脂漏性皮膚炎の原因と治療法一覧。効果的な薬や治し方について

脂漏性皮膚炎の画像 一般に皮脂量が増加すると、なにかと肌トラブルが多くなります。

皮脂が多くなることでよく発生するのがにきびですが、ニキビ以外にも様々な皮膚病を引き起こすことがあります。

その一つが脂漏性皮膚炎です。(画像参考)

脂漏性皮膚炎は皮脂による刺激で発生する皮膚病で、慢性化して治りにくくなることも珍しくありません。

今回は、その脂漏性皮膚炎の原因と治し方、効果的な治療薬などを詳しく解説していきます。

脂漏性皮膚炎とは?

耳の裏の脂漏性皮膚炎の画像 脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは、顔や頭部、耳の裏などの皮脂が多い部分に、画像のようにたくさんのフケが発生する皮膚病です。

脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)とも呼ばれます。

炎症が起こって角質が剥がれることでフケが発生してガサガサになり、進行すれば強い赤みを伴い、かゆみも現れることもあります。

脂漏性湿疹は乳児期や高齢者に発生しやすい傾向があります。また、若い世代にも条件が揃えば発病することがあります。

乳児の脂漏性湿疹について

乳児の脂漏性皮膚炎は、生後数週間から3ヶ月くらいに多くみられます。乳児脂漏性湿疹と呼ばれます。

赤ちゃんは肌のバリア機能が弱いことや、母親の性ホルモンを受け継ぐことで皮脂分泌が多くなり、その影響で発生しやすくなります。主に皮脂分泌が多い顔面から頭皮にかけて湿疹が現れ、新生児ニキビといわれる赤ちゃん特有のニキビと併発することがあります。

乳児の脂漏性湿疹は一般に皮脂分泌が落ち着いて免疫もしっかりしてくる生後から1年くらいまでに改善して消失していくことがほとんどです。

ところが、一部はアトピー性皮膚炎と併発していて、脂漏性皮膚炎が治った後もアトピーによる皮膚炎が続くことがあります。(症状の区別が難しいことがあります)。赤ちゃんの湿疹を心配して下手にスキンケアをしてしまうとかえって悪化してしまうことがあります。

高齢者

脂漏性皮膚炎の画像 高齢者の脂漏性皮膚炎は、主に頭皮、額、眉毛周囲、鼻の周囲、口の周囲などの部分に湿疹が現れます。皮膚がフケのように剥がれて粉をふくようになり、かゆみを伴うことが多くなります。

そして、高齢者の場合は冬に悪化しやすい傾向があります。年齢が高い人の脂漏性皮膚炎は乳児期のものと比較して治りにくい傾向がありますが、その原因は、ストレスや生活習慣などの内因的な理由や、高齢者は肌老化によって皮膚のバリア機能が低下しているためなどがあげられます。

若い世代

脂漏性皮膚炎の画像 脂漏性湿疹は、条件が揃えば思春期以降の若い時期にもできることがあります。過剰な皮脂、間違ったスキンケア、紫外線、お化粧、生活習慣、食生活の乱れなどが原因で発生することが多いようです。

脂漏性皮膚炎の原因とは?

脂漏性皮膚炎の原因は、まだ不明なことが多いとされますが、主に「マラセチア真菌」というカビが関係して発生すると考えられています。

マラセチア菌(カビ)が原因

細菌 脂漏性皮膚炎は、皮脂に含まれる遊離脂肪酸(ゆうりしぼうさん)という物質が刺激となって接触皮膚炎を起こすことが原因だといわれています。

脂肪酸にはいろいろな種類があるのですが、その中でも刺激性が強いのはオレイン酸やパルミトレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸です。

遊離脂肪酸は肌の表面を弱酸性に導く働きがあり、病原性の強い黄色ブドウ球菌などの増加を抑制する働きなどがある人間の肌にとって不可欠な存在です。

ところが、一方で脂肪酸の中でも不飽和脂肪酸は時間の経過とともに酸化されて刺激性が大きくなる欠点があり、増えすぎると炎症を起こす原因となってしまいます。

遊離脂肪酸は常在菌が作り出す

遊離脂肪酸は、皮膚に生息する様々な微生物が皮脂を分解して作り出していますが、脂漏性皮膚炎の原因となる微生物は、マラセチア真菌(癜風菌:でんぷうきん)というカビだと考えられています。(他の要因が影響することもあります)。

マラセチア真菌は皮膚常在菌の一つで、皮脂中の中性脂肪を分解して遊離脂肪酸を常に作り出していますが、なんらかの要因でマラセチア菌が増加したりすると、皮脂中の遊離脂肪酸も比例して増加するようになります。

