トラネキサム酸がニキビ跡「シミ・色素沈着」に効果的な理由

トランシーノの画像 トラネキサム酸とは、「抗プラスミン作用」を有する成分でアミノ酸の一種です。

プラスミンとは、たんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)の一種で、様々な肌トラブルを引き起こす酵素で、トラネキサム酸は、そのプラスミンを阻害することで皮膚の炎症を抑制します。

トラネキサム酸は、一般に止血剤として用いられますが、抗炎症作用、抗アレルギー作用、美白作用などがあることから、それらの目的でも用いられることがあります。肌においては、肝斑(かんぱん)という女性特有のシミに対して使用されることが多いです。

トラネキサム酸は、化粧品としては2002年に化粧品メーカーの資生堂が「m-トラネキサム酸」として厚生労働省から認可されています。

トラネキサム酸がニキビ跡の悪化を予防する仕組み

ニキビの炎症によってプラスミンが発生する

プラスミンが炎症を悪化させる写真 ニキビが炎症を起こして皮膚に異常が発生すると、血液中に流れている「プラスミノーゲン」というタンパク質が「プラスミン」という物質に変化・活性化します。

このプラスミンはたんぱく質分解酵素の一つで、肌細胞(表皮細胞)や血管組織などを分解して構造にダメージを与え、損傷を大きくして炎症を悪化させたりします。

プラスミンは、肌荒れや炎症悪化の原因と考えられていますが、トラネキサム酸はこのプラスミンの活性を阻害する「抗プラスミン作用」を有し、皮膚の炎症、肌荒れ、血管の損傷などを防ぎます。それによって止血作用や抗炎症作用を示します。

プロスタグランジンによる色素沈着の悪化

ニキビ跡の炎症後色素沈着 ニキビによって皮膚の異常が発生するとプラスミンが発生します。そのプラスミンは皮膚に様々な影響をもたらす過程において「プロスタグランジン(PG)」という情報伝達物質の発生を促します。

プロスタグランジンは、メラノサイト(メラニン色素を作る細胞)の活性化やメラニンを合成するチロシナーゼ酸化酵素の増加などを促す作用があります。

ニキビ跡の炎症後色素沈着(モヤモヤしたシミ)が悪化する要因の一つがプロスタグランジンの働きによるものですが、トラネキサム酸はプラスミンの働きを阻害することでプロスタグランジンの発生も抑制し、にきびによる炎症性色素沈着を予防します。

プラスミンはメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)の分泌を促す?

ニキビの炎症によって発生したプラスミンは、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)を発生させる過程に関わっていると考えられています。

メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)とは、その名の通りメラニン細胞(メラノサイト)を活性化してメラニン色素の産生を促す働きがある物質で、肌細胞のDNA損傷を感知してメラニン色素の合成を促すように作用します。

トラネキサム酸の抗プラスミン作用によってメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)の働きも抑制され、ニキビによるシミ・黒ずみなども予防できると考えられます。

ちなみに、欧米人(白人種)がメラニン色素が少ないのは、このメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)の働きが低いことが要因の一つということが明らかになっています。

プラスミンはヒスタミンの放出を促す

ニキビの炎症によって発生したプラスミンは、様々な作用をもたらす過程において「ヒスタミン」という物質の発生を促します。

ヒスタミンは皮膚の炎症やアレルギー反応の介在物質として働き、ヒスタミンが過剰に分泌されるとヒスタミン1型受容体というタンパク質と結合して、アレルギー疾患の原因になるとされます。花粉症やアトピー性皮膚炎などによるかゆみなどもヒスタミンが関与しています。

ニキビと共にかゆみが現れた場合、ヒスタミンが過剰に働いている状態、つまりアレルギーを起こしている可能性があります。

このアレルギー反応は体質によるものが大きいといえますが、その反応を大きくしてしまう要因の一つがプラスミンだと考えられます。トラネキサム酸は抗プラスミン作用によってヒスタミンを阻害するように働き、抗アレルギー作用を示します。

ただし、トラネキサム酸の抗アレルギー作用はあまり強いものではありません。

トラネキサム酸使用のポイント

トラネキサム酸 トラネキサム酸は、特に肝斑(かんぱん)という女性特有のシミとニキビが併発した場合に有効です。肝斑が発生する肌状態は色素沈着が悪化しやすく、一般的な美白成分では改善しにくいためです。

トラネキサム酸は内服薬として使用する場合は副作用が発生する可能性がありますが、化粧品として用いる場合はほとんどリスクがないのがメリットの一つです。

化粧品では第一三共ヘルスケアの「トランシーノ」という商品が有名です。
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なお、トラネキサム酸は、化粧品メーカーの資生堂が医薬部外品の有効成分として2002年に厚生労働省から認可を受けていますが、現在では特許が切れているので、現在ではいろいろなメーカーから化粧品に配合されるようになってきています。

化粧品に配合されるトラネキサム酸は安全!

トラネキサム酸は飲み薬としては止血剤として使用されているお薬ですが、その効能により血が固まりやすくなる欠点があります。

実際に服用を続けると血栓症のリスクが高くなることがわかっています。また、血栓とまではいかなくても、血流が悪くなりますので、肩こりや疲れ目がひどくなることも。

ところが、化粧品としてトラネキサム酸を肌に塗る場合はそのような心配はありません。