おできの原因と治療法まとめ。最も効く市販薬や皮膚科の薬は?

おできの画像 画像は「おでき」という症状。

痛みのあるとても大きなニキビができた場合、それは厳密にはニキビではなくおでき(せつ)という皮膚感染症かもしれません。

おできは通常のニキビと違って初期段階から腫れに厚みがあり、ボコッとしこりのようになります。

ひどい色素沈着や赤みが残ってしまうことが多いので、より早く治療することが理想です。

今回の記事は、おでき(せつ)の原因と皮膚科での治療法、自分で治す場合の塗り薬や内服薬などを詳しく解説していきます。

おできとは?

化膿したおできの画像 おできとは、毛穴の内部(毛包)や皮脂腺から黄色ブドウ球菌という細菌が感染することで発生する皮膚感染症の一つです。

癤(せつ)ともよばれたりします。また、顔に発生したおできを「面疔(めんちょう)」といったりします。

さらに、おできが悪化して広がったものや、おできとおできがつながって帯状的になったものを「癰(よう)」といったりします。

いろいろな呼び名がありますが古くから使われてきた名称です。

おできの症状や発生原因とは?

黄色ブドウ球菌の画像 おできの原因となる黄色ブドウ球菌は常在菌として皮膚に生息する細菌です。

この細菌は通常はコントロールされているのですが、皮膚内に入り込むと病原性の強さを発揮し、増殖して様々な毒素を排出することで強い炎症を引き起こします。

おできは皮膚の表面的な炎症ではなく、真皮層から皮下組織層といった肌の深い部分で強い炎症を起こすので、発生の段階からしこりになったような腫れ方をします。

医学的には、結節(けっせつ)や硬結(こうけつ)といわれる状態になります。

分厚く腫れて強い炎症により、うっ血が起こって色が紫色~赤黒くなります。(うっ血とは血流が停滞することです)。

ひどく化膿してしまうので触ると強い痛みを感じることが多いです。特にお尻のおできは、座ると激痛を感じることがあります。

アレルギーと併発するとかゆみが現われることがあり、その場合は痛がゆい感じがあります。

数日たつと膿が出てくる

膿が溜まったおでき(せつ)の画像 おできは、発生から3~5日くらい経つと、中心部から膿が出てくるようになります。

この膿は、病原菌の黄色ブドウ球菌と白血球が闘ったために発生するもので、炎症の強さと比例して膿もたくさんでてくるようになります。

ひどく悪化したものはたくさんの箇所からにじみ出てくるように膿が出てくることもあります。

おできが発生しやすい身体の部位

お尻のおできの画像 おできが最も発生しやすい身体の部分はお尻や背中、胸、首の後ろです。

特にお尻は刺激を受けやすいことや蒸れやすい部分であるため、感染症を起こして強い炎症へと進行しやすいです。

お尻のおできが広がって長期化すると慢性膿皮症といわれる状態になることがあります。

脚や腕、陰部などにも発生することがありますが、その場合はムダ毛処理をした後に発生しやすいです。

顔でいえば鼻、頬、Uゾーン(特に男性のヒゲのライン)にできやすいですが、毛穴があればどこにでも発生する可能性はあります。

発生しやすい原因とは?

カミソリや毛抜きが一番リスクが高い

カミソリを使うと毛嚢炎という赤く小さなブツブツが発生したりしますが、それは毛穴が傷ついたことで黄色ブドウ球菌による感染を起こしたことによるものです。

その細菌感染が皮膚の深部に及ぶと、おできのように大きく腫れたものになることもあります。

また、毛抜きは毛根部のような深いところを極端に傷つけますので、特におできの原因になりやすいです。

大量の汗をそのままにしていた場合

おできの原因となる黄色ブドウ球菌という細菌は、皮膚がアルカリ性の環境になると増加しやすくなります。

通常、人間の皮膚は弱酸性に保たれていますが、いくつかの要因で一時的にアルカリ性に傾いてしまうことがあります。

その一つが大量に汗をかいてそのままにしておいたときです。汗をかいた後は微生物の働きによって肌が一時的にアルカリ性に傾き、その時に黄色ブドウ球菌が増加するようになります。

