック配合ゲルなどを先にニキビに塗った後にステロイド薬を塗って下さい。順番はステロイド薬が後になります。

そして、ステロイドは赤ニキビには1~3回ほどの使用回数に留めて下さい。限定的に使用するのがポイントです。

また、ステロイドと抗生物質を組み合わせたリンデロンVGやデルモゾールG(後発品)などの塗り薬が処方されることもあるかもしれません。それらは特にアトピーと併発したニキビや毛嚢炎の治療に処方されたりします。

そして、繰り返しになりますが、ニキビにステロイド薬を使って失敗するとひどく悪化してしまう可能性があるため、安易に使い続けることはしないで下さい。