その増加した遊離脂肪酸の刺激に耐えられずに炎症を起こてしまうのが脂漏性皮膚炎です。

皮脂が多くなるのと比例して遊離脂肪酸も多くなるため、脂漏性皮膚炎は皮脂が多い頭部や鼻のわき、眉まわり、眉間などに現れやすいのです。

マラセチア真菌そのものが刺激を起こすケースも

細菌やカビ、ウイルスのイラスト 脂漏性皮膚炎はマラセチア真菌そのものが原因になっている可能性があります。

どんな人においても皮膚にはマラセチア真菌というカビが生息しています。そしてその種類は5種類ほどが存在するとされます。

そのうちマラセチアファーファーという種類は、皮膚の免疫細胞が異物と認識する性質があり、増加したり毛穴に入り込んだりした段階で免疫反応を起こして炎症を誘発する原因になるとされます。

マラセチアファーファーそのものが炎症要因となり、そのカビ菌が増加することで脂漏性皮膚炎を起こす可能性もあるとされます。

マラセチア毛包炎という症状もある

腕のマラセチア毛包炎の画像 なお、マラセチアファーファーは毛穴で炎症を起こすと、ポツっとしたできものを引き起こすことがあります。

それはニキビとよく似ているのですが、厳密にはニキビではなくマラセチア毛包炎といわれます。

背中や胸、二の腕などに「ニキビの芯がない」、「先端に光沢がある」、「炎症が大きくならない」、「ややかゆみがある」、「炎症が長引く」などのできものができたらマラセチア毛包炎の可能性が高いです。

悪化させる要因

スキンケア不足、またはやりすぎ

脂漏性皮膚炎は、肌を何日も洗わずにいたりすると発生しやすくなります。例えば、怪我や病気などによって身体を洗う機会がなくなったりすると脂漏性皮膚炎を起こすことがよくあります。

また、反対に過剰にスキンケアをすることが原因で脂漏性湿疹が発生する可能性があります。過剰な洗顔によって角質層のバリア機能が乱れたり、皮脂が奪われすぎてかえって皮脂が増加してしまうことで、脂漏性皮膚炎が悪化することがあります。

脂漏性皮膚炎の予防や改善には、スキンケアを適度に行う必要があります。

化粧水の使いすぎ

脂漏性皮膚炎がある場合、化粧水の使いすぎには注意して下さい。化粧品には、アクネ菌などの細菌やマラセチア真菌(カビ)などの増加を促してしまう成分が含まれていることがあります。

保湿成分としてよく配合されるグリセリンや糖由来の成分なども脂漏性皮膚炎の悪化原因となる菌の増加を促すことがあります。マラセチア菌のようなカビは湿気が多い環境を好むため、化粧水で肌をベタベタにするのは止めましょう。

ファンデに含まれる成分による皮膚炎

ファンデーション塗るお化粧の写真 ファンデーションには仕上がりをキレイにするために、エモリエント成分として油脂が含まれていることがあります。その油脂が原因となって脂漏性皮膚炎を起こす可能性があります。

特にオリーブ油やオレイン酸などは肌に対する刺激性が強い欠点があります。

なお、オリーブオイルの主成分はオレイン酸で、オレイン酸のような不飽和脂肪酸は時間の経過と共に肌への刺激性が高くなる欠点があります。長時間のメイクや、メイクしたまま紫外線に当たり続けるのは避けましょう。

紫外線

強い紫外線の写真 紫外線は皮脂の酸化を促す原因です。皮脂が過酸化脂質に変化すると、皮膚炎を引き起こすことがあります。

特に鼻やその周囲に影響がでやすいです。お化粧したまま長時間紫外線を浴び続けて脂漏性皮膚炎を起こす女性は少なくありません。

ビタミン不足

ビタミン ビタミン不足が原因で脂漏性皮膚炎を起こすことがあります。ビタミンは健康な肌を作るのに不可欠な存在なので、不足すればバリア機能が低下して刺激に弱い肌になってしまいます。

ビタミンの中でも特にビタミンB2やビタミンB6などは、正常なターンオーバーを維持する働きや皮脂分泌を抑制する働き、皮脂の酸化を防ぐ働きなどがあり、皮膚の健康にとって重要な働きをしています。

その二つのビタミンは不足しないようにしましょう。ビタミン剤を服用し続けるだけで脂漏性皮膚炎が軽快に向かうことも多いです。

油分の多い食生活

植物油の画像 油っこい食事になると皮脂が増加します。その皮脂の増加が皮膚を刺激して脂漏性皮膚炎を起こす原因になることがあります。

また、普段摂取している植物油が原因で脂漏性皮膚炎になることがあります。植物油に多く含まれるリノール酸の代謝によって作られるアラキドン酸は、炎症を引き起こすエイコサノイドを作り出すことで、慢性的な炎症体質になってしまい、脂漏性湿疹が治りにくくなることがあります。