また、洗顔料を使って洗い過ぎることでも皮膚はアルカリ性に傾くことがあります。

そのため、洗顔後は化粧水で保湿することで肌が弱酸性に素早く戻ります。(化粧水は基本的に弱酸性で作られています)。

ストレスなども関係する

ストレスなどが原因でおできができやすくなることがあるようです。

やはり、ストレスは身体の機能バランスを乱してしまうので、おできの発生原因になったり、それを悪化させる要因になります。実際にストレスは炎症を増大させる作用があることがわかっています。

ステロイド外用薬の長期使用

アトピー治療などでステロイド外用薬を長く使っていると、皮膚の免疫力が低下しますので、黄色ブドウ球菌による感染症を起こしやすくなります。

ステロイドを使用するアトピー患者が皮膚感染症にかかるのは珍しいことではないです。

糖尿病やエイズなどの免疫不全

糖尿病やHIV感染→エイズなどの病気で免疫機能が低下することで、おできのような感染症を起こしやすくなります。

なお、糖尿病患者やエイズ患者はカンジダ症や脂漏性皮膚炎、ヘルペスなどにおいても治りにくいことでも知られています。

他の皮膚病との違いや関連性

粉瘤が悪化しておできが発生する?

粉瘤(アテローム)の画像 粉瘤(ふんりゅう)という症状が悪化して細菌性の感染症を起こすと、おできのような状態になることがあります。

粉瘤とは、皮膚の構造の異変により、剥がれていくはずの角質(垢)が皮膚内に溜まって袋状の構造物を形成する症状です。

最初はニキビの芯(角栓)が溜まっただけのように見えますが、放っておくとしだいに皮膚内に角質が溜まってしこりが拡大していきます。

そして、大きくなると黄色ブドウ球菌による感染症を起こしておできのようにひどく腫れることがあります。

粉瘤は自然に治ることはないので、大きくなった場合は皮膚科を受診して手術により取り除いてもらいましょう。

また、粉瘤が炎症をおこした場合は、炎症前にしこりがあったことを医師に伝えて下さい。炎症を起こした粉瘤はおできとの区別がつかないことがあるためです。

毛嚢炎との違い

炎症が強い毛嚢炎の画像 毛嚢炎とは、表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌による皮膚感染症で、発生原因はおできと同じです。

その2つの違いは、毛嚢炎は比較的に軽い症状をいい、おできは皮膚の深部で大きく腫れるものをいいます。

単に毛嚢炎が悪化したものがおできと考えることもできます。

ニキビとの違い

ニキビの画像 おできとニキビは似ていますが、厳密には違います。

ニキビはふさがった毛穴でアクネ菌という細菌によって発生しますが、おできは毛穴がふさがることと関係なく細菌感染で発生します。

おできの場合はニキビと違ってニキビの芯(角栓)のようなものがなく、皮脂が多い少ないに関わらず発生します。

なお、にきびが化膿した場合は皮膚の深いところで黄色ブドウ球菌が増加していることがあるため、おできと同じような強い腫れ方になることがあります。

おできの治療法

おできの治療については、おできは長引くことが多く、悪化したり跡がひどく残ったりするので早めに皮膚科を受診して治療したほうがいいと思います。

治療は基本的に抗生物質(抗菌薬)の塗り薬を中心とした治療が基本となります。

おできに効く塗り薬

おできは、皮膚の深いところで強い炎症を起こしているので、塗り薬の成分が届きにくい欠点がありますが、何もしないよりは効果はあります。

なお、おできの炎症が小さい場合は塗り薬だけでも良い効果を得られることもあります。

おできに対して皮膚科で処方される塗り薬は以下のような抗生物質(抗菌薬)が処方されます。

皮膚科で処方される抗生物質の塗り薬

  • ゼビアックスローション
  • クリンダマイシン(ダラシンTゲル)
  • アクアチム
  • ゲンタシンクリーム

それらのお薬は黄色ブドウ球菌に良く効きます。

他には、抗生物質とステロイドを配合したリンデロンVGクリームや、デルモゾールG軟膏などが処方されることもあります。

ただし、ステロイドを塗り続けると副作用が現われますので、1週間以内の使用期間に留め、より素早く炎症をしずめてその後は抗生物質で治療を継続して下さい。

ステロイド配合剤は短期間の限定的な使用が理想です。

多発している場合は抗生物質の内服

ルリッド おできが多発していたり、糖尿病などで治りにくい場合は抗生物質の内服薬が処方されることがあります。

抗生物質の内服薬は以下の通り。

  • ルリッド錠(ロキシスロマイシン)
  • ファロム錠(ファロペネム)
  • ミノマイシン(ミノサイクリン)
  • ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
  • バナン
  • セフゾン

