絶縁針脱毛でワキガが治る?「アポクリン汗腺」と電気針脱毛について

絶縁針脱毛の写真 絶縁針脱毛とは、皮膚と接触しないように作られた電気針(絶縁針)を使用して、毛根を破壊する脱毛法です。

この方法は、毛だけに反応するレーザー脱毛とは違い、毛根全体に直接熱を与えることで永久脱毛を実現します。

そして、毛根にダメージを与えるので、副効果として汗腺を破壊し、ワキガにも効くといわれることがあります。

結論から言えば、絶縁針脱毛のワキガへの効果はごくわずかなものです。理由を解説していきます。

ワキガの原因とは?

ワキガの原因は「汗」によるものです。その汗を分泌する汗腺には、「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類あります。

その2種類の汗腺は違う性質をもっています。

エクリン腺

エクリン腺とアポクリン腺 エクリン腺は、皮膚のほぼ全身にわたって存在している汗腺です。

特に、頭、顔、胸元、背中などに多く発達していて、一般に人間の汗というと大半がエクリン汗腺から分泌されています。

ここから分泌される汗は、肌の表面にある汗孔(かんこう)という穴から排出され、ごくわずかな塩分やカリウム以外のほとんどが弱酸性の水分で構成されます。

アポクリン腺

アポクリン腺とは、身体の特定の部分に存在する汗腺です。エクリン腺のように全身にわたって存在しているのではなく、主にワキの下、耳、乳輪、陰部に存在しています。

アポクリン腺から出る分泌物(汗)は、70~80%がやや白色がかったアルカリ性の水分で、水分以外にはたんぱく質、脂質、アンモニアなどが含まれます。水分以外の成分が多いのが特徴。

そして、アポクリン腺は毛穴と直接つながっており、皮脂などと共に表面に排出されます。

ワキガはアポクリン腺が原因?

ワキガの原因は、アポクリン腺から分泌される汗によるものです。具体的には、その汗に含まれるたんぱく質や脂質、アンモニアなどを皮膚の常在菌が分解することで、悪臭を放つようになることが要因です。

なお、アポクリン汗腺による匂い、つまり体臭やワキガというものは、元々は動物の「フェロモン」としての役割があるとされます。人類の進化の過程で減少し、最終的に身体の一部分に残ったものだとされています。

絶縁針脱毛はアポクリン腺を破壊する?

絶縁針脱毛 ワキガの原因はアポクリン腺から分泌される汗によるもの。そして、アポクリン腺は毛穴とつながっている分泌腺。

一方、絶縁針脱毛は、毛穴の内部(毛包)に電気針を刺して電流を流し、毛根部にある毛乳頭などの発毛に関与する組織を破壊するもの。

そういった原理により、電気針を毛穴に入れて熱を与えれば毛球部と同じようにアポクリン腺にもダメージを与え、汗の分泌量も減少するように思えます。

実際に、例えばワキに対して絶縁針脱毛をした場合、明確にワキガが改善したというケースも多いようです。

効果は劇的なものではない

ただし、絶縁針脱毛によるワキガ改善というのは劇的なものではないです。

「ちょっと臭いが減ったかな?」、「匂いが少なくなった気がする」

というレベルのようです。

というのも、このやり方で劇的な効果を得られるのであれば、ワキガ治療のスタンダードな方法となっているはずです。そうならないのはやはり効果も限定的だということです。

ワキガを治すには皮膚切除が理想

ワキガを根本的に治していくには、アポクリン汗腺が集中するワキの皮膚をじょじょに切除していく方法が最も確実です。

その方法は剪除法(せんじょほう)といわれるもので、あまり知られていませんが保険適用となります。

治療内容は、ワキのしわに沿って2~3センチほどの一定の範囲を切除し、年月が経って皮膚が伸びてきたらまた一定の範囲を取り除いて、という治療を繰り返します。

つまり、アポクリン腺が多い部分をできるだけ減らしていき、臭いを軽減するものです。

基本的にワキガを根本から治す場合はこの方法しかないとされます。

レーザー脱毛でもアポクリン腺を破壊できない?

ワキのレーザー脱毛 レーザー脱毛とは、黒い色素に反応するレーザーを使用して、毛根を破壊する脱毛法です。

毛にはメラニン色素(黒い色素)が含まれており、それに吸収されるレーザーを照射することで毛根に瞬間的に高い熱エネルギーを発生させ、毛根にダメージを与えて発毛機能を破壊します。

毛だけに反応し、それ以外のダメージが少ないことから広く普及し、昔と比べて価格も下がったことで近年では広く行われるようになりました。

そして、「レーザー脱毛によってもワキガが治る」、みたいに言われることもあります。

ところが、実際にはレーザー脱毛の光線は、毛のような黒い部分にしか反応しないので、アポクリン腺のような部分には全く反応しません。つまりアポクリン腺の破壊は不可能です。

そのため、レーザー脱毛ではワキガの根本的な改善効果はないとされます。

反対にいえば、レーザー脱毛は黒い部分にしか吸収されず、毛以外の正常な部分にはダメージがほとんどないことから、レーザー脱毛が広く用いられるようになったのです。

アポクリン汗腺を破壊してしまうようなレーザーならば、ヤケドを起こす問題だらけになってしまいますね。

毛が無くなったことで雑菌も増えにくくなるメリットがある

レーザーではアポクリン汗腺の破壊は無理ですが、一方で毛がまったく無くなることで雑菌が増加する環境もわずかに減少しますので、比例して臭いも軽減されることもあるとされます。

そういったメリットをうたって脱毛をすすめる美容クリニックやエステサロンなどもちらほら見かけたりしますね。ムダ毛はちゃんと処理できるかもしれませんが、ワキガについてはあまり期待しないほうがいいようです。