大豆油などはリノール酸が多いので注意して下さい。日常的な食用油は、リノール酸が少ないオリーブオイルやキャノーラ油などが理想です。

ストレスやイライラも原因の一つ

ストレスを抱える画像 日常的なストレスによって生理機能が低下すると免疫力も下がっていきます。それによってコントロールされていた細菌やカビが増加して脂漏性皮膚炎を起こす可能性があります。

また、イライラは男性ホルモンを促して皮脂の増加をもたらし、症状を悪化させてしまいます。ストレスは炎症物質の発生を促して、症状を悪化させてしまう原因になります。

飲酒

飲酒するとアルコールを代謝するために多くのビタミンが消費されます。それによって脂漏性皮膚炎のような慢性的な肌トラブルを起こす可能性があります。

また、お酒は毛細血管を拡張させますが、それが原因で脂漏性皮膚炎の赤みやかゆみを悪化させてしまうことがあります。

お酒による体調悪化が肌に現れることは、よくあることです。本気で脂漏性皮膚炎を治したい場合は禁酒するか量を減らしてみましょう。

たばこ(喫煙)

タバコを吸う画像 喫煙が原因で脂漏性皮膚炎が悪化してしまうことがあります。たばこを吸うと活性酸素が発生しますが、これを無毒化するために様々なエネルギーが消耗されます。

肌作りに関与するビタミンや抗酸化物質などの消耗も多くなります。

また、活性酸素そのものが細胞にダメージを与えたり、血行を悪くして肌代謝を乱したりします。治りにくくなった脂漏性皮膚炎を治すには禁煙して下さい。

HIV、エイズ患者などの病気

医師の写真 脂漏性皮膚炎はHIV感染の初期症状として現れることがあります。

免疫が乱れることが原因で、それまで免疫によってコントロールされていた皮膚の細菌や真菌が増加してしまい、それによって脂漏性皮膚炎などの肌疾患を引き起こすことがあるとされます。

他にも、カンジダ皮膚炎やマラセチア毛包炎などのカビが原因となる皮膚病も免疫不全を起こす病気によって発生し、治りにくくなることがあります。

なお、免疫低下による皮膚疾患は糖尿病などにおいてもよく起こります。

脂漏性皮膚炎の治し方

脂漏性皮膚炎の治し方は、主に洗顔によって肌に清潔にすることと、塗り薬や飲み薬を上手に使って症状をコントロールすることが大切です。

洗顔や洗髪によって肌を清潔にする

脂漏性皮膚炎は皮脂やマラセチア菌の増加による影響が大きいため、できるだけ皮膚の清潔を維持するスキンケアを行うことが基本です。

洗顔は1日1~2回、洗髪は1日1回行い、肌に刺激を与えないようにたくさん泡立てて優しく丁寧に洗うようにしましょう。洗顔料は一般的な石鹸で十分です。

また、肌がデリケートな時期に皮膚に負担をかける洗い方はしないで下さい。ピーリングなどは厳禁です。洗いすぎることも悪化要因となります。

生活習慣の改善を

脂漏性皮膚炎は内因的な問題を抱えているケースが多いです。そのため、ぜひ生活習慣を整えるようにして下さい。

  • タバコを止める。
  • お酒も止める。または減らす。(1日1杯までにする)
  • 紫外線を避ける。
  • エネルギーの過剰摂取、また栄養不足にならなないようにする。
  • 睡眠をしっかりとる。
  • 糖尿病などの持病がある場合はきちんと治療する。その場合は食事制限も必要。

市販薬ピロエースが効く

ピロエースZ液の画像 市販薬のピロエースはカビに効くラノコナゾールを主成分とした塗り薬。

水虫やカンジダ菌などによく使われるお薬で、脂漏性皮膚炎の原因となるマラセチア菌にも効きます。

普通のドラッグストアやAmazonや楽天などの通販サイトで購入できます。形状はローションタイプ、クリームタイプ、軟膏タイプがあります。

一概には言えませんが脂漏性皮膚炎にはローションタイプが適していることが多いです。

効果

以下の画像のように、脂漏性皮膚炎は抗真菌薬を使うことで改善に向かいます。写真は筆者の家族のもので、わかりやすく比較してみました。

脂漏性皮膚炎の対して抗真菌薬を使った効果

抗真菌薬を使えば、しだいにフケが少なくなり、炎症もなくなっていきます。

湿疹がなくなることでバリア機能が整ってきて、強い肌になっていきます。1週間くらい使えばはっきりと効果がわかるはずです。

ただし、炎症が長引いているケースが多いので、赤みや色素沈着が残ってしまうことが多いと思います。

なお、この赤みや色素沈着は薄くなるまで年単位の時間がかかることがあります。そして、場合によっては自然には治らないこともあります。

色素沈着を治したい場合は、レーザートーニングという治療が有効です。

皮膚科ではどんな治療が行われる?