その中でもルリッド錠やミノマイシンなど抗菌作用の他に優れた抗炎症作用もあるので、おできやニキビ治療などによく使われます。

治療期間は、まずは1週間から10日間くらいが目安です。それでも治らない場合は引き続き薬を継続していきます。

また、症状が長びいて薬が効きにくいと判断された場合は抗生物質が変更されることがあります。

処方されたお薬は毎日、用法用量を守って飲み切るのが基本です。中途半端な治療になると治りが悪くなることがあります。

抗生物質を使用すれば、1週間くらいで腫れは引いて治ると思います。なお、治った後も皮膚の硬さはしばらくは残ります。

切開することもある

手術の画像 おできの病巣部に膿がたくさん溜まって治りにくくなっている場合は、皮膚を切って膿を洗い流してキレイにする方法もあります。

通常よりも早く治るようになりますが、傷痕が残ってしまうのが欠点です。

皮膚の切除は顔以外のおできによく行われます。なお、皮膚を切る場合はおできがかなり悪化している場合です。

ステロイド注射が行われることもある

お尻に注射する画像 まれなケースですが、おできの治りを良くするために、直接皮膚にステロイド注射が行われることがあります。使用するステロイドには、トリアムシノロン(商品名:ケナコルト)やベタメサゾンなどがあります。

ステロイドには優れた消炎効果があるので、それをおできに対して直接注入すれば即効性があるのは予想がつくと思います。注射の翌日には腫れが小さくなったと実感できることがほとんどです。

ただし、ステロイドには皮膚を萎縮させる副作用があり、真皮層や皮下組織(脂肪がある層)を萎縮させて、おできが治った後に皮膚が大きく凹んでしまう可能性があります。そのため、症状に適した注入量にしなければいけません。

ステロイド注射はお尻のおできなどには使用されることがありますが、顔に対してはリスクが大きいです。副作用を説明してもらってから患者側が判断する必要があります。

自分で潰していいのか?

膿が溜まったおでき(せつ)の画像 おできができた数日後には表面に膿が出てきたりします。白ニキビのような状態で膿が現われている場合は、先端を少しだけ潰して出したほうが治りがよくなります。ただし、絶対に強く押し出そうとしないで下さい。

そして、おできはニキビと違って「ニキビの芯」という角質と皮脂の塊のようなものがないので、強く押し出しても意味がありません。膿だけを軽く出してあげる程度で十分です。

そして、潰して膿を出した後はお薬を塗って下さい。どんな方法においても炎症部に対しては刺激を与えないようにするのが基本です。

悪化している場合は潰してはいけない

おできが悪化して膿が出ている画像 画像のようにおできが悪化すると、たくさんの箇所から噴き出すように膿が出てくることがあります。このような状態になったら潰したりしてはいけません。

下手に刺激を与えるほど炎症反応が活性化してさらに腫れが大きくなってしまうので、触らないようにしましょう。刺激は厳禁です。そして、この状態になったら皮膚科を受診して下さい。抗生物質を使えば必ず治っていきます。

おできに効く市販薬

皮膚科に行かずに市販薬でおできを治すこともできます。おできよりも症状が軽い毛嚢炎(毛包炎)の場合は市販の塗り薬だけで良い効果を得られることも多いです。

そこで、おできに効く市販の塗り薬をいくつかご紹介します。

ドルマイシン軟膏

ドルマイシン軟膏の画像 おできに最も効く市販薬の一つがドルマイシン軟膏。コリスチンとバシトラシンの2つの抗生物質を配合しているので、それが相乗効果をもたらします。

そして、ステロイドを含んでいないので、その副作用を気にすることなく使える利点があります。

テラマイシン軟膏

テラマイシン軟膏の画像 テラマイシン軟膏は、オキシテトラサイクリンと、ポリミキシンBという2種類の抗生物質が配合されたお薬です。2種類の抗生剤がダブルで効いていきます。

ステロイドを含んでいないので、その副作用の心配なく使えます。市販薬ではドルマイシン軟膏とともに最もおできに効く製品の一つです。

テラコートリル軟膏(ステロイドを含む)

