サブスタンスPとは、神経線維の末端から放出される11個のアミノ酸からなる神経ペプチドの一種です。サブスタンスPは伝達物質として痛覚、炎症、かゆみなどの発現に関与します。
アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、花粉症などのアレルギー反応はサブスタンスPが大きく関与しているとされますが、ニキビにかゆみや痛みが現れる場合にもサブスタンスPが関与していると考えられます。
サブスタンスPとニキビの関係
皮脂分泌を促す「サブスタンスP」
ストレスやイライラを感じると皮脂腺近くに存在する交感神経節からサブスタンスPという伝達物質が放出されます。
サブスタンスPは、痛覚や炎症反応に関与している物質と考えられていますが、その他にも皮脂腺に作用して皮脂分泌を促す作用があるとされます。そのため、ストレス・イライラが続くと皮脂量が増えてニキビができやすくなる可能性があります。
皮脂が増加すると、アクネ菌や真菌(カビ)などの皮膚常在細菌が増加し、その菌が皮脂を分解して遊離脂肪酸をつくり、その遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与えることで毛穴つまりやニキビを発生するようになります。
炎症性サイトカインの放出を促す
サブスタンスPは表皮内にあるケラチノサイト(角化細胞)に結合して炎症性サイトカインの放出を促す作用があります。炎症性サイトカインとは、その名の通り炎症を引き起こすサイトカイン(伝達物質)です。
炎症性サイトカインはターンオーバーを乱し、ニキビの原因になると考えられていて、さらにこの炎症性サイトカインによって免疫が働いて、さらに皮膚が炎症を起こすようになります。
ニキビの発生原因も炎症性サイトカインが関与します。にきび原因菌であるアクネ菌が増加すると、それを異物だと判断して表皮細胞はインターロイキン1αという炎症性サイトカインを放出し、免疫が活性化して赤く腫れるようになります。
サブスタンスPはヒスタミンの放出を促す
サブスタンスPは、炎症悪化をもたらすヒスタミンという物質の放出を促す働きがあります。ヒスタミンは、皮膚においてアレルギーや炎症反応の介在物質となる物質です。そのヒスタミンの働きによって皮膚炎やかゆみが悪化したりするようになります。
ヒスタミンは知覚神経を刺激して痒みを引き起こしますが、その刺激によって神経線維の末端からサブスタンスPが放出されるようになります。
そして、そのサブスタンスPが肥満細胞(マスト細胞)に作用してさらにヒスタミンの放出を促すという悪循環をもたらします。このサブスタンスPが肌のかゆみを増強させる要因の一つと考えられています。
かゆみの増強サイクル
1ヒスタミンが知覚神経を刺激する。
2その刺激によってサブスタンスPが発生する。
3サブスタンスPが肥満細胞を刺激してヒスタミンの放出を促す。
4この悪循環によってかゆみが増大する。
例えば、アトピー性皮膚炎や虫さされなどで皮膚を掻いたりすると、さらにかゆみが増すようになりますが、それにはサブスタンスPが関与してヒスタミンが活性化したことによるものです。このサイクルが皮膚のかゆみが悪循環につながる理由の一つです。
ニキビにかゆみが現れる場合、その主な原因はヒスタミンによるものです。ヒスタミンが過剰に放出されやすいアレルギー体質ほどニキビなどの皮膚炎にも痒みが現れやすいといえます。
サブスタンスPが赤ニキビの痛みを引き起こす
ニキビの炎症が進行して化膿したりすると、ニキビに強い痛みが現れることがありますが、それにはサブスタンスPが関与しています。
サブスタンスPは痛覚を伝える働きがあり、炎症が続くと、その刺激に応じて神経線維の末端からサブスタンスPが放出されて痛みが増強されるようになります。
ストレスやイライラによって放出される?
サブスタンスPは交感神経節から放出されます。交感神経とは主に人間が活動的になっている時に働く自律神経の一つですが、ストレスやイライラなどによっても交感神経は活発に働きます。
ストレスやイライラなどによって交感神経節からサブスタンスPの放出が促されることが炎症やかゆみの悪化につながっている可能性があります。
例えば、ストレス・イライラなどを感じると、ニキビができやすくなったり、皮膚が急にかゆくなったりすることがありますが、それはサブスタンスPが関与していると考えられます。
また、特にアトピー性皮膚炎などではストレスによって痒みや症状が急に悪化することがありますが、その原因もサブスタンスPが関与していると考えられます。
ちなみに、サブスタンスPの働きが様々な皮膚病の悪化原因になっているとして、サブスタンスPをコントロールする製薬品の研究、開発が進められています。
しわやたるみを引き起こす原因に
サブスタンスPは、コラーゲンを減少させる働きがあることがわかっています。サブスタンスPはストレスによって発生するようになりますが、ストレスはコラーゲンを減少させてしわ・たるみなどの肌老化をまねく原因になるようです。
サプスタンスPを抑制するには?
イライラしない
ストレスやイライラによって交感神経が活発になり、サブスタンスPが発生するようになります。ストレスを感じないようにするのは難しいかもしれませんが、ストレスを溜めないように上手に発散しましょう。
皮膚に刺激を与えない
皮膚に刺激を与えるとサブスタンスPが放出されます。肌に対して余計な負担は与えないようにするのがスキンケアの基本です。
抗アレルギー剤の活用
アレルギー体質でかゆいニキビや湿疹ができやすい人は抗アレルギー剤の服用が有効です。抗アレルギー剤はヒスタミンの放出を抑制し、さらにサブスタンスPの発生も抑制することができます。(ヒスタミンはサブスタンスPの放出を促すためです)。
さらに抗アレルギー剤は、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症を誘発する生理活性物質の発生も抑制します。お薬はアレグラ(一般名:フェキソフェナジン)という眠くなりにくい抗アレルギー剤がよく使用されます。
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