脂漏性湿疹に対して、皮膚科医は塗り薬、ビタミン剤を中心とした治療をすすめるのが一般的です。

ケトコナゾールという外用抗真菌薬が良く効く

ニゾラール(ケトコナゾール) 脂漏性皮膚炎はカビが原因とされるので、一般に抗真菌薬(抗カビ薬)が使用されます。

治療薬としてはケトコナゾールローション(先発品:ニゾラールローション)というイミダゾール系の抗カビ薬が使用されることが多いです。

皮膚科で保険適応で処方してもらえます。ローションタイプとクリームタイプがありますが、脂性肌タイプはローションが理想です。

ラノコナゾールローションも効く

アスタットローションやクリームの画像 ラノコナゾールローションは、ケトコナゾールと同じイミダゾール系の抗真菌剤です。先発品はアスタット。

水虫治療によく処方されるお薬ですが、脂漏性皮膚炎やカンジダ皮膚炎などにも効きます。

タイプはローション、クリーム、軟膏の3種類。

なお、このラノコナゾールは市販薬のピロエースの主成分です。なので、このお薬を使うならば皮膚科に行かなくてもドラッグストアなどで購入して自分で治療できます。

基本的にケトコナゾールやラノコナゾールなどの塗り薬を使えば改善に向かうのですが、それでも思うように症状が改善に向かないケースがあります。そのような人は、皮膚のバリア機能の破綻やストレス、食生活などの問題があるようです。

湿疹が強い場合はステロイド外用薬の使用

ロコイド(ヒドロコルチゾン) 脂漏性皮膚炎の炎症度合いが強い場合は、治りを良くするために、抗カビ薬と一緒にステロイド外用薬を使用して素早く炎症をとってあげたほうが良いケースがあります。

炎症を早く治して早期に皮膚のバリア機能を整えてあげることで、その後の治り方に好循環をもたらします。

ただし、ステロイドのような免疫を抑制する働きがある塗り薬は使い続けると細菌や真菌(カビ)の増加を促してしまい、かえって脂漏性皮膚炎を悪化させたり、副作用を起こす可能性があります。

また、ステロイドは使い続けると回復を遅くしてしまう欠点もあります。そのためステロイド薬は限定的な使用にとどめます。

特に顔はステロイド外用薬の反応が良く、副作用が現れやすいため慎重に用いて下さい。脂漏性皮膚炎におけるステロイド外用薬は使い続けてはいけません。

ビタミン剤の内服

ビタミンB群のサプリメント 脂漏性皮膚炎にはビタミンB2やビタミンB6などの飲み薬がとても良い効果を発揮します。

皮膚科などでは、ビタミンB2製剤のハイボン錠やフラビタン、またビタミンB6製剤のピドキサールなどがよく処方されます。

炎症の治りや色素沈着の予防のためにシナールというビタミンC製剤が処方されることもあります。

また、ビタミン剤は市販のサプリメントなどを利用することでもOKです。ビタミンをしっかり摂取することで脂漏性皮膚炎の改善と、再発を予防することができるはずです。

抗アレルギー薬が効く

フェキソフェナジン(アレグラ) 脂漏性皮膚炎にかゆみがある場合や、炎症がなかなか治らない場合、アレルギーの疑いがある場合などは、抗アレルギー薬が効果があります。

抗アレルギー薬は、かゆみをもたらすヒスタミンを抑制するだけではなく、その他の炎症を誘発する化学物質の発生も抑制します。

炎症そのものが起こらないようになるため、症状の早い改善が期待できます。抗アレルギー薬は、フェキソフェナジン(商品名:アレグラ)が理想です。

フェキソフェナジンは眠気などの副作用も少なく、日常的に使いやすい良いお薬であることから、最も使用される抗アレルギー薬の一つとして知られています。

素早く炎症を抑制するのがポイント

脂漏性皮膚炎は多くのケースでは炎症が軽度であるため、治療が遅れることが多いのですが、細かな炎症でも長く続くことで肌細胞へのダメージが蓄積されて回復を難しくしてしまいます。

そのため、できるだけ早い段階で治療をして炎症を抑え、乱れたバリア機能を整えてあげる必要があります。角質層のバリア機能がしっかりしていなければ、皮脂の刺激に耐えることができなくなります。

中途半端な治療が続くと、何度も再発して治りにくくなることもあるので、早期にしっかりと治療するのが理想です。そして、食生活や生活習慣などを見直すことも重要です。

特に、ストレスやタバコ、飲酒、紫外線などは悪化原因となりますので、それらはできるだけ排除するようにしましょう。