テラコートリル軟膏の画像 テラコートリル軟膏は、オキシテトラサイクリンという抗生物質と、ヒドロコルチゾンというステロイドを含んだ塗り薬です。

ステロイドを含んでいますが、ヒドロコルチゾンは作用がとても弱いステロイドなので4~5日くらいの使用であれば副作用の心配はないと思います。

注意点としては、ステロイドにはダメージを受けた皮膚の回復を悪くしてしまうことがあるので、顔に使う場合は1週間以上使い続けるのは避けて下さい。顔は薬の浸透が良いので副作用もでやすいです。

他のお薬

他にも、フルコートfやベトネベートN軟膏などの市販薬がありますが、それらはやや強めのステロイドが配合されているので、副作用を考えるとおできの治療にはあまりおすすめできません。

おできの治療は1~2週間ほどの長めの治療期間になることがほとんどなので、強めのステロイドが配合された薬は避けたほうがいいと思います。

おできに効く市販の飲み薬

おできには抗生物質の内服薬が最も良く効くのですが、抗生物質は医師の処方箋が必要なので一般の医薬品として購入できません。

市販の飲み薬は選択肢が少ないのですが、その中でもイブプロフェンやロキソニン(ロキソプロフェン)という消炎鎮痛作用があるお薬はおできの治りを早くしてくれます。

イブプロフェン

イブ錠(イブプロフェン) 風邪薬などに含まれるイブプロフェンは、炎症や痛みを引き起こすプロスタグランジンという生理活性物質を抑制して、おできの炎症や痛みを抑える効果があります。

風邪の諸症状だけではなく、おできやニキビなどにも効くのです。製品名では、イブシリーズ(イブ錠、イブA錠など)やエスタックイブなどが有名です。

とても即効性がある成分なので、おできのような化膿性が強い皮膚病に対して集中的に使用すればより早く腫れが治ると思います。

なお、おでき治療にイブプロフェンが皮膚科で処方されることもあるかもしれません。処方薬にはブルフェンなどがあります。

抗生物質と組み合わせて服用することができますが、キノロン系抗菌薬との併用には注意が必要です。

ロキソニンs(ロキソプロフェン)

ロキソニンSの画像 市販薬のロキソニンs(ロキソプロフェン)もイブプロフェンと同じように炎症や痛みを悪化させるプロスタグランジンを抑えて、より早く炎症反応を治します。

頭痛や生理痛に効くとされるお薬ですが、あらゆる炎症反応や痛みに効果があります。ロキソニンはイブプロフェンよりも痛みを抑える効果に優れています。

漢方薬は効く?

清上防風湯 漢方薬には消炎作用をもち、おできやニキビなどの化膿を抑える効果があるものがあります。

毛嚢炎が発生しやすく、そして悪化しやすいような人は試してみる価値があります。

化膿性の皮膚病を治す漢方薬には、

  • 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
  • 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
  • 排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)

などがあります。それらは一般的なドラッグストアなどで市販品としても購入できます。また、皮膚科で処方してもらえるケースもあります。

ただし、漢方薬は即効性が得られにくいのが難点です。抗生物質のようにピンポイントで効くのではないので、効果が実感できないことも多いです。

やはり、おでき(せつ)や癰(よう)といった化膿性皮膚疾患には抗生物質の内服薬が最も即効性があります。より早くキレイに治したいのなら皮膚科医のもとで治療を行うのが理想です。

おできが治った後の問題

クレーター跡になる可能性が高い

ニキビ跡の種類の写真 おできは、画像のようなニキビ跡と同じように色素沈着や赤みなどの炎症跡がひどく残ってしまうことがあります。

にきび跡がクレーター状に凹んでしまうように、おできでもクレーターになることもよくあります。また、ケロイドになることもあります。

そのため、より早く皮膚科を受診して治したほうが良いとされます。特に顔におできができた時は早めに病院へ行きましょう。

おできが治った後の硬さはいつごろ治る?

おできが治った後もしこりのように皮膚の硬さが残り、やや皮膚の盛り上がりが続くことがあります。その状態は多くのケースでは数か月かけて自然に治っていきます。

皮膚の硬さは炎症による結合組織の増殖が原因ですが、それがじょじょに代謝されて改善されることで硬さもなくなっていくのです。特に6か月間くらいは組織の修復が活発に行われるので、その間に治っていくことがほとんどです。

ケロイド(肥厚性瘢痕)になってしまったのでは?と心配するかもしれませんが、まずは1か月くらいは様子をみて下さい。医師に診てもらうのも一つの方法です。

なお、ケロイドは体質的な要因が大きいので、ケロイド体質でない場合はあまり心配する必要はないと思います。