ニキビ治療におけるピルが男性ホルモンを抑制する仕組み

マーベロン28(ピル)の画像 低用量ピルとは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンがバランス良く配合された女性ホルモン剤です。一般的に経口避妊薬として用いられますが、ピルが皮脂分泌を促す男性ホルモンの働きを抑制することから、にきび治療にも使用されることがあります。では、ピルはどのようなメカニズムで男性ホルモンを抑制し、ニキビ肌を改善に導くのでしょうか。

女性ホルモンの働きと生理周期による変化

ピルの働きを理解するには、まず2種類の女性ホルモンが分泌される仕組みを理解する必要があります。エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンは月経周期によって分泌量が変化し、それによって女性の身体に大きな変化をもたらします。

女性ホルモンの変化と生理周期

卵胞期

月経(生理)が終わって排卵期までの約7~10日間は卵胞期といわれる時期で、この卵胞期にはエストロゲンの分泌が増加します。卵胞期はエストロゲンの影響で皮脂分泌が抑えられ肌トラブルが少なくなります。肌質によっては乾燥しやすくなることもあります。

黄体期

排卵後から生理までの約2週間は黄体期といわれる時期で、この黄体期にはプロゲステロンの分泌が増加します。黄体期はプロゲステロンの影響で肌が脂っぽくなり、ニキビ・肌荒れを起こしやすくなります。

女性ホルモンをコントロールする性腺刺激ホルモン

性腺刺激ホルモンと女性ホルモン エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンは、脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンによってコントロールされています。その性腺刺激ホルモンには、黄体形成ホルモン(LH)と、卵胞刺激ホルモン(FSH)の2種類があり、血液中の女性ホルモン濃度の変化によってそれらの分泌量も変化します。

月経(生理)が終わると、脳下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、卵巣に作用して卵胞の成長を促します。そして、発育した卵胞からエストロゲンが分泌されますが、エストロゲン量がピークに達すると脳下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が分泌され、成熟した卵胞が刺激を受けて中の卵子が飛び出します。これが排卵です。

排卵後、卵子が出ていった卵胞は黄体というものに変化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を多量に分泌し始めます。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、子宮内膜に働きかけて受精卵が着床できるように準備をしますが、受精が成立しないとプロゲステロンとエストロゲンは減少し、子宮内膜もはがれて経血となって外に出ていきます。これが月経(生理)です。

ピルはこういった様々な性ホルモンの働きをコントロールすることで、女性特有の様々な諸症状を緩和することができます。

ピルがニキビに効果がある理由

ピルが男性ホルモンを抑えるメカニズム

テストステロン(男性ホルモン) ピルには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが微量配合されています。ピルを服用していると、脳は身体に2種類の女性ホルモンが十分にあると認識し、性腺刺激ホルモンを分泌しなくなります。

そして、その性腺刺激ホルモンの分泌を抑えることで男性ホルモン(テストステロン)の分泌を抑制することができます。男性ホルモンは、皮脂腺に作用して皮脂分泌を促す作用や角化異常を起こして毛穴を詰まらせやすくする作用があり、ニキビの主な原因と考えられています。

女性にも男性の約10~20%ほどの男性ホルモンが分泌されていて、思春期にニキビができやすくなるのも男性ホルモンなどの性ホルモンが増加することが主な要因ですが、それを抑制することでニキビの予防・改善が期待できます。これがピルがニキビを抑制する効果がある理由の一つです。

まとめ

1ピルによって女性ホルモンを補充する。
2脳が女性ホルモンが体内に十分にあると認識し、性腺刺激ホルモンを分泌しなくなる。
3性腺刺激ホルモンが抑制されることで男性ホルモンも抑制され、ニキビ予防・改善につながる。

低用量ピルはプロゲステロンの働きを抑制する

プロゲステロンとテストステロン 排卵期後から生理までの約2週間を黄体期といい、この時期を一般に「生理前」といったりしますが、一般に生理前は肌が脂っぽくなってニキビ・吹き出物ができやすくなります。これは女性ホルモンの一つであるプロゲステロン(黄体ホルモン)が増加することが主な要因だと考えられています。

プロゲステロンは男性ホルモンと似た作用があり、皮脂腺に作用して皮脂分泌を促す働きがあるとされます。プロゲステロンも男性ホルモンと同じようにコレステロールから作られるステロイドホルモンであり、構造的に似ているため作用においても部分的に似た作用があるのだと考えられます。

そして、ピルを服用することで最終的にプロゲステロン量を抑制することができます。ピルには2種類の女性ホルモンが含まれ、それを服用することで脳の視床下部は体内に十分な女性ホルモンがあると認識して、性腺刺激ホルモンを分泌しなくなります。それによって、自然な女性ホルモンの分泌が大きく減少し、体内にはピルに含まれる一定の女性ホルモン量(エストロゲンとプロゲステロン)になります。

ピルに含まれるプロゲステロン量は、自然に分泌されるプロゲステロン量よりも圧倒的に少ないため、最終的に体内のプロゲステロン量を抑えることができます。また、ピルに含まれるプロゲステロンは男性ホルモン様作用が少ないものが使用されます。その結果、プロゲステロンの影響によって起こる生理前ニキビ・吹き出物などの肌トラブルを予防することができます。

まとめ

1ピルによってエストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンを補充する。
2脳が女性ホルモンが十分にあると認識し、性腺刺激ホルモンが抑制される。
3エストロゲンやプロゲステロンの自然な分泌が抑えられ、体内にはピルに含まれる一定の女性ホルモン量になる。
4ピルに含まれるプロゲステロン量は少なく、通常よりも体内のプロゲステロン量はとても少なくなる。また、ピルに含まれるプロゲステロンは男性ホルモン様作用が少ない。
5プロゲステロンの作用を抑制することで皮脂や角化異常を抑え、にきび予防・改善につながる。

低用量ピルに含まれるエストロゲンが男性ホルモンを抑制する

日本で使用されているピルには、エチニルエストラジオール(EE)というエストロゲンが使用されます。そのエチニルエストラジオールは、性ホルモン結合グロブリン(SHBG:sex hormone binding globulin)という性ホルモンと結合するたんぱく質を増加させ、その性ホルモン結合グロブリンが男性ホルモン(テストステロン)と結合することで血中男性ホルモンを減少させることができると考えられています。

まとめ

1ピルに含まれるエチニルエストラジオールが血中の性ホルモン結合グロブリンというたんぱく質を増加させる。
2性ホルモン結合グロブリンが男性ホルモンと結合し、血液中の男性ホルモンが減少する。
3男性ホルモンが抑制されることで皮脂分泌が抑えられ、ニキビが改善する。

ニキビ治療に使用される低用量ピル

マーベロン(ピル)の画像 ニキビ治療で使用されるピルは一般的に低用量ピルというエストロゲン量が少ないピルが使用されます。エストロゲンが少ないピルは副作用を抑えることができるためです。そして、配合されるプロゲステロンは世代によっていくつかの種類に分けられますが、男性ホルモン様作用が少ないプロゲステロンが使用されます。

ニキビ治療に用いられる低用量ピルは「マーベロン」や、マーベロンのジェネリック医薬品である「ファボワール」などが有名です。マーベロンは、デソゲストレルという男性ホルモン様作用が少ないプロゲステロン剤を配合した第三世代低用量ピルで、ニキビ治療に対してよく使用されるピルです。